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柴犬 小説
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2021.10.31

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第3部】|vol.20

豆しば暮らし|いつかまた逢えるその日まで

メロンとの5270日に想いを馳せていたママ。
その足元に、マメオがやって来ました。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第3部】の連載第20話です。

やんちゃな弟

パピヨンのマメオ

「メロン姉ちゃんとお話しする?」

メロンが旅立った年の秋、パピヨンのマメオが家族の一員となりました。
つぶらな瞳、羽を広げた蝶を思わせる美しい耳、絹のようにしなやかな毛並み、優雅で軽快な身のこなし。
まさに貴族の愛犬といった風貌です。

「マメオはね…」

その麗しい姿に似合わず、やんちゃ坊主でした。
毎日、何かしらやらかしては叱られています。

ですが、マメオには策がありました。
叱られている時に、とてつもなく可愛い顔をするのです。
その愛くるしい表情を見せられると、もう何も言えなくなってしまいます。

「やんちゃで人懐っこくて、無邪気だけど策士で。いかにもメロンの弟って感じでしょ?」

いつか旅立つ時には

柴犬のメロン

「愛情表現だって過剰なくらいだよ。それに比べるとメロンのは、侘び寂びを感じるねぇ」

マメオを抱っこしながら、ママはくすりと笑いました。

愛、か…。
メロンが旅立つ前に、一瞬だったけど、私を思い出してくれたことがあったね。
瞳を輝かせて、ママだ!って顔をして。

認知症が進んでいろんなことを忘れてしまっても、愛だけは忘れないのかな。
その対象は忘れてしまっても、愛してるって想いだけは心にあり続けるのかな。
とても切ないことだけど、とても幸せなことなのかもしれないね…。

「ねぇメロン、いつか私が旅立つ時には迎えに来てね」

きっと私も、愛することを忘れないよ。
またいっぱい笑おう、いっぱい走ろう。

そしてね、たくさん遊んだら、神様にお願いして、一緒に人間に生まれ変わらせてもらおう、親友になろう。
一緒に学校行って、一緒にお弁当食べて。
いろんな所に出かけて、旅行もして。
どんなことも話し合って、一緒に笑って、一緒に泣いて。

じゃあまたね

柴犬のメロン

「でも、その日が来るまでは全力で生きる。絶対に叶えたいことがあるの」

一つは、子供の頃からの夢。
もう一つはね、音信不通になって20年以上も経つ人との再会。
どうしても逢って伝えたいことがあるんだ。

どちらも果てしなく遠く険しい道のりだけど、私は諦めない。
生きることは諦めないことだって、メロンに教わったからね。
最期の時を迎えるまで、前を向いてがんばり続けるよ。

だからメロン、どうか私を見守っていて。
立ち止まってしまわぬように、この背中を押していて。

「さて、おしゃべりはこのくらいにして、今日もバリバリ働きますか。じゃあまたね、メロン!」

見上げた空には優しい青。
いつかまた逢えるその日まで、メロンとママとをつなぐ色。

ひんやりとした風が吹いて来ました。
メロンと出会った冬が、5270日の始まりの季節が、今年もまた訪れようとしています。

  • 更新日:

    2021.10.31

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。