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柴犬 小説
連載 / ブログ

2021.05.30

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと【第2部】|vol.15

豆しば暮らし|赤ちゃんがやって来た!

「本当に、もう生まれたの?」
分娩室に入って15分足らず。驚くほど、軽いお産でした。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語【第2部】の連載第15話です。

ママが帰って来たけど…

赤ちゃんの名前は、ハルカちゃん。

厳しい冬を乗り越えなければならない北国の人々にとって、春の訪れほど待ち遠しいものはありません。
誰もが待ち望む光の季節の訪れを、そっと告げる可憐な花のような子。
人に愛と希望を惜しみなく与える子。
そんな子に育って欲しいという願いの込められた名前です。

「ただいまぁ。…あれ、メロン?」

いつもなら、お座りをしてお迎えをしてくれるメロンが、ドアの陰から顔を覗かせていました。

「一週間近くママがいなかったから、もう帰ってこないと思ったみたい。ずっと寂しがってたよ」

「それなのに帰って来たもんだから、どうしたらいいのかわからないのかな?」

ハルカちゃんを抱っこしてリビングにむかい、ソファに座るママを、メロンは距離をとって眺めているだけでした。

初めまして!

「おいで、メロン」

ママの呼ぶ声に、メロンはおずおずと近づいて来ます。
そして、そうっとママの膝の上に。
目を潤ませて、ママを見つめていました。

もう、どこにも行かないで…。

そう訴えているような切なげなメロンの瞳に、思わずママも涙がこぼれます。

ですが、その瞬間。
メロンの目は、ハルカちゃんに釘付けになってしまいました。
ハルカちゃんが吸い込まれてしまいそうな勢いで匂いをかいで大喜び。

「ちょっとメロン、感動の再会はどこに行ったの?!」

もう、それどころではありません。
妹が無事に生まれてくれたことが嬉しくて嬉しくて…。

「ほらハルカ、メロン姉ちゃんだよ。初めまして、よろしくねって」

不審者は誰だ?!

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それからと言うもの、メロンはお姉ちゃんとして、甲斐甲斐しくママのお手伝いに明け暮れました。
ママがキッチンでお料理をしている時にハルカちゃんが泣けば、急いで知らせに来ます。
ハルカちゃんのオムツ替えをする時には、汚れたオムツを入れるゴミ箱をくわえて持ってきます。

そんなある日の夕方のこと。

ぐっすり眠っているハルカちゃんを起こさないよう、ママは部屋の照明をつけずに、オムツの汚れ具合を確かめていました。
すると、どこからか低い唸り声が!

「何…野犬?!」

いつの間にか野犬が侵入し、私達を狙っている?
そう思ったママは、ハルカちゃんを守ろうと身構えました。

ですが、その唸り声は野犬ではなく、メロンだったのです。
薄暗い部屋の中でハルカちゃんに覆い被さっているママを、視力の悪いメロンは、不審者が侵入しハルカちゃんに悪さをしようとしていると思ったようでした。

低い唸り声をあげて威嚇しながら、メロンはゆっくりと近づいて来ます。

「メロン、ママだよ」

今度はメロンがビックリする番。
目を見開き、口をあんぐりと開け、ぺたんとお座りしてしまいました。

「すっごい怖い顔してたよ、メロン。でも、本気でハルカを守ろうとしてくれたんだね。ありがとう!」

  • 更新日:

    2021.05.30

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。