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柴犬 小説
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2021.10.10

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第3部】|vol.17

豆しば暮らし|光のさす方へ

くらいもりのなかを、わたしはひとり、あるいています。
どこからきたのか、どこへいくのか。
なにもわからぬままに。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第3部】の連載第17話です。

暗い森の中

ひとつだけ、たしかなことがあります。
わたしのたいせつなひとたちに、わたしのだいすきなひとたちに、もういちどあうために、このくらいもりのなかをさまよっているのだということ。

とてもこわくて、ふあんになるけれど、私はけっしてあきらめない。

いつも、だれかの話しごえがします。
だれかが私をなでたり、だきしめたりします。

私にいじわるをしようとしている。
そう思い、その手を何度もかみました。

森のやみがこくなる夜は、恐ろしくてさびしくて、大きな声でさけんでしまいます。
そのたびに、だれかが私に話しかけ、私をだっこしたり、おいしいものを食べさせてくれたり。
いろいろなことをしてくれるけど、私の心はみたされない。
だって、そのだれかは、私の知らない人だから。

ひとすじの光

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遠くに、光がみえました。
かすかな、ひとすじの光。

あそこに行けば、あの人たちにあえるかもしれない。
この暗い森からぬけ出せるかもしれない。

そう思った私は、光のさす方に向かって駆けて行きました。

長い長い夢から醒めたような気がしました。
誰かが私を見つめています。
懐かしい匂いがします。

あっ、ママだ!

「メロン、私がわかるの? ママだよ!」

ふふっ、変なの。
わかるに決まってるでしょ。
あなたは私のママ。
私の大切な、大好きなママ。

優しい手が私をだきしめようとした時、私は再びくらい森の中にいました。

小さな灯火

だれかのはなし声がします。

「今日ね、メロンが帰って来たんだ」

「えっ、どういうこと?」

「私を見て、あっママだ!って顔をしたの。昔みたいに、瞳がキラキラ輝いてたよ。私がわかるのって聞いたら、ニコニコ笑ってた。でも、抱っこしようとしたら噛まれちゃった。ほんの一瞬だけ、記憶が戻ったんだね」

「すごいね! 認知症の回復の兆しだといいな」

何だか幸せそうでした。
私も早くあの人たちにあいたいなぁ。
いっしょにいた時、毎日がほんとうに楽しくてしあわせだったんだ。

私はひとり、暗いもりの中をあるいています。
でも、もうこわくはありません。
胸のおくが、ポカポカとあたたかいから。
何かいいことでもあったみたいに。

「素敵な夢をみたんだよ」

だれかがおしえてくれました。

ゆめからさめたようなきがしたけど、それがゆめだったの?
へんなの。
でも、むねのポカポカのしょうたいがそのゆめなら、つづきがみたいな。

「あそこでゆっくりおやすみ。きみが探している人達にも、きっと逢えるよ」

とおくにひかりがみえました。
ちいさいけれど、うつくしいともしび。
わたしは、ひかりのさすほうへとかけてゆきました。

  • 更新日:

    2021.10.10

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。