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連載 / ブログ

2021.04.21

小説|雨野さん家のたねとまめ|vol.19

雨野さん家のたねとまめ|朝のごあいさつ

吾輩はたねである。今日も一段と距離が近い黒いのはまめ。まだまだちびっこな奴である。

#たねとまめ

篠目 春行/アマチュア小説家、シナリオライター

この記事は、猫の「たね」と犬の「まめ」の暮らしを描いた、アマチュア小説家による創作物語の連載第19話です。

鼻をちょん

朝何者かの気配を感じて たね が重たい瞼をあげると、そこにはまめの顔がどーんと広がっていた。

たねはそれを見てびっくりしたけどそれより眠いのが勝った。無視してそのまま二度寝しようと瞼を閉じる。しかしなんとなく予想していた通りまめに阻止されたのである。

まめは寝ようとするたねの鼻に鼻先をくっつけてきた。まめの鼻息がこそばゆくて、たねは嫌って顔を背ける。

でもそんなのではめげないのがまめ。たねが顔を向けた先に回って、また鼻をちょんってくっつけてくる。

なんでそんな匂い嗅ぐの、たねの匂いなんていつも嗅いでるでしょ。

しかし眠くてそれ以上抵抗する気の起きない たね は、内心文句を言いながらまめにされるがままになっていた。

一体どういうこと?

まめが鼻先をくっつけたままたねのことを見つめる(たねは目を開けてないから見えないけど多分見られてる)こと数秒。

まめは満足したのかなんなのか、ようやく たね から離れて行った。

一体なんだったんだ……。

そう思いつつもこれで安眠できると意識を手放そうとすると、少し離れたところからお兄ちゃんの声が聞こえた。

「たね起きなかった?」

「くぅん」

そして、まめのしょんぼりしたような声も。

まめざまし

「あはは、ありがとまめ。…どうしようかなー、もうご飯の時間なんだけど、起きないかな」

どうやらまめはたねを起こしに来たらしい。

ちらりと時計を見ると短い針が8を超えた辺り。

もうご飯の時間かあ、今日はちょっぴり寝過ぎちゃったな。

起き上がろうかと体に力を込めるが、そこで少しだけ考える。

でぶちんじゃないもん

…今起き出したら眠気より食い気が優って起きてきた食いしん坊みたいじゃない?

たねそんなデブちん思考じゃないから……もうちょっと寝たふりでもしようかな。

「たねーご飯だよー」

またお兄ちゃんの声が聞こえる。たねは心の中で、3回呼ばれたら起きよう。そう決めた。

「たねー?」

あと1回、あと1回呼ばれたら行くから! ほら!

「…起きないねえ。仕方ないから先食べちゃおっか、まめ」

「わん!」

あと1回だってばあああ!!

たねの心の叫びはお兄ちゃんには届かず、お兄ちゃんとまめは台所へと消えていく。

どうする たね、お腹はばっちり空いてるし、行くなら今だぞ。でも食いしん坊だとも思われたくない…!

もにょもにょと葛藤すること数十秒、プライドも空腹には勝てない、たね なのであった。

  • 更新日:

    2021.04.21

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ライター・専門家プロフィール
  • 篠目 春行
  • アマチュア小説家、シナリオライター
  • 柔らかな文体での創作物語を中心に活動しています。 飼い主だけでなく他の動物と交流する犬の可愛さを、私の文章で色んな人にお伝えできたら嬉しいです。