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じゃれあう2頭の親犬と子犬
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2021.05.10

犬の社会化が必要なわけとは?社会化の是非で決まる犬の幸福度

子犬を迎えたら社会化をしましょう!近年、しつけ教室や犬に関するサイトでよく聞くこのフレーズ。初めて犬を迎えた時に、「まずは犬の社会化を」と言われても、何をどうすればいいのか分からないと悩む方も多いのではないでしょうか?実は、人間の子どもも社会化期である10歳までの過ごし方が、一生を左右する重要な時期だとされています。犬の場合も、子犬期の過ごし方がとても重要です。この時期を社会化期と呼びます。今回は、この社会化とは一体どのようなことなのか、社会化の必要性と社会化不足の犬に訪れる不幸とは?について詳しくご紹介します。

文:西村 百合子/ホリスティックケアカウンセラー、愛玩動物救命士

犬にとっての社会化とは?

2頭の子犬

社会化とは、犬が人間と一緒に生活していく上で必要な適応能力を身につけることを指します。犬は、生後4週~4ヶ月齢までが人間の10歳までの時期に相当し、この期間に身体だけではなく脳が発達しています。この脳が発達していく時期を脳科学では「社会化の感受性期」と呼び、一般的には「社会化期」と呼ばれてます。

社会化で犬が得るものとは

犬にとって生後4週齢は離乳が始まり、母犬や子犬同士と活発にじゃれあいを始める時期。人間では1歳程度にあたると言われています。この頃になると、親分気質やおとなしい性質など個々の性格の違いが見えてきます。犬種や個体差によっても異なりますが、体重も約4倍になり犬らしい外観となってきます。そして、身体の成長とともに脳も急速に発達しはじめます。この時期が社会化期の始まりです。

社会化の始まりは犬同士で学ぶこと

犬同士は、たとえ小さな子犬であってもお互いにコミュにケーションを取っています。子犬同士の遊びがエスカレートすれば、母犬が間に割って入り教育的指導をします。また、子犬がお互いにどれぐらいの強さで噛めば痛いのかを遊びながら学習していくのも、この時期です。生後4週齢から犬として生きていくためのルールやマナーを学び始めるのです。

人間と暮らしていくためのルールを覚える

以前の日本では、犬は外で番犬として飼うことが当たり前でした。その当時は、犬の社会化は必要なかったかもしれません。しかし、近年では「犬は家族の一員」と犬の社会的地位が大きく変化、人と同じ室内空間で暮らす犬が増え、カフェやホテルに一緒に出かけることも当たり前となってきています。

そこで必要不可欠なのが犬の社会化です。人間社会で、人と同じように暮らしていくためにあらゆる環境に慣れ、どんな刺激にも堪えられるための準備をすることが必要となりました。これが犬の社会化です。

社会化期にやっておきたい3つのこと

かごに入れられた2頭の子犬

前述のように、犬の脳は4ヶ月齢までに急速に発達します。言い換えればこの時期は、なんでも吸収できる時期。そして、まだ怖い物知らずの時期でもあるのです。この月齢までにさまざまな体験をすることで、犬は人間社会で暮らしていくためのルールやマナーの基礎を学習し、人間に対して信頼関係を持つことができるようになります。これが犬の社会化です。

やっておきたいこと1.音に慣らす

人間が生活する環境にはさまざまな音があります。特に、バイクや車の音、工事現場の騒音、子どもの声、学校や時間を知らせるチャイム、商店街でのさまざまな大きな音などに慣らしておくことが大切です。また、カミナリや花火、強風などの音にも慣らしておくために、音が録音されているCDなどを利用するのも一つの方法です。

やっておきたいこと2.人との接触

人間社会で暮らしていくためには、飼い主やその家族以外の人との接触にも慣れておく必要があります。宅配便や新聞配達など家へ訪れる人、街ですれ違う人、他の犬の飼い主、子ども達などの他に獣医師、警察官などの制服を着ている人や大柄の人などあらゆるタイプの人と接触することが大切です。

この時、ある特定のタイプの人にだけ吠えてしまったり、怖がって後ずさりするような場合は、その人からおやつをもらうなどの工夫をして「怖くない」ことを学習させましょう。

やっておきたいこと3.外の世界に慣れる

社会化期の子犬は、感染症などの病気を発症するリスクが高い時期ですが、だからと言って外に連れ出さないでいると、社会化の時期を家の中だけで過ごすことになってしまいます。そこで、抱っこやカート、キャリーなどを利用して外へ出かけることがおすすめです。

商店街や公園、学校、駅、電車、工事現場などの生活音が伴う場所をはじめ、自然が近くにある場合は、川や池、海、山などあらゆるところへ連れて行ってみましょう。なお、ドッグランや犬が集まっている公園など犬が多くいる場所へ行く時は、感染のリスクを避けるためにも中に入らずに遠くから見せるだけにしましょう。

社会化不足の犬に待っている不幸とは

親犬に群がる子犬たち

犬は社会化によって、あらゆる体験を通じて犬の本能には刻まれてこなかった事象までを覚え、慣れることができます。しかし、この社会化が行われなかった犬は、将来にわたってさまざまなストレスを抱えることになってしまうのです。

音が怖い

さまざまな音を体験しなかった犬は、大きな音やビックリしたり、怯えるようになる可能性があります。人間と暮らす中で、音は避けては通れないもの。いつどんな音がするかは予想がつきません。そのため、常に怯えながら暮らすことになってしまったり、散歩に行かれない犬になってしまう可能性があります。これは、犬にとって大きな不幸と言えます。

外の世界が怖い

社会化期にさまざまな環境を体験していない犬は、散歩中に出会う全てのものに対して不安や恐怖を覚えてしまう可能性があります。そのため「散歩嫌い」となり家から出たがらなくなってしまったり、すれ違う人や犬、猫全てに吠えかかってしまうなどの問題行動を起こす可能性があります。本来、外の世界が好きな犬がその世界に対して恐怖心を持つことは犬にとって不幸と言えます。

毎日がストレスに感じてしまう

社会化が適正に行われなかった犬は、あらゆるものにストレスを感じてしまいます。特に、恐怖心は攻撃へと転じる可能性が高く、唸る、噛むといった問題行動に発展することがあります。成犬になってから、その問題行動に気がついても矯正することは非常に難しく、このことが原因で飼育放棄される犬が多いことも事実です。

人間とは違い、ストレスを発散しにお酒を飲みに行ったり、カラオケに行くことができない犬にとって、ストレスの多い毎日は不幸そのもの。最悪の場合は、攻撃だけではなく自傷行動や病気を発症してしまうこともあるため注意が必要です。

犬と笑顔で暮らすために社会化は必要不可欠!

飼い主と見つめ合う犬

改正動物愛護法では、8週齢規制により、生後56日未満の仔犬の販売が禁止され、その施行が待たれるところですが、現在でも生後間もない時期には親兄弟から引き離された犬が多く販売されています。もっとも犬にとって敏感で大切な時期に、母犬の愛情や兄弟との関わりを持たずに育った犬は、基本的な社会性が欠落していると言っても過言ではありません。人間は犬の代わりにはなりませんが、子犬を育てることということは、人間一人を育てることと同じだけの労力が必要だと認識することが大切です。将来、問題犬を抱えて悩むより、子犬にとって大切な社会化期をどう過ごすかを真剣にいつめることが大切です。犬は可愛がるだけでは成長しません。どんなに遅くても1歳までに社会化をしっかりとして、ベストパートナーとなる犬を育ててください。

参考文献
  • 更新日:

    2021.05.10

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ライター・専門家プロフィール
  • 西村 百合子
  • ホリスティックケアカウンセラー、愛玩動物救命士
  • ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。 現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。