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土砂と白い保護犬
住まい / 生活
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2021.09.30

ドックドッグ企画「愛犬のための防災特集」DAY27

西日本豪雨で避難指示!虐待経験があり「触れない犬」ミルを連れていけない

うちの愛犬たちは、2匹とも虐待されていたと思われる保護犬です。特に、先に迷い込んできたミルは、5年間触れることができない子でした。氷を溶かすようにゆっくり関係を積み上げている途中、西日本豪雨が襲ってきました。避難生活、そして引越し。その間、私との信頼関係がまだできていないミルは、命の危険にさらされることになったのです。ミルだけでなく、連れて行こうと必死になる私や、車の中でミルを待っている他の犬や猫たちも、共に逃げ遅れる恐れがありました。
今日はそんな体験と、そこで感じたこと、今どんな対策しているかなどをお話しします。犬と出会って日が浅い方や、うちのような特殊な子を飼っていらっしゃる方のお役に立てると幸いです。

#犬の防災

麻真/ペットの肖像画家

「触れない犬」ミルとの攻防

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2018年、広島県に住む私は自宅の庭で2匹の犬を飼っていました。ミルは2012年の秋、ラッキーは2016年の秋に、うちに迷い込んで来た犬です。

どちらも過去に虐待が疑われ、なかなか人に懐きません。特にミルは仔犬の頃から首輪にひどいトラウマがあり、首輪の装着・交換に麻酔が必要なほどの「触れない犬」でした。

意を決して首輪交換に挑戦

前回首輪を交換してから2年が経過し、傷んできたので、そろそろまた替えないといけません。
ラッキーが来てからはミルもかなり変わりました。時々触ることもできるようになったので、もう私に首輪をつけさせてくれるかもしれない。そう思い、自分で挑戦してみることにしました。

一度外すと二度と着けさせてくれない

そっと首輪に手をかけると、あっさり外させてくれるではないですか。

“やった!じゃあ新しいのをつけよう!”

…駄目でした。
首輪を手に持っているだけで傍に寄らせてくれません。隠して近寄っても、察して逃げ回り、狭いところに追い込むと、唸ってかみつこうとします。

結局、庭を金網で囲うことに

リードをつけられなくなったミルが庭で放し飼いになってしまったので、外に出られないように金網で庭を囲み、出かけるときには門扉を自転車のチェーンロックで閉めることに。

なんとか首輪をつけようと奮闘する生活がひと月近く続いた頃、あの日がやってきたのです。

そしてやってきた西日本豪雨災害

7月6日。
梅雨と台風で数日間断続的に降り続いた雨が、この日は激しさを増していました。

大雨が降ると、道路を挟んで向かいの山から来る水が庭に流れ込み、床下に浸水することがあります。今回も来るかもしれないと覚悟。床下の通気口を板で塞いでまわりました。

山から大きな石が・・

夕飯が終わった頃、ミルが激しく吠え始めました。外を見ると、庭から一段上がった玄関の高さまで水がきています。同じ高さに置いた犬小屋も、もう浸水しそうです。

道路まで出てみました。山から流れ出た石がゴロゴロ転がり、その上を跳ねるように流れる大量の水。こんな大きな石が流れ出しているのは、今まで見たことがありません。

“いつもの雨とは違う。避難したほうがいいかもしれない。”

避難指示を受け、みんなで車に

部屋に戻り、テレビをつけると、やはり避難指示が出ています。急いで思いつく必需品をかき集め、猫を軽自動車の助手席に乗せました。
それから車の後部座席を倒してブルーシートを敷き、ラッキーをそこへ。

次は、ミルです。

吠えて異常を知らせたくらいだから、尋常でないことが起きていることはわかっているはず。リードで誘導すれば車に乗ることができるようになっていたので、こんな非常事態なら、リードがなくても車に乗ってくれるのではないか、そう期待しました。

泣く泣くミルを置いていくことに

しかし、いくら呼んでもミルは来てくれませんでした。
追いかけると、叩きつける雨の中、真っ暗な庭を逃げまわります。

”こんなことをしている間にも山が崩れてくるかもしれない!”

これ以上ここにいるのは危険です。
私は、ミルを置いて逃げる決断をするしかありませんでした。

“ミルに何事もありませんように…”
祈るような気持ちで車を出しました。

防犯カメラに写った当時の様子

動画はその時の様子を5分に編集したものです。雨で防犯カメラが故障し、奇跡的に上書きされずに残っていました。9カ月以上経って、新居にカメラをつけようとしたとき、動画を発見。貴重な資料が残っていたことに驚きました。

3日間の避難生活と重大な決断

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その夜は近くの道の駅の駐車場で車中泊。
翌朝雨が止んだので、家に帰ってみました。

疲れきった様子のミル。

幸い、土砂は来ていませんでした。
でも、山からはまだ勢いよく水が流れ出し、庭にも流れ込んでいます。

不安な日々は続き

午前中には、役場や地域の方が門扉の前に土嚢を置いてくださり、とりあえず庭に水は入らなくなりました。
とはいえ、地盤が緩んでいるので、少しの雨でも土砂崩れが起こるかもしれません。昼間は帰れても、そんな家で眠る気にはなれず、その晩も、その次の晩も、道の駅の駐車場で猫と過ごしました。

犬たちもストレスを感じている様子

身体が大きいラッキーは狭い車の中にいるとストレスがたまるようなので、夜もミルと一緒に庭に放していました。それでも普段と違う状況にストレスを感じるのか、地面で転げまわるという、見たことのない行動をするようになりました。

持ち家を捨てることを決意

“このままここにいたら、いつか取り返しのつかないことになる”

これまで何度も床下浸水し、大雨が降るたび不安な思いをしてきましたが、永年住んだ家を離れることはできませんでした。
でも今回は、危険な持ち家を捨てて引っ越す決心がつきました。そして運よく、古いけど犬たちと快適に過ごせそうな家がすぐに見つかりました。

1ヶ月半かけた引っ越し

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引っ越し先は同じ町内で、元の家から5㎞ほどの場所。7月11日から、自分の軽自動車で少しずつ荷物を運んでいきました。
荷物を運び出す間も、ミルはずっと持ち家の庭で、ひとり夜を過ごしていました。

仕上げはミル

大事なものと必要なものを全て運び終えたのは8月の終わり。でも、ミルを連れて行かなければ引っ越しは完了しません。助っ人を頼み、4人がかりでミルに首輪をつけることになりました。

大きなネットを広げてミルを追います。ネットが破れるほど大暴れするミル。犬小屋に逃げ込んだところで、準備してきた虫取り網を顔にすっぽり被せました。噛まれないように、網の上から首輪をつけます。ハサミでチョキチョキ網を切っていくと、少しずつ怒った顔が現れました。刺激しないようにそっと柄を持ち上げ、網の輪っかを首から外すと…

うまくいきました!
リードも最初から首輪につけておいたので、そのまま車へ誘導。

全員そろっての新生活

新居に着いてラッキーに会った時の、嬉しそうなミルの顔は忘れられません。
これまでは、無理やり首輪をつけた後、ミルとの距離は開いていました。でもこの時は逆に、近づいた気がします。本当は寂しくて不安で、強引にでも引っ張って来てほしかったのでしょう。

やっと全員そろって新居での生活が始まりました。

犬たちと災害を体験して、いま

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この経験を通して私が一番強く感じたことは、非常時こそ愛犬との絆が大切だということです。
まだ信頼関係ができていなかったため、私はミルを命の危険にさらしてしまいました。

撫でさせてくれるようになったミル

あれから3年。
ミルも今は、ラッキーと一緒なら毎日お散歩できます。散歩中の開放的な気持ちの時には、撫でてくれとねだる仕草を見せるまでになりました。
でもまだ、すべての警戒を解いてくれたわけではありません。もっと親密なコミュニケーションがとれるよう、これからも少しずつ距離をつめていければと思います。

日頃からの備えの大切さを実感

そしてもう一つ、普段から災害に備えておくことがとても重要だということを、身をもって感じました。

“床下浸水はあっても、避難するほどのことはないだろう”
過去の経験から、そう軽く考えていました。

全く心の準備をしていなかった私は、あの時、避難指示が出てから避難の準備を始めたのです。知識として日常から準備しておくべきなのは知っていましたが、自分事としてとらえていなかったと反省しています。

避難指示が出る前に避難準備をするように

あの豪雨の後は、テレビやスマホの情報に注意し、早めに避難準備を始めるようになりました。
避難指示よりひとつ前の、レベル3で車にブルーシートを敷き、エサや水など持ち出すものを玄関にまとめます。避難指示が出たら、すぐその荷物を車に積み、犬たち猫たちを乗せて、そう遠くない安全な駐車場に避難すると決めています。

その時が来てからでは、焦って冷静な判断ができません。何を持ち出すか、どこに避難するかなど、平常時に考えておくことをお勧めします。

すべては犬たちとの幸せな生活を守るため

最近は、今までになかったレベルの災害があちこちで起きています。
誰がどこで、どんな災害に遭ってもおかしくないのです。

犬たちとの幸せな生活を守るため、日頃から防災のことを頭の片隅に置いておきたいものです。

愛犬のための防災に取り組もう

ドックドッグでは、2021年9月の防災月間に30日間連続で「犬の防災」に関するオリジナル情報配信してまいりました。
すべての記事を以下のページにアーカイブ化してあるので、気になるテーマがあれば遡ってチェックしてみてくださいね!

参考文献
  • 公開日:

    2021.09.27

  • 更新日:

    2021.09.30

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