この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語の連載第16話です。
今日のお留守番、メロンはどんな遊びをしていたのかな。
家の中の様子を見ながら想像することは、とても楽しいことでした。
スリッパがリビングの隅に転がっているのを見れば、ここまでくわえて来て、ブンブン振り回したなと思い。
ソファの肘掛けのところに置いてあるクッションが床に落ちているのを見れば、クッションをどかして肘掛けによじ登り、そこからジャンプしたんだなと思い。
メロンの元気な成長を感じて、ママは嬉しく思っていました。
ですが最近は、元気すぎるようで…。
「メロン、このスリッパ見て。かじってボロボロにしたの、メロンだよね?」
やってしまったことを叱っても効果がないことは分かっていましたが、ママは言わずにはいられません。
やんちゃというには、メロンのいたずらは激しいものでした。
壁紙をかじって剥がしたり、敷居をかじってボロボロにしたり…。
しかも、たった数日の間に、どんどんエスカレートしています。
「これは、いけないことなんだよ。ダメだよ、メロン」
早く遊ぼうと催促していたメロンですが、どうやら自分が叱られていることを理解したようでした。
嬉しそうだった表情が、どんどん不機嫌になってゆきます。
ママと遊びたいのに、こんなの楽しくない!
「みんなで仲良く暮らすためには…って、ちょっとメロン!」
ママが話している途中で、メロンはプイッと顔をそむけ、ケージの中に入ってしまいました。
「んもう、しょうがないなぁ…」
その夜。
帰宅したパパが、メロンとおもちゃの引っ張りっこをして遊んでいました。
短いロープのようなおもちゃをくわえたメロンは、パパの手からそれを奪い取ろうと、頭を振りながら引っ張ります。
「がうがう、がうがう」
野性味あふれる声もあげるようになりました。
「メロン、ますます力が強くなったね。でも、パパは負けないよー」
その時です。
「痛ててっ!」
パパの声がリビングに響きました。
「どうしたの?!」
キッチンからママが走ってきます。
「大丈夫! ちょっと興奮しただけだよな、メロン?」
メロンは、おもちゃを引っ張りながら、パパの手に渾身のパンチ。
小さな爪ながら、パパの手にかなりのダメージを与えました。
「赤くなってるじゃない! 皮も剥けてるし!」
「かすり傷だよ、本当に大丈夫だから…」
「メロン! …あれ? どこ行った?」
ママがパパの手を見ている隙に、メロンはケージの中へ。
メロンは悪くないもん、そんなの知らないよ!とでも言いたげに、そっぽを向いています。
「メロン、こっちに来なさい」
ママが呼んでも、振り向きもしません。
その小さな背中を見つめながら、ママがつぶやきました。
「これって…反抗期なの?」
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