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柴犬 小説
連載 / ブログ

2021.02.19

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと|vol.18

豆しば暮らし|しつけという名の戦い・前編

「犬のしつけってさ、すごく楽しいものだと思ってたんだよ」
ケージの中で眠るメロンを見守りながら、ママがパパに話しかけます。

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語の連載第18話です。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

ファミリーの掟

時計の針は、もう0時を回っていました。

「よくできたねーってたくさん褒めて、犬も人間も嬉しくなって。そういうほのぼのしたのをイメージしてたのに」

ママの手には、メロンに噛まれた跡が残っています。

「現実は違う。ほのぼのするには、メロンは賢すぎるし気が強すぎる」

「そうかもしれないけど、じゃあ、この先どうする?」

「下の者は上の者に服従するのが…ファミリーの掟だよ…」

夜の闇に溶けてしまうようなママの静かな声に、パパは、背筋が凍りつきました。

「乱暴なことはダメだ! それは絶対に許さない!」

ママが何か恐ろしいことを考えているのではないかと思ったのです。

「いつも家族って言ってる君が、ファミリーだなんて! し、しかも、掟だなんて! め、目には目をとか、そ、そういうの、僕は反対だからね!」

真っ黒いサングラスをかけたママが、ニヤニヤ笑いながらメロンに近づき…。
や、やめろっ! 何をする気だ…!

「ドン・コルレオーネかっ?!」

ママのツッコミに、パパは妄想の世界から引き戻されました。

たとえどんな痛みに苛まれようとも

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「ちょうど、その手の映画を観たものだから…それに引っ張られた言い回しになって、誤解させたことは謝るよ」

ママの言葉に、パパはホッと胸を撫で下ろします。

「メロンの場合は、群れで暮らす動物の根本的な、本能的な関係を築かなきゃいけない気がするの」

「あっ、もしかして、下の者は上の者に服従するのがファミリーの掟って、そのこと?」

「うん。絶対的に信頼できるリーダーだと思うから、彼らは喜んで服従する。その証が、お腹を見せることなんじゃないかな?」

それから二人は、メロンを仰向けにしてダメを教えるようにしました。
ですがメロンは、仰向けにされそうになると、くるりと身を翻してかわします。
そして、思い切り手に噛み付いて、逃げていってしまいます。

痛いのは、噛まれた手だけでなく、心も。
その痛みに泣きながら、それでも二人は根気強く、愚直なまでに、同じことを繰り返しました。

ファミリーが、家族が、幸せに暮らしていくために、絶対に乗り越えなければならない戦いだったからです。

そして事件は起こった

その日、パパは、壁紙を剥がそうとしたメロンを捕まえ、仰向けにしてダメを教えようとしました。

いつものようにメロンは、パパの手に噛み付きます。
ところが今回は、メロンの歯が深く突き刺さり、尋常ではない痛みがパパを襲いました。

「痛いっ!」

反射的に手を振り払うと、その勢いでメロンはふっ飛んでしまい…。

「あっ、メロンごめん!」

ですがメロンは、一目散に隠れ家へ。
手の届かない奥の方までもぐり、引きこもってしまいました。
どうやらメロンは、心を閉ざしてしまったようです。

  • 更新日:

    2021.02.19

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。