magazine

柴犬 小説
連載 / ブログ
鉛筆アイコン

2021.07.11

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第3部】|vol.2

豆しば暮らし|巣立ち・中編

メロンの子供たちの引き取り手が決まったと思った矢先。
最初にメロンの子供が欲しいと言い出したパパの友人が、急な転勤のため飼えなくなるという、まさかの事態が発生しました。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第3部】の連載第2話です。

それは現実的ではない

「もう一度いろいろあたってみたけど、やっぱり無理だって…」

「私も同じく。困ったねぇ…」

ハルカちゃんを寝かしつけた後、ゴマの女の子の新たな引き取り先という問題に、二人は頭を抱えていました。

「いっそのこと、このままうちの子にする?」

「そうしたいけど、でもなぁ…」

ゴマの女の子はとても活発で、優しく賢い子でしたが、非常に気が強く…。
きょうだいの中で、誰よりもメロンの気質を受け継いでいます。

「メロンの時と同じくらい、しつけに苦労しそうな気がする」

「そうだね。たとえメロンが手伝ってくれたとしても、ハルカがいるから手が回らないと言うか、メロンの時のように真剣に向き合うことは難しいと言うか…」

「やっぱり、うちで飼うのは現実的ではないね」

手をあげたのは見知らぬ人

画像のalt設定

ある日のこと。
パパの友人から、引き取りたいと言っている人がいるという電話がありました。

「あいつの友達の友達なんだって」

「パパの知ってる人?」

「いや、全然。でも、あいつの友達の友達なら、いいヤツだと思うよ」

引き取り手を見つけてくれたことは本当にありがたいけど、見ず知らずの人って…。
ママは、ためらっていました。

小さくとも命あるもの、しかもメロンの子供を託すのです。
本の貸し借りをするような訳にはいきません。

「一度、その人に会わせてもらいたいって伝えて」

理由

「初めまして!」

パパの友人の友人の友人の奥さんが訪ねてきました。
今回のことについて、最も乗り気なのが奥さんなのだとか。

「この子なんですけどね」

ママは、ゴマの女の子を、奥さんの膝の上に乗せました。

「わぁ、かわいい! 賢そうですね」

「きょうだいの面倒をよくみる優しいお姉ちゃんなんですが、すごく気が強くて…。しつけが大変だと思います。ところで、どうして犬を飼おうと思ったんですか?」

ゴマの女の子をなでながら、奥さんが話し始めました。

「小学生の娘が、いくつもアレルギーを持っているんです。ハウスダストとか、花粉とか、卵とか…」

制限の多い生活の中で子供らしさが失われていっている気がすると、奥さんは言います。

犬を飼い、一緒に遊んだりお世話をしたりすることで、そうしたものを取り戻すことができるのではないか。
その一言が、ママの顔を曇らせました。

「初対面の方にこんなことを言うのは大変申し訳ないのですが…あれこれ制限されることで溜まってゆく娘さんのストレスを、犬と暮らすことで解消したいとおっしゃているように聞こえます」

二人の間に、重苦しい沈黙が流れました。

  • 更新日:

    2021.07.11

いいなと思ったらシェア
ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。