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柴犬 小説
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2021.09.26

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第3部】|vol.14

豆しば暮らし|風を感じて

いい刺激を与えることは、認知症の進行を遅らせることにつながるようです。
時間帯やコースを変えながらお散歩をすること、今まで以上にたくさん話しかけること、たくさん遊ぶこと…。
思いつく限りのことを、メロンと一緒に楽しみました。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第3部】の連載第14話です。

少しずつ、でも確実に

「数値は安定しています。リンパ球の変形も、ほとんど見られません。認知症についても、さほど進行しているようには思えません。ただ、脚の方が…」

12歳になったメロンは、歩くペースがかなりゆっくりになりました。
歩き方がぎこちなくなり、普通に歩くことが難しくなっています。

「介護用のハーネスを使ってみてはいかがでしょうか。歩行を補助してくれるものです」

早速ママは、介護用のハーネスを購入して試してみました。
持ち手を引き上げながら歩くことで、メロンの脚への負担は軽くなり、ずいぶんと楽になったようです。

「どう、メロン? これなら歩きやすいんじゃない?」

介護用のハーネスのおかげで、メロンはお散歩の楽しさを思い出しました。
大好きな人と大好きなお散歩。
幸せな時間。

ですが、メロンの脚の衰えが、それで止まった訳ではありません。
介護用のハーネスを使っても、歩くことが辛くなってしまいました。

ついに訪れたその日

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13歳の誕生日を迎えた頃、お散歩中にメロンは何度も立ち止まるようになりました。
それでも、少し休むとまた歩き始めます。
大好きなこと、幸せなことを、失いたくはなかったのです。

ですが、とうとう、次の一歩を踏み出すことができなくなってしまいました。

「メロン…。もう歩けなくなっちゃったの?」

ママの悲しそうな顔が、メロンの瞳に映っています。

ごめんね、ママ。
いろんなことがわからなくなって、いろんなことができなくなって。
わたし、どうしちゃったのかなぁ…。

「大丈夫。いつかはこうなると思って、準備してあるんだ」

メロンを抱きかかえたママは、急いで家に戻りました。

たとえ歩けなくなっても

玄関脇から犬用のカートを運び出し、そこにメロンを乗せます。

「防水マットの上にトイレシートを敷いてあるからね。おしっこしたくなったらしていいよ」

ゆっくりとカートを押して歩き始めました。

「子供の頃、犬をベビーカーに乗せて歩いているおばあさんを見たことがあってね。どうしてお散歩させてあげないんだろう、ひどい人だなって思ったの」

ママは微笑みながら、メロンに話しかけます。

「やっとわかったよ。たとえ歩けなくなっても、お外に連れて行ってあげたい、気持ちのいい風を感じさせてあげたいって思ってたんだね、あのおばあさん」

秋のひんやりとした風が、メロンの頬をそっと撫でました。

「これからは、このカートとママがメロンの脚になるよ。お日様にあたって、風を感じて。どこまでも歩いていこうね!」

  • 更新日:

    2021.09.26

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。