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2021.03.10

手づくりごはん|パートナーに優しいレシピ|vol.59

パートナーに優しいレシピ|草食動物の生命をいただくということ

私たちは地球上のさまざまな生命をいただいて生きています。中でも犬たちは、太古より草食動物から栄養をもらって生きてきました。

現代の犬にとって、草食動物をいただくことはどのような意味を持つのでしょうか?犬の体を作るために必要な栄養素について改めて考えてみました。

#パートナーに優しいレシピ

さのさえこ/ドッグライター

オオカミには2つのタイプが発生していた

お散歩休憩中の愛犬

犬の祖先はオオカミだと言われていますが、最近の研究では、今から3万〜4万年前辺りから現代の犬につながるオオカミと、今も野生で暮らすオオカミに分かれたのではないかという説があります。

研究では、この2つのタイプのオオカミたちがどんな食べ物を摂取していたかについても言及しています。

現代につながるオオカミは肉食動物

純粋なオオカミの祖先は、現代のオオカミと同様に草食動物を命の糧として生きていました。
木の実を食べるオオカミも存在したようですが、獲物がいない時のつなぎとして仕方なく口にしていたようです。
食べる物がなくても人間から分けてもらうことを考えなかった性格のオオカミは、その後も野生動物として進化を遂げることになりました。

穀物を食べるようになった原始のオオカミ

一方で、草食動物を糧としながらも食べ物に飢えた時に人間に助けを求めたのが、現代の犬につながるオオカミだと言われています。
犬は人間が必要としてオオカミを家畜化したのではなく、オオカミが人間を必要としたことが始まりという説です。

しかし、人間はその時代、農耕生活を始めていました。
穀物を主食とするようになり、犬たちにも同じものを与えていたと考えられています。
肉類をもらえることもありましたが、そのほとんどは人間が食べた後の動物の骨のような部位だったと考えられています。

当時のオオカミの祖先と犬の祖先の歯を比較すると、犬の祖先の方が歯の消耗が激しかったという結果が出ています。

おそらくオオカミの祖先は獲物の筋肉や内臓など噛み切りやすい部位を食べていたのでしょうが、犬の祖先は硬い骨の部分にわずかに残った肉を食べなくてはならない環境だったのではないでしょうか・・・?

犬にとって動物の栄養は必要不可欠なもの

海岸を散歩する犬

穀物を食べるようになった原始の犬たち。
それは遺伝子レベルでの変化をもたらしました。

では、穀物は犬の体にとって有益な食材にまで昇華したのでしょうか? 動物性の栄養がなくても、穀物だけで健康を維持することはできるのでしょうか?

原始の犬は寿命が短い傾向にあった

人間の余り物、つまり残飯を与えられるようになって、犬の体は穀物に含まれる炭水化物を消化する「アミラーゼ」を、オオカミより多く持つことに成功しました。

しかしそれは、オオカミよりは穀物を消化できるようになったに過ぎず、穀物が犬にとって必要不可欠になったとは言えなかったようです。

事実、原始の犬たちの寿命は現代よりもはるかに短かったのではないかと言われています。

足りない栄養素を昆虫などで補っていた

人間から与えられる食べ物だけでは体を維持することができなかった原始の犬たちは、自らも小動物や昆虫などを捕食して栄養を確保していたと言われています。

オオカミという肉食動物のルーツを持つ以上、穀物や野菜で完全な体を作り上げることは、犬にとってはまだ難しいことなのですね。

犬は動物性の栄養素が体をつくる基本となる

花畑にいる犬

植物性の栄養も必要ですが、犬には動物性の栄養が不可欠です。
その理由を見ていきたいと思います。

必須アミノ酸がすべて摂れる動物の体

アミノ酸は全部で22種類存在し、犬はそのうち12種類を自分の体の中でつくり出すことができます。
そのため、体内でつくることのできない10種類を食べ物から摂る必要があるのですが、植物性の食材ではトリプトファン、リジン、メチオニン、ロイチンなど一部のアミノ酸が不足してしまいます。

しかし動物性の食材からは、足りないアミノ酸をすべて補うことができます。

動物性のみをいただくなら体丸ごとが基本

ただし、動物性の食材だけでアミノ酸がまかなえるとしても、モモ肉や胸肉などの筋肉部分だけを与えていると、タンパク質の摂り過ぎになり腎臓に負担がかかりやすくなります。

また、肉食動物であっても、繊維質や消化酵素などの植物性の栄養は必要です。
そこで肉食動物は、草食動物の胃の内容物をいただくことで、その栄養素を補っているのだと考えられています。

「草食動物」の恵みだけで栄養を与えるとどうなるか?

犬の手作りごはん

野菜・穀物一切なし、野生のオオカミと同じような食生活を再現した場合、栄養バランスを整えるにはどのような組み合わせが良いのかを考えてみました。

筋肉・内臓・トライプを組み合わせる

鶏、豚、牛、羊、馬、鹿、猪など、犬が食べられる肉はたくさんあります。
動物種によって栄養価が異なるため、その時の体調によってローテーションすることで、栄養バランスを整えていくこともできます。

さらに栄養価の高いレバーやラング(肺)をプラスすれば、栄養強化ができます。 それらに草食動物の胃の内容物であるトライプを加えることで、酵素や乳酸菌などの植物性の栄養を効率良く摂取することができるでしょう。
試しにササミと水で戻した鹿のトライプをうちのコに見せたところ、喜んで完食しました。

草食動物だけで食生活を送る問題点

肉食動物と同じように草食動物だけをいただく食生活は、人間と家族同様に暮らしている現代の犬たちにとっては問題が起こることも考えられます。
肉食のみになった場合の問題点を挙げてみます。

栄養過多になる

原始の犬やオオカミたちは、空腹でもなかなか食べ物を得られずに生活することが多くありました。 しかし私たちが一緒に暮らす犬たちは十分な食べ物を与えられています。

肉に含まれるタンパク質や脂肪は犬にとって必要不可欠ではありますが、肉だけを食べることによりタンパク質や脂肪を含めた多くの栄養素を過剰に摂り過ぎてしまう可能性があります。

カルシウムとリンのバランスが崩れる

カルシウムとリンのバランスは、1:0.5〜2に保つことが良いとされています。しかし肉類だけを摂取することで、そのバランスがうまく調整できなくなることも考えられます。

これらの問題点を考えると、良質なドッグフードに含まれる原材料は、犬の体を健康に保つために、ひよこ豆などの豆類や野菜類を加えて最適なバランスに作られているのだと理解できますね。

現代の犬族は雑食動物として生きている

見上げる愛犬

人間と暮らす道を選んでから、犬はオオカミとしては摂ることがなかった食べ物を懸命に自分の体のために使う努力をしてきました。人間のそばにいる限り、犬の体の進化はこの先もずっと続いていくのかもしれません。

  • 更新日:

    2021.03.10

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ライター・専門家プロフィール
  • さの さえこ
  • 犬の東洋医学生活管理士2級、ドッグライター
  • 子供の頃はアレルギーで飼えなかった犬を、大人になって初めて迎えることができました。しかし里子で迎えた初めての愛犬は、外耳炎、歯肉炎、膿皮症、膝蓋骨脱臼を持っていました。 この子をきれいな体にするにはどうしたら良いか。そんな気持ちから得た経験を、「犬の食」を通してお伝えできればと思っています。