プゥさんを保護した個人保護団体では譲渡時のトライアルはされていませんでした。保護主さん曰く、2週間くらいトライアルをしたくらいでは何もわからないし、何かがわかったとしてもそれが全てでもない、むしろそれからが始まりといってもいい、といわれます。
一方トライアルをされている保護団体さんも、トライアルは人の都合に合うかどうかを試す期間ではない、と断言されています。では保護犬のトライアルは何のためにあるのでしょう。
もともと保護犬のトライアルとは、かつて里親詐欺が多発していたことがあり、虐待、繁殖目的の転売(最近は避妊・去勢後に譲渡されることが多いため少なくなりました)嘘の申告などが発覚した場合に、団体側がただちに犬を返還してもらうために設けたものです。
ペットショップでもブリーダーでも、お試し付きで犬を売ってくれるところはありません。誰もが最期まで一緒にいることを前提で子犬を迎えます。それでも安易な気持ちでペットを買った(飼った)人による飼育放棄は後を絶ちません。
その結果、保護されることとなった犬たちを、トライアルがあるから試しに飼ってみよう、という軽い気持ちの人がいたとしたらそれこそ怖いことだと筆者は思っています。当たり前のことですが、保護犬のトライアルは「正式譲渡が前提」で行われるものです。
どんなにフレンドリーで賢い犬でも、突然見知らぬ家に連れてこられて、さあ今日からここがあなたの家で、この人達があなたの家族だよと言われても、すぐ理解して慣れるなんてことはありません。
人間だって同じ状況に置かれれば、その日から平気で暮らせる人なんていないでしょう。過去に辛い生活を強いられてきた子なら、尚のことです。怯えて吠えても絨毯の上で粗相をしてもなついてくれなくてもご飯を食べてくれなくても、みんな当たり前のことなのです。
トライアルの2週間というのは、保護犬にとっては少し緊張が取れて、何となくここにいてもいいのかな?と思えてくる程度の、人にとってはこの子といる暮らしが、何となく当たり前になってきたかな?と思えるくらいのウォーミング期間でしかありません。
トライアルの2週間で保護犬のすべてがわかるわけではありません。本当の生活はこれからです。
犬にも人と同じように心や感情があり、怒ることもあれば、嫌がることもあります。犬は人の指図通りに動く犬ロボットではありませんから。
人と犬は言葉を交わせないからこそ、長い月日をかけて信頼と愛情を積み重ねることで、強い絆が生まれるのではないでしょうか。
トライアルは里親さん側の突発的な事情や、虐待などのトラブルを防ぐためのセーフティネットであり、人がその保護犬を飼うべきかどうかを考えるためのお試し期間ではありません。
保護犬を迎えようと思っておられるのなら、家族全員の同意が得られているか、家族に犬アレルギーはいないか(心配な場合は病院などで調べることができます)、何らかの問題が起きたとしても家族全員で乗り越えられるか、を確認し合って「正式譲渡ありき」でトライアルに入って頂ければと思います。
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