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柴犬 小説
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2021.10.17

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第3部】|vol.18

豆しば暮らし|旅立ち

その夜、メロンは朝まで眠り続けました。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第3部】の連載第18話です。

いつもと違う朝

「おはようメロン! よく眠ったね!」

うつろな目をしたメロンに、ママが声をかけました。

「ごはんの前にマッサージだよ」

ママの手が体に触れても、メロンは噛みませんでした。
あまり食欲がなく、水も少ししか飲みません。

「よく眠れた割には調子がイマイチだね…。病院に行った方がいいかな」

メロンはまた眠り始めました。
ですが、午前9時過ぎ。
急に息が荒くなりました。
とても苦しそうです。

「メ、メロン! 大丈夫?」

もしかしたら…、いや、おそらく…、メロンの命が尽きようとしているんだ!

ママは慌てて支度をすると、メロンを抱きかかえました。

決断

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メロンを抱っこしたまま靴を履いていた、その時です。
ママの動きがぴたりと止まりました。

「本当にこれでいいのかな…?」

苦しそうなメロンを見つめ、そう呟きます。

病院で手当をしてもらえば、メロンは楽になるだろう。
命を繋ぎ止めることができるはず。
それを繰り返すことで、別れの日を先送りできるに違いない。
でもそれは…。

メロンを何度も苦しませることになるのではないだろうか。

メロンを失うのは、身が引き裂かれるほどに辛い。
だけど、その辛さから逃れようとすることが、メロンに苦しみを与え続けることになってしまうのなら…。
それを愛だと言えるの?

向き合わなきゃ。

ママはリビングに戻り、そっとソファに座りました。

子守唄

「大丈夫、神様がお決めになったことだからね。メロンが眠るまで、ママはずっと側にいるよ」

そう言ってママは、メロンの小さな背中をポンポンと軽くたたきながら、子守唄を歌い始めました。
ハルカちゃんが小さかった頃、毎日歌っていた子守唄。
何故かいつも、メロンが先に眠ってしまいます。

「ねんねだよぉ、メロン。ふかふかお布団いい気持ちぃ」

歌いながら、メロンと暮らした日々を思い返しました。

体育座りをすると、必ず膝の下の三角の所に入って来たよね。
安心する場所だったのかな。
私は密かに、車庫入れって呼んでたけど。

ドラマを観て泣いていたら、膝に飛び乗って来て涙をなめてくれたこと、何度もあったっけね。
ママの一大事だ、みたいな顔して必死になってさ。

可笑しかったことばかりが思い出されました。
メロンの呼吸も、落ち着いてきています。

「おやすみおやすみぃ、夢の中でまた遊ぼぉ」

メロンが大きく息を吸いました。
ですが、その息が吐き出されることは、もうありませんでした。

「よくがんばったね…」

ママは、メロンの目に手を当て、まぶたを閉じさせました。
体はまだ温かく、すやすやと眠っているようにしか見えません。

「おやすみメロン。ありがとう」

平成27年6月14日。
メロンは14歳の生涯を閉じました。

  • 更新日:

    2021.10.17

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。