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柴犬 小説
連載 / ブログ

2021.02.26

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと|vol.20

豆しば暮らし|戦いすんで夕焼け小焼け

「メロンを従わせよう。そんな気持ちがどこかにあって、それを感じ取ったメロンは、反発を繰り返していたのかもしれないね」
パパの膝の上で仰向けになっているメロンを見つめながら、二人は反省しました。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語の連載第20話です。

メロンが教えてくれたこと

「子供の頃の私もそうだったんだよ。でも今なら、親の気持ちもわかる」

「愛情とか信頼とか、当たり前のことのように思っていたけど…。一つ一つ築き上げていくのが、こんなに大変だったなんてね」

「当たり前だと思えるって、本当はすごく恵まれていたんだ。幸せなことだったんだ。そんなことにも、気がつかなかったんだね」

メロンがいなかったら、ずっとわからないまま、気がつかないままだったかもしれない。
全ては、メロンが教えてくれたこと。

二人は、改めてメロンに感謝しました。

「メロンがダメなことを理解してくれたかどうかは、まだわからない。でも、こうして仰向けになってるのは、大きな前進だよな!」

「そうだね、少なくとも戦いは終わったと思う」

みんなで歩こう

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「そうだ、外を歩かないか? 君のリュック、今日は僕に使わせて」

「オッケー!」

ママは、メロン専用となった小さなリュックを持って来ると、タオルとトイレシートを中に敷き、メロンを入れました。
もうメロンも、このリュックの中に入ると外に行けることがわかっているので、嬉しそうな顔をしています。

パパはリュックを肩にかけ、メロンがちょうどお腹のあたりに来るように、ひもの長さを調節しました。

風に吹かれて

二人の家の近くには、小さな川が流れていました。
その川に沿うようにして、遊歩道が続いています。

パパとママとリュックに入ったメロンと。
夕日を背に受けて、長い影が伸びていました。

「ワクチンが終わったら、ここをお散歩コースにしようと思ってるんだ」

ママが、秘密を打ち明けるかのように、小さな声で言います。

「どうして、そんな言い方?」

「だって、メロンにバレちゃうもん。初日の感動が薄れる」

「いや、今こうして歩いてるんだから、もうバレてますけど」

「…あ、そっか」

二人の笑い声を、風がそっと運んでゆきました。

「いい風だね」

「夕焼けもきれい」

「明日晴れるかな?」

「晴れだったら、メロンにフィギュアを壊される。曇りだったら、玄関マットをかじられボロボロにされるでしょう」

「何、その怖い天気予報」

風を受けて気持ちよさそうにしていたメロンが、ママの顔を見つめます。
メロンはそんなことしませんと言いたげに。

「そうだね、うちの子はお利口さんだもんね」

パパは、リュックに添えてメロンを支える手に、そっと力を込めました。
そして、ママの手を優しく繋ぎます。

「僕たち、これで本当の家族に、親子になれたよね。みんな愛し…」

決めゼリフを言おうとしたものの、ママはくしゃみ、メロンは大あくび。

「…切ないっす」

パパの小さな独り言は、風に吹かれて夕焼けの向こうに消えてゆきました。

  • 更新日:

    2021.02.26

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。