脱臼とは、骨の関節部分がズレてしまう状態のことをいいます。発生原因は先天的な体の構造や、外部からの強い衝撃によるものがほとんどです。
症状は外見に現れないものの、痛みが伴うため、発生すると犬の行動に異常を生じさせます。軽度のものだと自然と元に位置に戻りますが、重度のものだと手術が必要になる場合もあります。
犬の脱臼は先天的な要因と外部的な要因で発生するということもあり、予防がし辛いといわれています。対策としては、脱臼しやすい箇所に負担をかけないようにすることが大切です。
転倒や落下による衝撃を防ぐためにも、部屋にカーペットを敷いたり、障害物を取り除くと良いでしょう。また、肥満の犬の場合は、体重による負担を減らすことも大切です。
犬の脱臼は主に3つの種類があります。それぞれ詳しく解説していきます。
犬の脱臼で一番発生しやすいのが膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)です。膝蓋骨とは、膝のくぼみに収まっている皿のような骨のことをいいます。膝蓋骨がくぼみからズレてしまうことで、痛みを引き起こします。
発生原因は、膝に強い衝撃が加わる外傷性と、生まれつき膝まわりに異常を持つ先天性の2つです。先天性の場合、成長と共に症状が現れるようになってきます。
膝蓋骨脱臼は、症状の重さによって4つのグレードに分かれています。
いずれも脱臼している間は、足を引きずる素振りが見られるようになります。
主に小型犬が膝蓋骨脱臼を発生させやすいといわれています。例としては、トイ・プードル、チワワ、ヨークシャー・テリアなどです。
性格が活発な場合は、激しく動き回る分、さらに膝蓋骨脱臼のリスクが高まるでしょう。
環軸亜脱臼(かんじくあだっきゅう)とは、犬の首部分にある第一頸椎と第二頸椎の関節が不安定になってしまう疾患です。
首の骨の脱臼ということもあり、痛みだけでなく、脊髄が圧迫されることによる四肢の麻痺が起こる場合もあります。
発生原因は、先天的な構造の異常があることによる場合もありますが、外部からの強い衝撃が加わったことによる後天性の可能性も考えられます。
痛みがあるため、首をまっすぐに伸ばせなくなります。麻痺がある場合は、足元がふらついたり、立ち上がることができない状態になるでしょう。
重度のものになると、脊髄が激しく傷つくことによって呼吸困難になり、最悪死亡してしまうケースもあります。
ヨークシャー・テリア、チワワ、トイ・プードル、ポメラニアン、ペキニーズ、ドーベルマン、ジャーマン・シェパードなど
股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)とは、犬の股部分にある骨盤と大腿骨をつなぐ関節が不安定になってしまう疾患です。
股関節は体の動きの中で最も負担がかかる部分であるため、脱臼してしまうとわずかに動くだけでも痛みが伴います。
発生原因としては、外部からの強い衝撃が加わることや、他の病気によって股部分の筋力が低下していることが挙げられます。
足を浮かせていたり、引きずっていたりと、歩き方に異常が見られることがほとんどです。激しく痛む場合は、立ち上がることもできなくなります。
トイ・プードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・ピンシャー、シェットランド・シープドッグなど
犬が脱臼を起こしてしまった場合に必要な治療法と、かかる費用について解説していきます。
脱臼の状態が軽度な場合は、運動制限や内服薬による内科治療が行われます。
重度の場合は、手術によって関節の固定などを行います。手術をする際は、入院も必要となるでしょう。
また、症状が軽度でも、何度も脱臼を起こすようであれば、手術を行う場合があります。重症化する前に治療を行うことで、より安定した経過が望めるでしょう。
症状の程度によって治療にかかる費用は大きく変わりますが、整形外科の手術であるため高額になることが多いです。 また病院によっても費用は異なるため、診断された場合、今後の治療方針とともに費用を聞いてみると安心です。
犬の脱臼は軽度なものだと気づきにくかったり、骨が自然と元の位置に戻ることも多いです。だからといって放置しておくと、成長とともに症状が重症化していったり、慢性化してしまいます。
脱臼の治療は早期に行うことで、より良い経過を望めます。もし、犬の行動に不自然さを感じたら、一度獣医師に相談するようにしましょう。
また、脱臼箇所に負担がかからないように、部屋の環境の見直し等を行ってみてください。