この記事は、猫の「たね」と犬の「まめ」の暮らしを描いた、アマチュア小説家による創作物語の連載第7話です。
今日は朝早くから雨野さん家の人たちはみーんな出掛けている。つまりたねとまめの二人、いや二匹きりなのである。
誰もいなくて家の中がしんとしているせいか、朝たねより少し遅く起きたまめは、たねに駆け寄る自分の足音にびっくりして飛び跳ねていた。
それから少しの間その場で縮こまった後、やっと落ち着いたのかまめはたねの後ろを付いて回るようになった。
いや、むしろ他に誰もいなくて落ち着かないのかな? たねは寝てる時間が長いからあんまり気にならなかったけど、思えば朝からたねとまめの他に誰もいないのはまめが来てから初めてな気がする。
大抵お母さんか妹ちゃんは家にいるもんなあ。もしかしたらまめはまだちっちゃいし、寂しいのかもしれない。
いつもだったらご飯を食べ終わった後はお昼寝をするたねだけど、たまにはお兄ちゃんしてやるか。
「にゃあ」
たねが声を掛けると、まめはきらきらした瞳をもっと輝かせた。そしてたねの後ろにぴったりくっついてくる。
今日は鬼ごっこの気分じゃないらしい。さっき自分の足音にびっくりしたのが余程堪えてるのかも。だったら今日はお家の中をお散歩でもしようかな。
と言っても、お家の二階と台所はたねたちが入れないように壁があるから入れない。ドアを開けられないからお風呂場にも入らないし…。
となると結局遊び場はリビングになる。
歩き慣れたリビングをまめを連れて歩き回る。テーブルに上がるのはだめって言われてるけど今日は誰もいないからやりたい放題。たねは椅子に飛び乗った。
はずだった。
まん丸になった体は前みたいに高く飛べなくなっていて、椅子に足が引っ掛かる前にたねの体は床に落っこちた。
まめは首を傾げながらまん丸の目でこっちを見ている。
どうやらたねが椅子に飛び乗れなかったことは気付いていないらしい。
まあ…うん。テーブルには上がっちゃだめって言われてるし、まめもまだちっちゃいから椅子にも乗れないだろうし、やめやめ。みんながいない時に怪我なんてしたら大変だしね。
「にゃ」
あっちに行こう。たねはまめに向かってひと鳴きした。わかってるのかわかってないのか、まめは首を傾げながら後ろをついてくる。
たねたちが向かった先はソファー。今日はここを寝床とする。
たねがソファーに寝転がると、まめも隣にぴったりくっついて寝転がった。やっぱりちょっと寂しいのかもしれないな。たねが寝るのより先にまめは寝息を立て始めた。
遊びたがりで寂しがり、前よりもちょっとまめのことを知ったたねなのであった。
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