骨肉腫とは“骨の悪性腫瘍”のことで、骨の組織である骨膜や骨髄、皮質骨などがガン化する疾病のことです。 人にも骨肉腫はありますが、犬では特に超大型犬や大型犬に多く発症します。
骨格に発生する悪性腫瘍の85%が骨肉腫だといわれており、転移する速度も早く発見された時にはすでに転移していることが多く、手術をしても9割が余命1年未満と言われるほど死に至る確率の高い病気です。
犬の骨肉腫は、まれに顎や肋骨・頭蓋骨などにも発症しますが、大半は四肢に発症し、特に前肢に多く後肢より2倍の発生率があります。そのため初期症状の多くは跛行(はこう)という足をひきずる仕草から始まります。
また、発症した骨の部分が腫れて硬くなり、触ると嫌がることで気付きます。腫れた部分の痛みから運動を嫌がり、食欲不振や元気消失などの症状もみられるようになります
犬の骨肉腫はとても転移が早く、発見時には90%が肺に転移していると言われています。 肺に転移しても肺がんというわけではなく、あくまでも骨肉腫の肺転移の様相を示しています。
犬が骨肉腫になる原因、そしてかかりやすい犬種や年齢を見ていきます。
実は、犬の骨肉腫の詳しい原因は未だ解明されていません。ただし、発生率が体重によって違っていることから、骨格の大きさに関係があることは解っています。また、骨折による影響もあると考えられています。
骨肉腫にかかりやすい犬種は、セント・バーナード、グレート・デン、アイリッシュ・セッター、ドーベルマン、ロットワイラー、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリバーなどの大型犬です。 小型犬より超大型・大型犬の発症率が高く、10kg以上の犬の発症率は10kg以下の犬の150倍に及ぶと言われています。
また、メスよりもオスのほうが多く発症し、発症する年齢は1~2歳と7~8歳の2期にピークがあります。 大型犬の場合は、ほとんどが四肢の骨に発症しますが、小型犬の半数程度が体軸の骨などに発症します。
悪性の骨肉腫は非常に強い痛みを伴います。その痛みは頑強な大型犬であっても耐えられないほどであることから、骨肉腫の治療は痛みを取ってやることが第一となります。
悪性の骨肉腫の痛みは、一般の鎮痛薬で止めることはできません。骨肉腫による痛みを取り除くには、骨肉腫のある脚を切断するしか方法がありません。
脚を切断することで痛みから解放され、予後の生活のクオリティを維持することができます。腫瘍が前脚にある場合は肩甲骨から、後脚の場合は股関節から断脚します。
悪性の骨肉腫に罹った犬のほとんどは初期の段階で肺などへの転移があり、断脚をしただけでは術後3~4ヵ月程度しか生きることができません。そのため生存期間を延ばすためには抗がん剤を使った化学療法が必要となります。
抗がん剤には副作用があり、体力も消耗するので、日々体調の状態を確認しておく必要があります。 大変酷なことに、抗がん剤治療を行った場合でも生存期間は約1年~2年と言われており、状態によってはいつまで抗がん剤治療を続けるかを獣医師と相談することも必要になってきます。
犬の骨肉腫にかかる費用は、個々の動物病院やその治療内容によって違ってきますが、断脚手術費用はおよそ¥180,000が平均的な金額です。その他の治療費には検査代(レントゲン・血液検査・CT.MRIなど)や診察料、抗ガン剤治療をする場合にはその費用も加わり、かなりの高額治療費がかかります。
どこまでの治療をするかは経済的なことも含めて獣医師さんと十分に相談して決めることが大切です。
犬の骨肉腫に予防法はあるのでしょうか?
残念ながら骨肉腫の原因が不明なため明確な予防法はありません。早期発見・早期治療が生存期間を延ばしてやる唯一の方法です。少しでも早く愛犬の異常に気付いてやることが大切です。
骨肉腫は犬の疾病の中でも大変厳しい現実を知らされる重病のひとつです。病名が分かった時点で余命を宣告されることも多くあり、飼い主には精神的にも経済的にも決断と覚悟が求められる辛い病気となります。それでも愛する家族なら最善を尽してやりたいと思うのが飼い主さんの偽らない気持ちですよね。
どんなに苦渋の選択であっても、一日でも長く、一日でも穏やかに過ごせますように。愛犬に最期まで寄り添ってあげられるよう、心構えとして基本的な犬の病気のことを知っておいてください。