
アトランタのエモリー大学で神経経済学者として活躍しているグレゴリー・バーンズ氏は、犬をはじめとした動物の脳を研究しています。バーンズ氏自身も多くの犬と暮らし、実際に犬たちと生活を共にすることで、さまざまな犬の脳と感情のメカニズムを解明しています。
バーンズ氏は「犬は人類ではない人間である」という言葉で、犬たちが持つ感情を評価しています。姿形は違っても、犬は人間と同じように心を持ち、それが犬の優れた能力である嗅覚と密接に関わっているのです。
犬の匂いについての研究受験では、5種類の匂いを付けたガーゼが使われました。その内容は、親しい人間、よく知らない人間、親しい犬、よく知らない犬、実験を受ける犬自身です。
この匂いを嗅いだ時、犬の尾状核がどのように変化するかを計測しました。尾状核とは、ポジティブな感情を抱かせる脳の領域になります。
実験の結果、親しい人間の匂いを嗅いだ時に、犬の尾状核は大きく反応を示しました。それ以外の4つの匂いについてはほとんど変化はなかったのですが、反応するという意味では親しい犬が2位になりました。
この実験の結果からわかったことは、親しい人間、つまり親しみを感じる飼い主さんたちの匂いを嗅ぐと犬は幸せな気持ちになり、同時にその匂いをしっかりと記憶しているということでした。
犬はたとえ離ればなれになっても大好きな人を決して忘れることはなく、ずっと匂いの記憶の中で想い続けているのかもしれませんね。

この写真は、私が仕事から帰ってきて、ひと息ついた時のものです。リュックと私の間にジャンパーがあったのですが、わずかな隙間しかないところにグイグイ入ってきて、ジャンパーの上で丸くなっていました。こんな窮屈な場所も、この子にとっては落ち着く空間のようです。
うちのコは留守番が多いので、仕事の日は私が着ていた部屋着やフリースをまとめて敷いて出かけるようにしています。部屋の中にいくつもベッドがあるのですが、留守番中は私の着ていた洋服を下敷きにして寝ているようです。ベッドの方がフワフワで気持ちいいはずなのに、飼い主の匂い付きの方が安心できるようですね。
もうひとつ気をつけているのは、部屋に芳香剤を置かないことです。犬は化学的な匂いが苦手なようですね。リビングにうちのコのトイレがあるので初めのうちはお客さんが来たら気になるかな?と思っていたのですが、不快な匂いの中で留守番させるのはかわいそうに思えてやめることにしました。
汚れたらペットシーツはすぐに片付ける、小まめに換気する、無香の消臭剤を置くなど少し気をつけるだけで、お客さんが気にならないように匂いを減らすことができます。

嬉しい気持ちになれるのは飼い主さんのような好きな人間の匂いですが、犬は親しみを感じている犬の匂いにも反応することがわかっています。たくさんの知っている犬の匂いがあることは、散歩をする上で愛犬に安心感を与えられるのではないでしょうか。
犬は会うとお尻をクンクンし合うことが多いですよね。でも中には匂いを嗅がなくても存在を認識し合っている子もいます。時々思い出したように遊ぶけれど、普段は完全に無視し合っていたりします。それなのに自然に並んでいたりするから仲は良いんだろうね、と相手の飼い主さんと話すことがあります。
バーンズ氏の実験では、嬉しい気持ちになるわけではなかったけれど飼い主の次に反応があったのは親しい犬でした。仲間として安心して一緒にいられるというのが、親しい犬との関係なのかもしれませんね。
うちのコは年と共に自分から犬友達を遊びに誘うことが減りました。でもみんなの輪の中には必ず入って行って、お互いにお尻をクンクンしています。そしてほとんどの場合、挨拶が終わるとみんなにお尻を向けているか、伏せてくつろいでいます。周りで激しく遊んでいても無関心で、巻き込まれてぶつかられたり踏まれたりした時だけ、「なんかぶつかったぞ」という顔をして、ほんの少し場所を変える程度です。
たくさんの犬の中でもこうして落ち着いていられるのは、みんなの匂いを受け入れられているからではないかと思います。そして多くの匂いを知ることで、初めての場所でも警戒し過ぎることなく、マイペースで楽しめるのではないかと思いました。

バーンズ氏の実験では、犬自身の匂いに反応した様子は指摘されていませんでした。でも私は、犬は自分自身の匂いにも執着があるように思います。そう感じた2つのエピソードをご紹介します。

手前に並んでいるイッカクのぬいぐるみ、右側の少し黄ばんだものがうちのコのお気に入りで、左側のチェーンがついたものは、私が使っているものになります。初めは右側のものしかなかったのですが、うっかり遊ばせてしまったらリュックに隠してもほじくり出してしまうようになったので、仕方なくうちのコにあげることにしました。そして後日もうひとつ購入しました。
新しく購入したイッカクは、うちのコには触らせないようにしました。すると存在を認識していても、全く興味を示しませんでした。他のおもちゃも水洗いすると変な顔をしてしばらく遊ばなくなったりするので、うちのコは自分の匂いが付いたものに愛着を感じているのではないかと思いました。
ガジガジして自分の匂いたっぷりのイッカクのツノは、かじりやすくて楽しいようです。
動物は自分の匂いがしなくなると落ち着かなくなるそうです。うちのコは自宅でシャンプーすると、ものすごい勢いで走り回ったり、あちこちに体をこすりつけたりするのですが、それは自分の匂いが消えてしまったことが理由だと聞いたことがあります。
半ばヤケ気味に暴れている姿を見ると、うちのコにとって自分の匂いは重要なものなのだと感じます。人間にとって心地良い匂いを付けるより、犬は自分の匂いが一番安心できるようですね。

嗅覚が鋭い犬だからこそ、それを利用して愛犬が幸せを感じられる空間作りができるように思います。ひとりで留守番でも大好きな飼い主の匂いを感じていれば、必ず飼い主は帰ってくると信じて待つこともできるようになるのではないでしょうか。 そして外に出てたくさんの匂いを知ることで、犬は色々なことを学習し、落ち着いて過ごせるようになると思います。
犬にとって匂いが持つ力は、人間の想像以上の価値があります。その愛犬の匂いの頂点に立つのが飼い主の匂いです。思う存分クンクンさせてあげたいですね!
「手づくりごはん|パートナーに優しいレシピ【第4部】」記事一覧