包皮炎はオス犬の生殖器の病気です。包皮は陰茎(ペニス)を包む皮の部分で、包皮の内側が炎症を起こします。
包皮炎になると、包皮の先からベトベトした黄色や黄緑色の膿が出ます。犬は痒みや痛みを伴うので、気にして舐めることがあります。
包皮から出血を伴う場合は、舐めすぎて傷つけてしまっていたり、包皮炎の原因の細菌が尿道を通じて膀胱に上がり、二次的に尿道炎や膀胱炎を引き起こしている可能性があります。
包皮炎は健康な犬の皮膚にも存在する「常在菌」によって引き起こされる病気であり、他の犬や人にうつる心配はありません。
常在菌は、通常であれば犬に悪影響を与えることはありませんが、何らかの原因で異常繁殖すると、包皮炎を引き起こしてしまいます。ではなぜ、細菌は異常繁殖してしまうのでしょうか。
短足の犬種や肥満の犬は、包皮の先が地面に触れやすく汚れやすいため、細菌が繁殖しやすいと考えられています。また、長毛種など包皮の先の毛が長い犬は、毛に尿が付着しやすいので不衛生になりがちです。
過剰なマウンティングの癖がある子は、陰部が傷付き、そこから細菌が繁殖することがあります。
病気やストレス、栄養不足、高齢などが原因で免疫力が低下していると、細菌が異常繁殖して炎症を引き起こします。
犬種や年齢に関係なく発症しますが、足が短く包皮が不衛生になりがちなミニチュア・ダックスフントやウェルシュ・コーギー・ペンブローク、免疫力が低下した高齢犬などは発症するリスクが高いと考えられます。
犬の包皮炎は軽度であれば、治療をせずに経過観察することもありますが、膿の量が多かったり、血液が混じっていたり、犬がしきりに舐めたり噛んだりしている場合には治療が必要です。
治療は包皮内の洗浄や消毒、抗生剤の投与などが行われます。分泌物を減らす目的で、去勢手術を行うこともあります。また、細菌感染が包皮にとどまらずに尿道や膀胱にも炎症が起こる場合には、膀胱炎や尿道炎の治療のために抗生剤などを使った内科治療をします。
病院によって料金は異なりますが、一般的には診察や処置、内服薬などに2,000~10,000円くらいかかります。
犬の包皮炎を予防するためには以下の3つの観点が考えられます。
排尿後やお散歩後は、包皮やその周囲を洗って清潔にしましょう。包皮内は通常あまり意識して洗う場所ではありませんが、包皮を後方に少しずらして陰茎を出し、ぬるま湯のシャワーをかけてやさしく洗いましょう。
また、包皮の先の毛が長いと、尿を上手く切ることができずに不衛生になりやすく、細菌が繁殖しやすくなります。自宅でハサミやバリカンを使って短くするか、トリミングサロンなどにお願いして定期的にカットしましょう。
マウンティングは癖になる前にしつけることが大切です。
飼い主さんにマウンティングをし始めたら、すぐに犬の身体を引き離して無視をしましょう。外出先で他の犬や人にマウンティングしそうになったら、リードを短く引いて「オスワリ」「マテ」と指示を出します。
ぬいぐるみを相手にするときは、おやつを入れたおもちゃなど犬が興味を持ちそなものを与え、遊んでいるうちにぬいぐるみを取り上げてしまいましょう。
マウンティングが過剰であったり、包皮からの分泌物が多量な場合、去勢手術を受けるのも一つの方法です。
去勢手術をすると男性ホルモンの分泌が抑えられるため、マーキングやマウンティング、オス犬特有の攻撃性のある行動などの軽減が期待できます。また、前立腺肥大症や肛門周囲腺腫、精巣腫瘍などの生殖器に関係する病気を予防できるのも、大きなメリットと言えます。
繁殖を望まないのであれば、去勢手術を検討しましょう。
包皮炎は一度治っても再発することがあります。再発を防ぐためにも包皮やその周囲はいつも清潔にし、過剰なマウンティング行動はきちんとしつけましょう。
犬の包皮炎は珍しいものではなく、軽度であれば自然治癒することも多い病気です。しかし、包皮炎から二次的に尿道炎、膀胱炎などを引き起こし、重い症状が現れることもあります。日頃から包皮の周りを清潔にし、包皮からの分泌物が増えたり犬の行動に異常が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。