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犬を迎える

2021.02.07

犬の一生を取り巻くペット業界の構図。子犬が生まれてから辿る道を6ステージごとに解説

今や1.5兆円を超える市場規模となったペット業界。巨大な業界なだけに、子犬が生まれてその一生を終えるまでのあいだには、さまざまな立場のブリーダーや多様な業態が存在しています。犬と暮らしたいと思った時に、どこから犬を迎えようと考えていますか?
今回は、犬の流通に焦点を当て、多岐に広がるペット業界全体の構図を解説します。

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー

ペット業界の構図|その1. 犬の繁殖

ペット業界

ペット業界の構図として、最も川上に位置する業態は犬の繁殖です。子犬は業者ではなく一般家庭に生まれるケースや、さまざまな理由で保護団体などに保護されるケースもありますが、通常はブリーダーとも呼ばれる繁殖業者の元で生まれ、流通していくことが多いです。

ブリーダー

ブリード(Breed)とは動物が子を産むこと、繁殖・飼育すること、そして品種・血統の意味を持つ英語です。そしてブリーダー(Breeder)は、動物や植物の交配・繁殖を職業とする人を指しています。

イギリスをはじめとする動物愛護先進国のヨーロッパの国々では、このブリーダーは社会的地位も高い専門職として確立しているのです。また、資格や許認可、違反時の罰則などが法的にも整備されています。

一方、日本では届出制でハードルが低いため、優良なブリーダーだけではなくパピーミル(子犬の繁殖工場)などと呼ばれる経営者もブリーダーと呼ばれているのが現状です。そのため、残念ながらブリーダーの質は玉石混交という状態です。

ペット業界の構図|その2. 犬の流通

ペット業界

命ある犬に流通という言葉は使いたくありませんが、生まれた子犬の飼い主を決め、手許に届く道筋が流通になります。

動物愛護先進国では、生体販売をするペットショップそのものが存在せず、さまざまな審査が行なわれたのちに飼い主が決まり、ブリーダーから直接犬が渡されます。

そのような国では流通という言葉は馴染みませんが、日本ではまだまだ物販のようにショップやネットに展示され、金銭を支払えば誰でも購入できるという流れが一般的です。このため、生き物であるにもかかわらず流通という言葉を使わざるを得ないのです。(※図:日本における犬の流通経路)

卸業者を挟む場合も

物品流通と同様に、日本では繁殖業者と小売業者との間に卸業者(ブローカー)が介在する例も少なくありません。なかにはブリーダーと小売業が一体となっていたり、直接ブリーダーから仕入れるペットショップもありますが、それらもいわゆる物品流通における産地直送にあたります。

中間業者が入ることによって、輸送や保管の時間は確実に増大します。その間、適切にケアが行なわれていればまだしも、物流的ですからそれは考えにくく、子犬にはストレスだけでなく、身体作りや犬の社会化など、健康面やしつけの点でのリスクも増える結果となります。

ペットオークション

犬のビジネスの巨大化にともない、これもまた物品流通と同様に大規模なオークションが行なわれています。ペットショップや卸業者は、このオークションで子犬を仕入れているのです。日本で最初のオークションは1989年に名古屋で開催。90年代に入るとオークションは盛んになり、このオークションの台頭によって日本のペットショップの大型店やチェーン展開が始まり、流通も大きく様変わりしました。

ペットショップ

現在のペットショップの多くは、都市部ではショッピングセンターに入っているか、大型の専門店(チェーン店)となっています。特にショッピングセンターにペットショップが多いことには理由があり、陳列販売されているかわいい子犬がショッピングセンター側としても集客につながる、ということが言われています。しかし、最近では大型の専門店でも生体販売せずに、動物愛護先進国のようにグッズなどだけを扱う店も見られるようになりました。

ネット販売

インターネットが社会インフラとなるに従い、ペット業界に増えてきたのがネット販売です。ペット用品はネット販売の方がスタンダードとなっていますが、子犬も当初は法規制の範疇外だったこともあって、ブリーダーからの直接販売などのネット販売が拡大しました。しかし、法規制がなかったこともありトラブルが続出。そのため2005年の動物愛護法改正により、動物取扱業者の対象となり、さらに今では販売時の対面説明が義務化されたことから、ネット販売は一時に比べると少なくなっています。

移動販売

移動販売とは、各種のイベント時などに屋内外の会場で販売される形態のことです。短期間の展示・販売のために車で輸送し、低価格で販売、終了後はまた次の場所へ運ぶという、子犬にとっては高ストレスの販売形態です。そのため、日本動物愛護協会や日本動物福祉協会などがストップキャンペーンを展開するなど問題化し、法改正のときも議題となったため、この販売形態は減少しています。

ペット業界の構図|その3. 犬のマッチングサービス

ペット業界

犬のマッチングサービスとは、基本的に人と犬の適正な組み合わせをサポートするサービスで、ほとんどがネット上で展開されています。最大のテーマは、犬と飼い主のマッチングですが、ブリーダーやペットショップと子犬購入希望者、保護犬と里親の2種類に大別できます。

なお、前者には単独のブリーダーやショップによる子犬通販サイトは含まれていません。子犬の購入希望者向けのマッチングサイトは、直接個別の犬とのマッチングというよりも、全国のブリーダーを犬種別・地域別にネットワークして紹介し、そこからブリーダーを選んでいくという形式です。

また、保護犬と里親のマッチングサイトは、地域が限定されたサイトだけでなく、全国的な広がりを持つサイトもあります。ユニークなところでは、短期預かりのペットシッターとのマッチングサービスもあります。

保護犬と里親のマッチングサービス:1/ぽちとたま

ペットの保護活動者や、諸事情によって飼えなくなってしまった飼い主などと里親になりたい人とのマッチングサイト。運営は一般社団法人 和。

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保護犬と里親のマッチングサービス:2/OMUSUBI

OMUSUBIは審査制の保護犬・保護猫マッチングサイト。子犬からシニア犬まで、小型犬から大型犬まで、多様な保護犬が掲載されている。サイト内では相性診断することも可能。

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保護犬と里親のマッチングサービス:3/Veterinary Adoption

動物病院に保護されている保護犬猫の譲渡活動をサポートする里親マッチングサイト。運営は共立製薬。

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保護犬と里親のマッチングサービス:4/hugU

hugU(ハグー)はペットのネットメディア「みんなのペットライフ」を運営するmpoみんなのペットオンラインが運営する里親マッチングサイト。

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子犬とのマッチングサービス:1/ブリーダーワン

厳正な基準をクリアして登録したブリーダーによる、獣医師監修の健康な子犬との出会いを支援するマッチングサイト。

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子犬とのマッチングサービス:2/パピーズ

PUPPIES(パピーズ)は、改正動物愛護管理法対応・環境省ガイドライン遵守の全国優良ブリーダーやペットショップに預けられた子犬とのマッチングサイト。

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子犬とのマッチングサービス:3/子犬ブリーダーサーチ

その名の通り全国のブリーダー情報が満載されたサイト。犬種別、地域別に豊富にもれなく掲載され、求めている子犬が分かりやすく探せます。

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ペット業界の構図|その4. 飼い主(購入者)

ペット業界

飼い主となる私たちの存在も、ペット業界の構図に含まれています。飼い主の意識や行動は、ペット業界全体に大きく影響を与え、日本のペット業界の構図を形成した要因の一つと言えるでしょう。

日本で、本格的にペットとして犬を飼うようになったのは戦後になってから。番犬、猟犬という犬に対する認識が、時代とともに愛玩犬/ペットとなり、近年では家族/コンパニオンドッグに変化しました。

それに合わせてペット業界も変わりましたが、飼い主も含めて古い認識も残っており、それらが混在しているのが現状です。

理想は飼い主のもとで生涯を終えること

犬は精神性がとても高い動物です。たとえ酷い飼い方をされていても、飼い主のことを純粋に信じ、大好きになることができるのも、決して人より劣った動物だから認識できないのではなく、この精神性の高さ故だと言えるのではないでしょうか。

そのことから、理想は、その大好きな飼い主のもとで生涯を終えることです。この真理を飼い主は本当に理解し、決してその精神性の高さに甘えてはならないのです。

しかし、ペット業界、そして飼い主にも、それを理解していない人たちが存在し、問題が点在しています。せめて飼い主だけでもこの理想を心に刻み、よりよいドックライフを過ごさせてあげてください。そのことが、いずれはペット業界の問題解決にもつながるのではないでしょうか。

ペット業界の構図|その5. 保護団体

ペット業界

犬の保護に関わる日本の組織・団体は、保健所や地方自治体が運営する動物愛護(管理)センターを除いても、全国に300以上あります。これほど保護団体が多いということは、殺処分が想定される犬が多い証拠なのです(2016年の犬猫殺処分数は約56,000頭)。ちなみにドイツの殺処分数はゼロです。

動物愛護(管理)センター 

動物愛護の啓発活動や、飼い主不在の犬猫の処分を目的に自治体が設けている施設です。保健所などに一定期間保護された犬は、最終的にここに集められます。どうしても殺処分のイメージが強い施設ですが、ここでも各種保護団体などとも協力連携して、最後の砦として積極的に新たな里親探しを行なっています。犬がここに行く前に里親を見つけること、そもそもそのような境遇の犬を出さないことが何よりも重要です。

日本動物愛護協会

日本動物愛護協会(JSPCA)は昭和24年に設立された団体で、動物愛護としては草分けの団体です。現在は公益財団法人となっています。動物の命を守る、命の大切さを知ってもらう、社会への提言を3つの柱として様々な活動を展開しています。

全国に広がる各種民間保護団体

保護犬の里親探しを支えているのは、全国に広がる民間の保護団体です。NPO(特定非営利活動)法人から、寄付金控除が適応される認定NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、ボランティアの任意団体まで、300以上の団体が、全国47都道府県にあり、保護犬の里親を探しています。

里親探しの新しいかたち「保護犬カフェ」

最近では“保護犬カフェ”という新しい里親探しの形態が注目を集め、都市部を中心に誕生しています。保護犬カフェには、ドッグカフェのような形態のものや、ペットサロンなどに併設されているタイプがあります。売上げの一部が犬の保護活動費としてあてられるパターンが多く、利用者も自然と保護活動に貢献する実感を持てます。また、そこにいる犬の里親になれたり、譲渡会などが開催されるケースもあります。

ペット業界の構図|その6. 犬の死にかかわる場所

ペット業界

命あるものは必ず終わりを迎えます。飼い犬の死はペットロスという言葉があるほど、飼い主に深刻な精神的ダメージを与える大きな出来事です。そしてペット業界にも犬の死に関わる分野があります。

ペット葬儀場

愛犬が死を迎えたら、飼い主は愛犬の亡骸を処理しなければなりません。飼い主に見守られて逝くという最良のかたちで死を迎えたとしても、愛犬を荼毘に付すことが飼い主としての最後の責任です。昔は庭などに土葬される場合や、今でもゴミとして自治体に処理を依頼することもできますが、火葬が一般的でしょう。

火葬には合同火葬、個別一任火葬、個別立会火葬、訪問火葬などがあります。犬との関係性が変化した現在では、個別で飼い主が立会いながら行なう個別立会火葬が人気を集めています。待合室がある葬祭場で亡骸に花を供えて最後のお別れをし、骨を拾って骨壺に入れるといった、人の場合と変わらない葬儀ができるぺット葬祭場が増えてきています。

動物愛護(管理)センターでの殺処分

殺処分は、一部保健所でも行なわれていますが、ほとんどは各自治体にある動物愛護(管理)センターで行なわれています。その名称から想像できないことが極めて残念で心が傷みます。処分のため二酸化炭素を使うのが通例ですが、最近では少しでも苦痛がないように麻酔ガスの使用も増えています。職員の方の心労も含めて考えると、本来は使わないで済むことがベストだと思います。

ペット業界はこれからも変化していくことを願って

ペット業界

巨大市場となった日本のペット業界の構図を、繁殖・流通・小売を中心に解説してきましたが、今回の記事ではあまり触れていないサービス業種の多様化や医療など、まだまだペット業界の激変が続いています。それはそのまま日本における犬の存在や位置づけの激変を現しており、同時に闇と言える問題点も内含したままの変化となっているのです。単なる愛玩動物の域を脱した犬に対する認識を、飼い主として、愛犬家として持つようにしたいものです。それがペット業界の構図をよりよいものにしていくことにもつながるのではないでしょうか。

参考文献
  • 更新日:

    2021.02.07

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ライター・専門家プロフィール
  • 西村 百合子
  • ホリスティックケアカウンセラー、愛玩動物救命士
  • ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。 現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。