
犬の唾液腺嚢胞は、何らかの原因により唾液を分泌する管が損傷を受けたりして閉塞し、その部分に唾液が漏れて溜まってしまう病気です。唾液腺嚢腫や唾液腺粘液瘤などと呼ばれることもあります。
犬には、耳下腺、下顎腺、舌下腺、頬骨腺の4つの唾液腺があり、発生する部位により「頸部(けいぶ)唾液腺嚢胞」「舌下部(ぜっかぶ)唾液腺嚢胞(別名:ガマ腫)」「咽頭部(いんとうぶ)唾液腺嚢胞」「頬部(きょうぶ)唾液腺嚢胞」と分類されます。
犬では舌下腺と下顎腺での発生が多いといわれています。
一般的に痛みによる症状は現れませんが、まれに初期症状として、急性炎症により痛がる様子がみられるとされています。
嚢胞に唾液が溜まると、発生部位によりますが顎の周りや舌、咽頭部(のど)に大きな腫れが認められ、呼吸困難、元気がなくなる、食欲低下、いびきをかく、舌の運動異常などの症状が現れます。
犬の唾液腺嚢胞は伝染する病気ではないので、他の犬や人にうつる心配はありません。

なぜ唾液が漏れ出し、唾液腺嚢胞になってしまうのかは原因不明なことが多く、気づいたら溜まっていたというケースがほとんどです。考えられる原因には次のようなものが挙げられます。
他の犬とのケンカでケガをしたり、リードを強く引っ張ることにより首が締め付けられたり、交通事故にあうなどして、唾液を分泌する管がダメージを受けると、唾液腺嚢胞の発生に影響する可能性があるという説もあります。
ウイルスや細菌などによる感染症や、歯周病などによる口腔内の炎症が原因になることもあります。
唾液腺内部や唾液管内に「唾石(だせき)」という結石が形成され、唾石が唾液管を閉塞することにより管が破裂し、唾液腺嚢胞につながることがあります。
唾液腺嚢胞には遺伝が関与しているとも考えられています。
年齢を問わずすべての犬種で発生しますが、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、ミニチュア・プードル、ジャーマン・シェパードには比較的多く見られるといわれています。

犬の唾液腺嚢胞には、次のような治療方法があります。
針で嚢胞を穿刺して唾液を抜くという方法があります。たまった唾液を抜くだけなので、多くの場合すぐに再発しますが、中には数回の吸引を繰り返している内に再発しなくなるケースもあります。
唾液腺炎を伴っている場合は、病原菌を特定して抗生物質を投与することにより、唾液腺嚢胞が小さくなることがあります。
根治には、外科手術で切開して排液し、唾液腺そのものを切除する方法が有効です。しかし、手術後に再び唾液腺嚢胞を発症するケースも少なくありません。
治療する動物病院によって異なりますが、唾液腺嚢胞を診断するための触診やエコー検査、レントゲン検査に数万円くらいかかることが多いです。
針で穿刺吸引すると1万円以内くらい、全身麻酔下での唾液腺を切除する手術はより高額になる可能性が考えられます。
動物の体重や処置の方法などにより変わってくるので、動物病院に確認しましょう。

唾液腺嚢胞を確実に予防することは難しいかもしれません。首輪の締め付けは唾液腺にダメージを与える可能性があるので、胴輪に切り替えたり、首輪を使用しなければならない場合は散歩でぐいぐい引っ張らないようしつけるのも有効です。
犬の唾胞液腺嚢胞は、外科治療を行ったとしても再発を繰り返す事があります。治療後も注意深く経過観察し、異常があれば早めに動物病院を受診しましょう。

犬の唾液腺嚢胞は内臓の病気などと違い、飼い主さんにも見た目で発見しやすい病気です。日頃から愛犬の様子を観察したり、スキンシップを取って、病気の早期発見に努めましょう。
手術には全身麻酔が必要になるので、必要な検査を受けた上で、獣医師とよく相談して決めましょう。