元素記号「P」で表される「リン」は、腎臓に注意が必要な愛犬のいる飼い主さんなら、耳にしたことのある名前かもしれません。リンは体に必要不可欠な栄養素ですが、過剰摂取になりがちな成分でもあります。特にシニア期を迎えてからは、タンパク質とともに注意するように言われることもあります。
今日はリンの役割や、摂り過ぎにならないためにどう工夫できるかを考えてみたいと思います。

リンはミネラルの一種です。犬が1日に必要な摂取量は、体重1kg当たり成長期では240mg、維持期では89mgが目安とされています(小動物獣医看護学テキストより)
普段の食生活で意識する機会は少ないものの、リンは体に必要な栄養素です。初めにリンが体の中でどう働くものか、過不足によってどんな影響をおよぼすか、カルシウムとの関係などを見ていきたいと思います。
リンの大きな役割は骨や歯を健やかに保つことにありますが、体の組織の構成要素としても重要な役割を持ちます。リンの働きをまとめてみました。
リンの働き
昔フェレットと暮らしていた時に、血液検査でリンの値が上昇し、リンの吸着剤が処方されたことがありました。過剰摂取になると血液中にリンが増加し、増加したリンがカルシウムと結合しようと骨などからどんどんカルシウムを取り出してしまいます。その結果、カルシウムが不足して骨が弱くなったり、筋肉や皮膚に炎症を起こしてしまうことがあります。
腎臓の機能が弱りオシッコにリンが排出されにくくなることでも血液中のリンが増えるので、腎臓に注意が必要な犬はリンの摂取を控えるように言われることがあります。リンの過剰摂取は、腎臓への負担も増す可能性があります。
これもフェレットの時に経験したのですが、体調を崩して生活の質が下がった時に、アデノシン三リン酸(ATP)を処方されたことがありました。これによって体全体の機能を高めようと獣医さんに言われました。
このATPを作る元になるのがリンを含むミネラル類です。普段の食事でリンが不足することはほとんどないと言われていますが、病気など体調を崩した時には、リンの必要性が増すこともあるのではないかと思います。
リンの働きには、カルシウムやマグネシウム、特にカルシウムとのバランスがとても重要になります。過剰摂取のところでお話ししたように、リンが増えることで体を維持するために必要なカルシウムが使われてしまうことになり、体調を崩す結果につながりかねません。
これを防ぐため、リンとカルシウムのバランスは1:1が理想とされています。プレミアムフードであれば、ほぼこの比率で作られているので問題は起きにくいのですが、多くの肉類などではカルシウムよりもリンの含有量が高いため、おやつを与えていると過剰摂取に傾きがちになります。

リンは肉類だけでなく、魚、卵、大豆製品、野菜など、ほとんどの食材に含まれています。ドッグフードだけしか食べていなければリンの過不足は起こりにくくなりますが、フード以外のおやつを多く与えたり、体の機能が衰えてくると過剰摂取に傾くことも考えられます。
愛犬におやつとして与える機会の多い食材を、リンの含有量が高い順にまとめてみました。参考のため、カロリーやタンパク質の量とともにご覧ください。
※野菜にもリンは含まれますがここでは犬に与える量が多い食材をピックアップしました
(以下参考:カロリースリム)
| 食材名 | カロリー(kcal/100g) | タンパク質(g/100g) | リン(mg/100g) | カルシウム(mg/100g) |
|---|---|---|---|---|
| 煮干し(カタクチイワシ) | 332 | 64.5 | 1500 | 2200 |
| 卵黄 | 387 | 16.5 | 570 | 150 |
| マグロ | 125 | 26.4 | 270 | 5 |
| カツオ | 165 | 25 | 260 | 8 |
| サケ | 138 | 22.5 | 260 | 10 |
| カタクチイワシ | 192 | 18.2 | 240 | 60 |
| 豚ヒレ | 115 | 22.8 | 230 | 4 |
| 鶏ササミ | 105 | 23 | 220 | 3 |
| 豚ロース(赤身) | 150 | 22.7 | 210 | 5 |
| 鶏ムネ肉(皮なし) | 108 | 22.3 | 200 | 4 |
| 鹿肉 | 110 | 22.3 | 200 | 4 |
| 納豆 | 200 | 16.5 | 190 | 90 |
| 馬肉 | 110 | 20.1 | 170 | 11 |
| 牛肩ロース(赤身) | 316 | 16.5 | 140 | 3 |
| カッテージチーズ | 105 | 13.3 | 130 | 55 |
| 木綿豆腐 | 72 | 6.6 | 110 | 120 |
| プレーンヨーグルト | 62 | 3.6 | 100 | 120 |
| ラム肉 | 227 | 18 | 100 | 8 |
| 牛乳 | 67 | 3.3 | 93 | 110 |
| 絹豆腐 | 56 | 4.9 | 81 | 43 |
| 豆乳(無調整) | 46 | 3.6 | 49 | 15 |
| ご飯(白米) | 168 | 2.5 | 34 | 3 | 卵白 | 47 | 10.5 | 11 | 6 |
表をご覧いただくと、同じカタクチイワシでも、生より煮干しが群を抜いてリンの含有量が高いことがわかるかと思います。このように同じ食材でも乾燥させた煮干しやジャーキーはリンの含有量が高くなります。
また、卵は卵黄は上位に、卵白は最下位にランキングされました。リンの含有量だけを見ると、卵白だけを与えた方がリンの摂取量を抑えることができます。
意外なのは、肉類より魚類の方が高い順位にランキングされていることでした。栄養豊富な魚類ですが、リンだけをクローズアップすると気をつけたい食材になるのですね。

リンの含有量だけを見ていくと、おやつをあげるのが少し心配になってしまいます。そこでリンを少しでも減らす方法をご紹介します。完全に無くすことは難しいのですが、参考にしてみてくださいね。
魚や肉をおやつにする時、持ち歩きができて日持ちもする煮干しやジャーキーは重宝しますよね。でも乾物になるとリンの含有量は一気に上昇します。できれば乾物は減らし、生を加熱して与える方がリンの過剰摂取を防ぐことができます。水分を含む分、生を加熱した方が量も抑えられるので、食べ過ぎを防ぐこともできます。
リンはゆでることでお湯に流れ出るので、ゆでてからゆで汁を捨てて与えることでも過剰摂取を抑えることができます。
ゆでると他の栄養素も出てしまうので焼くよりも摂取できる栄養は減ってしまいますが、リンを減らす効果は期待できます。

リンはさまざまな食材に含まれているため、きちんとドッグフードを食べている犬では過剰摂取になりやすい成分になります。過剰摂取が即病気につながるわけではありませんが、少し気をつけてあげたいですね。
リンの含有量が少なめのおやつを選ぶ、ゆでこぼす、乾物を避けるなどの他に、おやつ自体を小さくして量を減らすなど、工夫してあげることが良いのではないかと思います。
「手づくりごはん|パートナーに優しいレシピ【第4部】」記事一覧