magazine

犬 猫 物語
連載 / ブログ
鉛筆アイコン

2021.02.02

小説|雨野さん家のたねとまめ|vol.4

雨野さん家のたねとまめ|ふわふわの細いやつ

吾輩はたねである。隣で座っている黒いのはまめ、普段とは打って変わって今日は珍しく大人しくしてる奴である。

#たねとまめ

篠目 春行/アマチュア小説家、シナリオライター

この記事は、猫の「たね」と犬の「まめ」の暮らしを描いた、アマチュア小説家による創作物語の連載第4話です。

お兄ちゃんの日

その理由は玄関から聞こえてくる足音、ちょっとすり足でくたびれてるのがわかる。これは、お兄ちゃんの足音だ。

雨野さん家のお兄ちゃんは、仕事からくたくたで帰って来ると家に着いた途端たねとまめの間に座って心ゆくまで撫で回し始める。

普段だったら好き勝手撫でさせることなんてしないけど、お兄ちゃんの撫で方はたねたちの気持ちいいポイントをよくわかっていて、それはそれは格別なのだ。

こうやって少し無視をしようと、自分だけじゃだめだと思ったらタオルを引きずってきたり、おもちゃを持ってきたりする。

だから、今日のたねとまめはお兄ちゃんに撫でられるためリビングで待っているのである。

お帰りお兄ちゃん

「ただいま、二匹とも」

「にゃあ」

「わん!」

「たね〜お前は今日も可愛いなあ」

「まめも今日も可愛いね〜よしよし」

たねはお兄ちゃんの両手に身を任せて喉を鳴らす。まめも、気持ちよさそうにお兄ちゃんの手のひらに体を擦り寄せる。

ひとしきりたねたち撫で回すと、お兄ちゃんは、あ、と言って手を止めた。

マフラー?

「そういえば、ペット用のマフラーってのが売ってたから買ってみたんだよね」

マフラー? なにそれ?

そう言って、ごそごそと漁った鞄の中から顔を出したのは、水色と黄緑のちっちゃいふわふわした細長いやつ。

お兄ちゃんはそれを持って立ち上がり、テーブルの上にあるペン立てからなにかを持って、ぱちんって音を二回鳴らしてから戻って来る。

そして、近場にいたまめの首にふわふわした細長いやつをくるんと巻いて、今度はたねの方を見た。

それ首につけるの? やだ!

「にゃあ!」

たねはやだって大きな声で言って、お兄ちゃんの側を離れた。

テーブルの下に隠れて、お兄ちゃんが追ってこないことを確認する。たねの今までの経験上、お兄ちゃんはたねが嫌がることは無理強いしない。だからお兄ちゃんは好きなのだ。

まめはお気に入り

「あーやっぱりたねは嫌かー、首輪も嫌いだもんなあたね」

「わふ」

対してまめは首に巻かれたふわふわに興味津々の様子。ふわふわに鼻先を突っ込んで匂いを嗅いでいる。数分間わふわふした後、お兄ちゃんに撫でられたまめは満足そうに走り去った。

かと思えば何故かたねの方に来た。

見て見てーと言わんばかりに水色のふわふわをたねの鼻先に近付ける。ってちょっと、そんなことしなくても見えるってば! むしろ近過ぎて見えないってば!

数分間、たねに無理矢理わふわふしたまめは満足したのかまた走り出した。

多分、皆に自慢しに行ったんだろうなあ。

お兄ちゃんとは違ってどたばたした足音を聞きつつ、おおあくびをするたねなのであった。

  • 更新日:

    2021.02.02

いいなと思ったらシェア
ライター・専門家プロフィール
  • 篠目 春行
  • アマチュア小説家、シナリオライター
  • 柔らかな文体での創作物語を中心に活動しています。 飼い主だけでなく他の動物と交流する犬の可愛さを、私の文章で色んな人にお伝えできたら嬉しいです。