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柴犬 小説
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2021.02.05

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと|vol.14

豆しば暮らし|メロンの思いやり?

倒れてから、どのくらい時間が経ったのでしょう。
意識が戻ったママは、うっすらと目を開けました。

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語の連載第14話です。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

メロンの涙

お座りをしたメロンが、険しい顔をしてママをじっと見つめてます。

「遊ばなかったから怒っているのかな?」

そう思えるほどの、厳しいオーラを放っていました。

「違う違う、真剣に心配してくれているんだ」

理解できたママは、ゆっくりと体を起こしました。メロンの顔が、ぱあっと輝きます。

「本当に、表情の豊かな子だねぇ」

ママが笑うと、メロンはママに飛びついて顔をなめ始めました。
体に触れられることが好きではないメロンですが、今はそんなことはどうでもいいご様子。
ママに抱っこされて撫で回されても、嫌な顔をせずに、ママにくっついていました。

よく見ると、目には涙が浮かんでいます。

「あれ? メロン、泣いちゃったの?」

ママの声に、メロンの瞳から涙が一粒、ポロリとこぼれ落ちました。

腰を抜かすほど驚いて、意識を失ったママを心配して。どんなにか怖かったことだろう。
やっとママが目を覚ました時は、嬉しくて嬉しくて…。

メロンの気持ちを思うと、ママも涙がこぼれました。

こ、これは一体…?

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メロンをぎゅっと抱きしめようとしたその時、ママは気がつきました。
自分を取り囲むようにして、メロンのおもちゃが並べられています。

「魔法陣?」

咄嗟にそんな言葉が思い浮かぶほど、異様な光景に思えました。
まるで、何かの儀式のよう…。

「誰がこれを…って、メロンしかいないよね。これ、全部メロンが運んできたの?」

メロンのおもちゃは、まとめてカゴに入れてあります。
そこから一つくわえてママの側まで運び、床に置き。またカゴまで戻って、同じことを繰り返し。

そこにどんな思いがあったのか。ママは考えてみました。

早く遊ぼう? それとも…?

パパとママが仕事から帰って来たら遊ぶことが、メロンには習慣になっています。
だから、早く遊ぼうと催促するために、おもちゃを並べたのかもしれません。

でも、それにしては、とても心配そうだったメロン。

「祈る代わりだったのかな?」

ママの無事を祈り、回復を祈り。
一つ一つ並べていったのだろうか。

「メロンの大切なおもちゃを全部あげるから、ママを元気にしてくださいって神様にお祈りしてくれたの?」

もし私がメロンだったら、きっとそうする。
ママは思いました。

「それとも、大好きって言葉の代わりかな?」

あなたが大好き。
その気持ちを伝える言葉を持たないメロンは、おもちゃを並べて差し出すことで、表そうとしたのかな。

「本当のところはよくわからないけど、メロンの思いやりなんだよね。ありがとう、ママもメロンが大好きだよ!」

その言葉に、メロンの目がきゅうっと細くなり、まるで笑ったかのようでした。

「メロン、笑った?! 犬って、腰を抜かしたり泣いたりするだけじゃなく、笑うこともできるの?!」

メロンから元気をもらったママ、あれほど激しかった腹痛も、すっかりどこかへ飛んで行ってしまいました。

  • 更新日:

    2021.02.05

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。