まずは、どうしてドッグフードを選ぶのがこんなにも難しいのか?市場・メーカー・飼い主の3つの視点からそれぞれ考えてみましょう。
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、ペットフードの流通量は右肩上がりの傾向で増えており、2019年の時点では過去最大となっています。
盛り上がりを見せているペットフード市場なだけあり、多くのフードメーカーが新しく参入してきていることも考えられます。
たくさんのドッグフードメーカーがひしめき合う市場では、各社が工夫を凝らして「より良いもの」をつくる努力を絶やさず、さまざまな特長を備えた商品が数多く販売されるようになり、結果として飼い主にとっては選ぶのが難しい状況が生まれていると言えるのではないでしょうか。
そんな中ドッグフードメーカー各社では、より多くの飼い主さんたちに安心して選んでもらえるよう、他の商品との違いを明確にするためさまざまな工夫がなされています。
ペットフード協会の公式サイトによると、ペットフードはペットの健康維持や適切な発育のために以下のような配慮がされているとしています。
メーカー各社でも、原料や製法にこだわり、愛犬たちが美味しそうに食べてくれるかを考え、それらを分かりやすく伝えるための工夫を重ねています。
結果、そういった情報を受け取る飼い主としてはどれも良いような気がして選べない、という状況が生まれているとも考えられます。
※ペットフード協会公式サイトより引用
また、ドッグフードを選ぶ側の飼い主の意識変化も見られます。
一昔前まで犬の食事と言うと、決まったドッグフードを与え続けることが主流だったかもしれません。しかし昨今では、愛犬の健康を考えて手づくり食を取り入れる飼い主や、ドッグフードの原料や製法を詳しく調べたうえで、愛犬のライフステージや体質、アレルギーの有無に合わせて「うちの子に合う食事」を目指す飼い主が増えています。
調査会社マイボイスコムが2019年におこなった調査によると、回答者のうち約4分の1の飼い主が、定期的にフードを切り替える「フードローテーション」をおこなっていると回答しています。この結果からも、愛犬の体質や健康状態を細かくチェックしそれぞれに合う食事内容を目指す飼い主が多いことがわかります。
愛犬の体質や健康状態に合わせて最適なフードを選ぼうとすると、考慮すべきポイントがどんどん細分化されて、商品の多さも相まってピッタリくるものを選び出すのは更に至難の業になってしまうでしょう。
それでは、実際に愛犬のドッグフードを選ぶときに気にすべき16のチェックポイントを見ていきましょう。
一覧で記載したのち、下部で詳細に解説します。
ドッグフード選びの16のチェックリスト
犬種によって体のサイズがさまざまなことは皆さんご存じかと思いますが、人間の体重に当てはめて考えてみると改めて体格の差がいかに大きいかがわかります。
仮に体重が45kgの軽めの成人を1.5kgの小さめのチワワに例えると、80kgのオスのイングリッシュ・マスティフはチワワの約53倍の体重になるので、人間の例に当てはめると2.4トンの成人が想定されてしまいます。コンビニの前によく停まっているトラックくらいの重さです。
これだけの差があると、もちろん口や消化器などの臓器のサイズもさまざま。
小型犬には食べやすい小粒サイズのドッグフードを、大型犬には口から零れ落ちないようにある程度大粒のドッグフードを選んであげましょう。
サイズと併せて考えたいのが、粒の柔らかさです。
ここで注目すべきは、粒が柔らかいということは水分が多いという点です。しっかり水を飲める子、こまめに自分で水分補給ができる子の場合はそこまで神経質になる必要はありませんが、普段からあまり水を飲まない子や消化機能が衰えてきたシニア犬、子犬の場合は注意が必要です。
水分不足はさまざまな体の不調に繋がりますし、せっかく栄養価の高いフードを与えていても十分に栄養が吸収できないことも。愛犬の状態に合わせて、水分が多めのフードやふやかしやすいフードを検討してみましょう。
ドッグフード選びでは、体重に合わせて量やカロリーを調整することが非常に重要です。
環境省によると、ペットも人間と同様に太りすぎ・痩せすぎに注意が必要であるとし、犬や猫の理想体型を測るための「ボディコンディションスコア(BCS)」の判断方法をウェブ上で公開しています。犬の場合の理想は「BCS 3」とされており、見分け方は以下の通りです。
過度な脂肪の付着なしに、助骨が触れる。上から見て助骨の後ろに腰のくびれが見られる。横から見て腹部の吊り上がりが見られる。
また、理想体重を維持するために必要なカロリーの算出方法も紹介されているので、一度チェックしてみましょう。
愛犬が食物アレルギーを持っている場合は、アレルゲンとなる食品が含まれたドッグフードを誤って与えないよう注意が必要です。
ドッグフードのパッケージや公式サイトなどで原材料を事前によく確認し、アレルゲンが含まれていないかチェックしましょう。
アレルギーの検査をしたことがない場合は、愛犬が頻繁に体を掻いていないかなどをよく観察し、気になる場合はかかりつけの動物病院に相談して把握するようにするのがおすすめです。
また、原材料にアレルゲンが含まれていないか確認する際は、10個目のチェックポイントについても注意が必要です。
愛犬に持病がある場合は、摂取が制限される食材や栄養素が指定されていることがあります。
動物病院で指示があった場合は、指定のドッグフードを与えるか、制限された食材・栄養素が含まれていないことを確認してからドッグフードを選びましょう。
せっかく愛犬の健康をサポートしてくれそうなドッグフードが見つかっても、最終的には愛犬が必要な量をしっかり食べてくれない、いわゆる「食いつき」が悪く残してしまうようであれば継続して与えることはできません。
その子によって食べ物の好みはさまざまですので、愛犬と地道に試していきましょう。いきなり大きい容量で買うのではなく、まずはお試し商品や一番小さいサイズを購入して少量から試してみるのがおすすめです。
ドッグフードには、与える際の目的ごとに大きく4つの分類があります。
「総合栄養食」は、犬にとって主要な食事として与えることを目的として、水と一緒に食べさせれば健康が維持できるように栄養バランスが考えられています。
他には、治療中の疾患等を栄養面でサポートするために獣医師の指導のもとで与えられる「療法食」、犬とのコミュニケーション手段とすることを目的にした「間食」、そしてどれにも当てはまらない「その他の目的食」があります。
ドッグフードはメインの食事として与えるものなので、基本的には「総合栄養食」と記載のあるものを選ぶようにしましょう。
使用目的ごとの分類
添加物には、栄養価を担保する・療法食としての効果を発揮するなどを目的とした「ビタミン」や「ミネラル」などもあれば、保存性・安全性を担保するための「保存料」や「酸化防止剤」、そして犬の食いつきをよくするための「香料」や「調味料」なども含まれます。
基本的には、安全性試験を実施したうえで犬の健康を損なわないことを確認した添加物を使用するよう、原産国の法律によって定められています。しかし、例えばペットフード安全法の基準を満たしていない添加物でも、目的とする効果のために最小限の量に設定すれば使用できたり、原産国によって指定添加物の基準が異なったりというのが現状です。
ペットフード安全法により、フードに使用されている原材料は添加物を含むすべてを日本語で表記するよう定められています。
愛犬が毎日食べるドッグフードだからこそ、記載されている添加物の安全性について事前にしっかりと把握しておけると安心です。
ドッグフードの主な原料は、穀物と動物性たんぱく質(畜肉類・魚介類)です。最近は穀物を使用しない「グレインフリー」のドッグフードが増えてきましたが、動物性たんぱく質は鶏肉・豚肉・鹿肉・魚介などをはじめとし、ほとんどすべてのドッグフードに主原料として使用されています。
パッケージなどの原材料名は、使用量が多い順に記載されています。最初のほうに記載されている動物性たんぱく質の素材を確認して、愛犬にとってのアレルゲンではないかをチェックしておきましょう。
中には「肉類」などと記載されている場合もありますので、すべてを確認できない場合はメーカーに直接問い合わせるのがおすすめです。
また、いろいろな種類を試したうえで愛犬が好きな素材を把握しておくと、今後のドッグフード選びに役立ちます。
原材料名の記載欄を確認すると「チキンミール」などと記載されていることがありますが、これは「鶏肉」と記載されているものとは厳密には原材料が異なります。
例えば「チキンミール」の場合は、鶏肉自体も含まれていますが、鶏肉が食肉加工されたあとに残る部分(骨や皮など)も併せて乾燥させたうえで加工処理された粉末状のものです。ペットフード安全法で使用が禁止されている危険な原材料ではないものの、「鶏肉」と記載されている場合とは違うということを理解しておきましょう。
商品パッケージやサイトに記載の原産国名を確認しましょう。
ドッグフードの原産国名には、フードの最終加工がおこなわれた国が記載されています。
ドッグフードの製造においては、国によって安全基準や衛生管理の基準がさまざまです。きちんとした安全基準を設けている国で製造されているかを確認するのは必須でしょう。
グレインは穀物全般のことを指し、米や小麦などが代表的です。また、それらを原料とする米粉や小麦粉もグレインに分類されます。一方グルテンは、小麦やライ麦などの穀物に含まれる2種類のたんぱく質が絡み合ってできたたんぱく質のことを指します。
近年グレインフリー・グルテンフリーのドッグフードが増え、それぞれ穀物・グレインを含まないことが特徴です。広義の意味での穀物には豆類が含まれることから、グレインフリードッグフードの中身にはばらつきがあります。
ドッグフードに使用される穀物は、消化吸収しやすいように加熱加工が施されています。穀物の栄養素を取り入れること以外には、形状を整えて砕けにくくしたりとろみをつけたりする目的で使用されています。
食物アレルギーは、食べものに含まれるたんぱく質に身体が反応することで引き起こるため、グレイン・グルテンが含まれていないからOKという訳ではなく、愛犬の体質をよく見極める必要があります。その子によって、穀物の消化が得意でなくお腹が緩くなるケースや、特定の穀物にアレルギーを持っている場合もあるので、愛犬の体質をよく把握したうえで導入を考えましょう。
ドッグフードには、決められた方法で保存した場合に、栄養価や品質が保証できる期間として賞味期限が記載されています。年月日で記載される場合と、年月で記載される場合があります。
製法などによっても賞味期限の長さは異なるため、一概に長いほうがいいというわけではありませんが、与える量に応じて消費する期間が変わるため、賞味期限以内に食べきれるサイズを購入するようにしましょう。
良いものを追求していった結果、愛犬の食費が倍増しまったなんてことも。基本的にはドッグフードは単発で取り入れるものではなく、ある程度長期的に与えるものということを前提に、導入前に予算の範囲内かどうかも確認しておきましょう。
愛犬の主要な食事として毎日与えることを考えると、いつでも購入できるか?という点も重要なポイントです。
引っ越した場合も簡単に調達可能か?在庫状況や流通は安定しているか?という観点も含めて、オンラインで購入可能・安定生産されている商品を選ぶなど、工夫してみましょう。
大切な愛犬に毎日与えるものなので、安心して続けられるよう購入前後のサポートがしっかり受けられるかを確認しておきましょう。
丁寧なカスタマーサポートを設けていることは、品質への信頼にも繋がります。愛犬の健康に大きな影響を与える食生活のことですので、不安や疑問が出てきた場合に備えてサポート体制を事前に見極めておくと安心です。
チェックリストを確認してみて、いかがでしたか?
一覧で確認すると気にするべき点が整理された!という方もいれば、やっぱりピンと来なかった!という方、もとからチェックすべきことは分かっていて重要視するポイントも明確!という方もいらっしゃることでしょう。
好みや体質の観点は、結局のところ試してみないと何とも言えないというのが事実です。その意味で、ドッグフード選びの極意は「試せるフードは試してみる!」ことだと言えるでしょう。リストの項目を参考しながら、愛犬にぴったりのフード選びに挑戦してみてくださいね。