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ドッグランにいる柴犬
連載 / ブログ
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2021.08.29

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第3部】|vol.10

豆しば暮らし|落陽

お散歩仲間との早朝の散歩で、最近話題なのが、ドッグランに現れるおじいさんと老犬。
色々と考えさせられると、みんなは言います。
ママはまだ、そのおじいさんと老犬を見たことがありませんでした。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第3部】の連載第10話です。

夕暮れ時のドッグラン

「ただいまー!」

仕事を終えて、ママが帰って来ました。
今日は日曜日。
パパとハルカちゃんとメロンは、お留守番です。

「ちょっと遅くなっちゃったけど、ドッグラン行く?」

「そうだね。ドッグランに行かない日曜日なんて、しっくりこないもんな」

ママが着替えるのを待って、みんなでドッグランへ。
到着した頃には、もう陽が傾いていました。

「夕暮れ時に来たのって、初めてだね」

「ママはベンチで休んでて。パパ、メロン、行くよー!」

ハルカちゃんが先頭に立って走り出しました。

出会い

首をかしげる柴犬

ベンチに座ったママは、あたりを見廻しました。
遠くから、おじいさんと老犬が歩いて来るのが見えます。

「もしかして…噂の?」

おじいさんと老犬は、お互いを気遣うようにして、ゆっくりと歩いていました。
時々、おじいさんが微笑みながら声をかけると、老犬は優しく見つめ返します。

「おねえさん、お隣に腰掛けてもいいかね?」

「どうぞどうぞ」

よっこいしょと腰掛けるおじいさんの足元で、老犬はゆっくりとお座りしました。

「わんちゃん、何歳なんですか?」

「もう15歳だよ。俺と同じ、老いぼれだ」

足腰が弱り、目も耳も遠くなり。
ドッグランに来ても、駆け回ることなんてできないのだと、おじいさんは言います。

「それでもな、自由に歩かせてやりたくてなぁ。幸い、家がすぐ近くだから、毎日ここに来てるんだ。まぁ、自由にって言っても、俺を守っているつもりなのか、俺のそばから離れないから、楽しいのかどうかはわからんが…」

老い

「子供達は遠くで所帯を持って、帰って来るのは正月だけ。ばあさんは、もう何年も前に逝っちまった。今では、俺の家族はこいつだけさ」

おじいさんは笑って言います。

「俺が先に逝くかもしれん、こいつが先に逝くかもしれん。だから、一緒にいられる間は、できる限りのことをしてやりたい。じゃないと、後でばあさんに叱られるからな」

もうひと周りして来ると、おじいさんは立ち上がりました。
夕日を背に受け、寄り添って歩くおじいさんと老犬を見ながら、ママは考えます。

老いは誰にでもやって来る。
でも、その速度は決して平等ではない。おじいさんが先に亡くなってしまったら…?
私がおばあさんになった時、もう私の隣にメロンはいないんだ…。

メロンが風を切って走る姿が見えました。
ですが、全盛期のスピードには遠く及びません。
すでに老いは、メロンの背後まで忍び寄っているのです。

いずれ老いを迎えるメロンに、私がすべきことも、してあげたいこともたくさんある。
だけど、絶対にしなければならないことは一つ。
それは、泣かないことだ。

お互いを想い合いながら、人生の落陽を共に歩むことのできるおじいさんと老犬を、ママはちょっぴり羨ましくも思いました。

  • 更新日:

    2021.08.29

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。