
セナと暮らしていた当時、犬と一緒に泊まれるホテルどころかカフェですらどこを探してもない時代でした。セナは、1997年生まれ。現在でも健在なら24歳になります。この当時、ゴールデンレトリバーは、1位のシーズーについで人気犬種の総合ランキングで第2位(JKC調べ)。しかし、人気犬種でありながら、まだまだ社会的認知度は低く、セナを連れて歩いていると好奇の目で見られることも多かったように思います。
今でこそ「犬は家族の一員」として、その存在価値が認められていますが、少し前までは出会う多くの人が「この犬噛む?」「怖い」と言われるのが当たり前でした。首輪やリードはアメリカから通販で取り寄せ、ドッグフードは選べるほどの種類がない、その頃の日本では犬、特に大型犬を飼うこと自体が珍しかったからです。もちろん、今のようにドッグカフェなどはなく、どこへ行っても「犬はお断り」。生来出不精だったワタシは「犬がいるから」と引きこもりがちになっていました。

そんなある日、大型犬でも宿泊できるペンションがあるという話を聞きました。憧れだったセナとの旅が実現する!そう考えたワタシは、喜び勇んで予約しました。生まれて初めての犬旅、セナは喜んでくれるかな?と期待に胸は膨らみ、出発の日を心待ちにしていました。
旅好きではないワタシは、それまでペンションというものに宿泊したことがありませんでした。ホテルしか泊まったことがないワタシが初めて訪れたペンション。フロントのある本館に対しては、特に悪い印象はありませんでしたが、宿泊棟に案内されて「え?ここに泊まるの?」と驚いたことを今でもはっきり覚えています。
旅慣れた人なら、ペンションとはこんなものだと思う程度の施設だったのかもしれませんが、まるで2階建てのアパートのような宿泊棟。そんな飼い主の動揺を感じてか、セナも引き気味。繊細だったセナは、着いてすぐ3つのことを嫌がりました。
部屋に行くまで、各部屋の前を通るたびに中から警戒吠えされたこと。そのペンションは、大型犬が多く宿泊することで有名だったため、明らかに大型犬のものだと思われる警戒吠えに出迎えられ、セナは萎縮してしまいました。
部屋に入った途端に、外に出して欲しいと訴えるセナ。人間のワタシでも感じた部屋に漂う「犬の匂い」。おそらく、セナには耐えられない「匂い」が充満していたのでしょう。この部屋には居たくない、そうセナは伝えてきたのです。
「ベッドに犬を乗せないでください」と部屋のあちこちに注意書きがあるにもかかわらず、ベッドは犬の匂いに満ちていました。真冬の寒い夜であるにもかかわらず、テラスに出してくれ、テラスで寝ると言い張るセナ。外で寝たことなどないセナのために、毛布を頭からかぶり、テラスで朝まで過ごしたことは、今となってはいい思い出です。

セナの一件以来、結果的に私は犬と一緒に旅をすることはやめました。犬の嗅覚は、人間からは計り知れない臭いを感知するもの。どんなに事前に確認しても宿泊施設の臭いまでは分かりません。人間にはわからない臭いに、犬はストレスを感じるかもしれない、と身をもって感じたからです。
最近では、犬との宿泊を前提とした高級リゾートホテルやおしゃれなペンションが日本中にオープンしていますよね。しかし、残念ながら「体重20kgまで」「小型犬のみ」といった条件を設けている施設も多くあります。
大型犬2頭と一緒に旅をしたいワタシにとって、受け入れ条件に見合う施設が少ないことも犬旅に行かなくなった理由のひとつですが、たとえ条件を通過したとしても「大型犬が冷遇される」ことが多くで嫌な気持ちになった経験も大きいです。
初めての旅で嫌な思いをしたものの、その後も何度か大型犬2頭と宿泊できるか問い合わせたことがあります。多くの答えが「大型犬は危ないので宿泊できません」「大型犬に対応できる従業員がいません」というもの。まるで、怪獣か何かが泊まるような扱いを受けて、とても悲しい想いをした記憶があります。
確かに、大型犬は力が強く声も太いため、よく知らないままに一見すると怖そうな印象を受けるかもしれませんが、性格は落ち着いている子も多く、しっかりとしつけをしていれば決して怪獣にはならないはずです。
最近では、ドッグカフェに行ってもテーブルの下でステイできる犬はほとんど見かけないような気がします。ワタシにとっては、「飼い主が食事をしている間は足元でステイ」「他の犬を見ても無関心を装えること」が最低限犬たちに身につけてほしいマナーだと考えているので、たとえ五つ星レストランに連れて行っても恥ずかしくないようにしつけをしています。
しかしながら、しつけがしっかりとできていたとしても、施設の中には「大型犬だから」という理由で受け入れを断るケースも見られることに、やはり違和感を拭えません。

大型犬への冷遇以外にも、犬の扱い方に違和感を覚えることがあります。
悲しいことに、高級を掲げるホテルほど犬専用の椅子やメニューを用意し「ワンちゃんも一緒にお食事を」などと犬を人間のように扱うことを強調した宣伝文句を並べている施設が多い印象を受けます。また、「館内ではマナーウエアの着用を」義務付けている施設も増えてきているような。
人それぞれ考え方はあるかと思いますが、このような擬人化に私は自分と愛犬との関係性との違いを感じ、違和感を覚えてしまいます。それゆえに施設を探そうとする度に、そういった表記を目にして、徐々に徐々に犬旅への苦手意識が生まれてしまったような気もします。

犬OKの施設に苦手意識を抱くようになったワタシの夢は、犬と一緒に行くキャンピングカーでの旅。誰に気兼ねすることもなく、犬と一緒に好きなところへ旅ができれば楽しいに違いありません。そんな日を夢見る今日この頃です。
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