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柴犬 小説
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2021.10.03

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第3部】|vol.16

豆しば暮らし|あんたなんか…!

秋の終わりに14歳になり、冬の寒さがピークに達した頃、メロンは夜鳴きをするようになりました。
午前1時を過ぎたあたりから鳴き始め、15分ほど続きます。
しばらく休むと、また鳴き始め、それを何度も繰り返すのです。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第3部】の連載第16話です。

どうしたらいいの?

メロンが寝たきりになってから、ママはメロンの隣に布団を敷いて寝ていました。
夜中にメロンの様子を確認したり、寝返りをうたせたり。
することはたくさんあるのですが、その合間にしっかり眠ることができました。

ですが、夜鳴きが始まるとそうはいきません。
ほぼ一睡もできぬまま朝を迎える日々が続いていました。

鳴き止ませるにはどうしたらいいか、鳴き声が外に響かないようにするにはどうしたらいいか…。
あれこれと調べ、考え、やってみるも、あまり効果はありません。

「どうしたらいいの? どうしたら静かに寝てくれるの?」

いい加減にして!

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一番の気がかりは、近所迷惑になってしまうことです。
ご近所の方々に会うたびに、ママは事情を説明し謝っていました。

お互い様だから気にしないでと言ってはくれるのですが、申し訳なさは募るばかり。
ひたすら謝り続ける毎日です。

ある夜のことです。
いつものように鳴き続けるメロンに、ママはついに声を荒らげてしまいました。
介護疲れと睡眠不足でヘトヘトな上に、ご近所の方々への申し訳なさで、心身ともに限界だったのです。

「うるさい!」

耳が遠くなってしまっていても、耳元で大声を出されればわかります。
メロンはビクッと体を震わせました。

「もういい加減にして! 自分ひとりでは何もできないくせに! あんたなんか…、いなくなってしまえばいい!」

そう言い捨て、ママは寝室に駆け込みました。
ベッドに飛び込み、布団を頭まで引っ張り上げます。

メロンの鳴き声が聞こえてきました。
両手で耳を塞ぎ、ぎゅっと目を閉じ、眠ろうとします。
ですが、その目に浮かんでくるのは、メロンの悲しそうな顔ばかりでした。

ごめんなさい

「神様、助けてください!」

心の中で、ママは何度も叫びました。

その声なき叫びは、神様に届いたのでしょうか。
具合が悪くなって倒れた時のことが、頭をよぎりました。

心配そうな顔をして、ずっと側にいてくれたメロン。
祈りの言葉の代わりに、大好きなおもちゃを全部、私の周りに並べて。
それなのに私は…。

ママは飛び起きると、走り出しました。
メロンをぎゅっと抱きしめます。

「メロンごめんね! ひどいことを言って本当にごめんなさい!」

メロンは嫌がって暴れ、ママの腕に何度も噛みつきました。

「こんなこと、もう二度としない。ママを許して」

噛まれても噛まれても、ママは腕を離しません。
それに根負けしたのか、それともママの体温にやっと安心したのか。
メロンは、ママの腕の中で静かに眠り始めました。

  • 更新日:

    2021.10.03

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。