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2021.02.24

小説|雨野さん家のたねとまめ|vol.9

雨野さん家のたねとまめ|まめ、お風呂に入るの巻

吾輩はたねである。向こうで大きな洗面器に入ってる黒いのはまめ。今にも洗われそうな奴である。

#たねとまめ

篠目 春行/アマチュア小説家、シナリオライター

この記事は、猫の「たね」と犬の「まめ」の暮らしを描いた、アマチュア小説家による創作物語の連載第9話です。

どろんこまめ

雪遊びを思う存分堪能したまめは、最終的に泥だらけになって家に帰ってきた。満足そうに尻尾を振るまめだったが、どろんこのまま家の中を走り回りそうだったので、すぐさまお母さんはまめを捕獲したのであった

お母さんが連れていったのはお風呂場。棚からいつもは使わない大きめの洗面器と犬猫用シャンプーを取り出して、お母さんは腕まくりをした。

たねはあの洗面器をよーく知っている。昔はたねを洗う時にだけ使っていた洗面器だ。あそこに入れられて、シャワーのぬるいお湯をかけられて、わしゃわしゃごしごしシャンプーされたことをしっかり覚えている。あれは地獄のような時間だった…。

今まさにシャンプーされそうになっているまめを災難とたねは思ったけど、でもあんなどろんこで家の中を走り回ったら大惨事なのはたねにもわかるので、たねは心の中でお母さんのことを応援した。

もしかしたらまめもたねみたいに暴れるかもしれない。お母さん頑張れー。たねは他人事だった。

初めてのお風呂

「さーて、まめちゃん体綺麗にしましょうね」

「ふん?」

洗面器の中で首を傾げるまめに声を掛けながら、お母さんはシャワーの温度調節をし始めた。まめは空から水飛沫が飛んでくると思わず上を見上げていた。

シャワーを見上げるまめの顔にお湯が掛からないように気を付けながら、お母さんはまめの体をお湯で流し始める。お湯なんて掛けられたら絶対に暴れ出すと思ったのにまめはお湯を掛けても大人しく、それどころかちょっと気持ち良さそうだ。

「あらあら、まめちゃんはお湯平気なの? いい子ね。たねちゃんはあーんなに暴れん坊だったのに」

まめはお湯平気

お母さんは笑いながらまめの体の泥を落としていく。

仕方ないじゃん…たねは濡れるの嫌いなんだもん。

まめの体から泥がなくなるとお母さんは手にシャンプーを取って、手のひらを擦り合わせて細かい泡を作ってからまめの体を洗い始めた。

まめの体はみるみるうちにあわあわになっていった。

「まめちゃんシャンプーの匂いも平気?」

「くぅ」

まるで返事をするみたいにまめは小さく鳴いた。顔は全然嫌そうじゃなくて、むしろやっぱり気持ち良さそう。

粗方洗い終わったお母さんは、今度は丁寧に泡を洗い流す。泡がなくなってもシャンプーが残ってないかしっかり確認してから、びしょびしょのまめをタオルを持ったお父さんに渡して、そうしてようやくまめのお風呂が終わった。

絶望の始まり

「さてさて、じゃあ次はたねちゃんかな」

……え?

咄嗟のことで逃げ出せず、お母さんに簡単に捕まえられたたねは、呑気にまめのお風呂を眺めていた数分前のたねを恨むのであった。

  • 更新日:

    2021.02.24

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ライター・専門家プロフィール
  • 篠目 春行
  • アマチュア小説家、シナリオライター
  • 柔らかな文体での創作物語を中心に活動しています。 飼い主だけでなく他の動物と交流する犬の可愛さを、私の文章で色んな人にお伝えできたら嬉しいです。