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2021.05.19

小説|雨野さん家のたねとまめ【第2部】|vol.4

雨野さん家のたねとまめ|お疲れお兄ちゃん

吾輩はたねである。ソファーにもたれかかってぐったりしているのは陽介くん。雨野さん家のお兄ちゃんである。

#たねとまめ

篠目 春行/アマチュア小説家、シナリオライター

この記事は、猫の「たね」と犬の「まめ」の暮らしを描いた、アマチュア小説家による創作物語の連載第2部第4話です。

珍しくお疲れ気味のお兄ちゃんに、たねとまめで癒しの時間。

ぐったりお兄ちゃん

ちょっと前から帰りが遅いお兄ちゃん。今日は帰るや否やスーツのジャケットを脱いでソファーにぐったりともたれ込んでしまった。

「ああ、お帰り陽介、大丈夫か?」

「ただいまー…大丈夫大丈夫…」

お父さんへの返事もどこか疲れ果ててて、ちょっぴり心配である。

「仕事、忙しいのかい?」

「新人教育が大変で…、俺もまだまだ未熟だからテンパっちゃってね。最初だしちゃんと教えてあげたいんだけどさー」

天井を仰ぎながらお兄ちゃんは言う。なんのことかわからないけど、とりあえず大変だってことはわかった。

癒してあげる

「にゃー」

くたくたのお兄ちゃんに、お疲れ様ってたねは言った。するとお兄ちゃんはたねの方を向いておいでと手まねきする。

たねを撫でて癒されたいの? 仕方ないにゃあ。

よっこいしょ、とお兄ちゃんに撫でられるために腰を上げるたね。

しかしいざお兄ちゃんの方へ向かうと、お兄ちゃんの手のひらの下には何故かまめがいた。

およばれしたのに

!?

え? 呼ばれたのはたねだよね!?

そう思って勢いよくお兄ちゃんの顔を見る。

「まめー…」

お兄ちゃんはたねなんてお構いなしにまめに癒されているようだった。

むむむ、最近お兄ちゃんまめばっかりじゃない? たねはちょっぴり御立腹。…でも、ここ最近はすごく疲れているみたいだから、今回は見逃してあげることにした。

大人なたねは、まめと反対側のお兄ちゃんの隣に座る。べ、別にこうすればもう片方の手で撫でてもらえるかも、なんて思ってないんだからね! ちゃんと大人なたねなんだからね!

だけどそんな期待も虚しくお兄ちゃんはまめにお熱のようだった。

むー。

もういいもん!

「にゃあ」

試しに、たねが来たよって言ってみる。けれどお兄ちゃんの左手はこっちに来ない。

…と、思ったら。

「わふ」

ひょっこりお兄ちゃんの陰から顔を出したのはまめ。たねの鳴き声を聞いて呼ばれたと思ったのか、お兄ちゃんの手をすり抜けてたねの隣にやってきた。

「あれ、まめ?」

お兄ちゃんは手をすり抜けていったまめに首を傾げる。

「あ、たねの隣に行きたかったのか。まめはたねが本当に好きだよね」

でも、たねの隣にぴったりとくっつくまめを見ると、ああ、とすぐに納得していた。

もちろん、たねはまめを呼んだわけではない。だけど、お兄ちゃんにスルーされて傷心中のため、まめはこっちに気付いてくれたってだけでほんの少しだけ嬉しくなってしまう、たねなのであった。

  • 更新日:

    2021.05.19

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ライター・専門家プロフィール
  • 篠目 春行
  • アマチュア小説家、シナリオライター
  • 柔らかな文体での創作物語を中心に活動しています。 飼い主だけでなく他の動物と交流する犬の可愛さを、私の文章で色んな人にお伝えできたら嬉しいです。