私が好きな「きみに読む物語」という映画で、年齢を重ねたおじいさんはこう話します。
私にとって“病気”は正しい言葉じゃない。“老化現象”と呼んだ方がしっくりくる。
愛犬も年齢を重ねてくると、いままで頑張ってきたさまざまな臓器や運動の機能が低下し、獣医療や介護ケアの力が必要になる「健康寿命」を迎えます。
年齢を重ねた愛犬を動物病院に連れていき健康チェックをすると、例えば年齢を重ねた私たち人間と同じように筋肉や関節の運動機能の低下を指摘され、場合によっては変形性関節症(関節炎)という病気の診断がつくこともあるでしょう。
それが場合によっては心臓病であったり、腎臓病であったり、体のどこかにしこり(腫瘤・しゅりゅう)ができたり。
診断として「病気」という分類の言葉がつきますが、ご紹介させていただいた映画のセリフのように、それは、長年その体と過ごしてきた「老化現象」のひとつでもありますよね。
今回の記事では、そんな愛犬の病気とうまく付き合っていくための3次予防についてお話します。
前回までの0次、1次、2次予防の記事もしっかりと復習チェックしてみてくださいね!
愛犬のための予防
私たち人間における3次予防とは、病気が発症した後に必要な治療やリハビリテーションを受け、機能の維持・回復を図ることです。
犬における3次予防は、動物病院への定期的な通院や治療、自宅での投薬や食事療法、運動機能を維持するためのリハビリテーションのことなどを示します。
この3次予防はシニア犬だけではなく、生まれつきの先天的なハンディキャップがある子や、ケガや事故によって運動機能が低下してしまった子、年齢が若くても、例えば皮膚病がかゆくてかきむしってしまった、なども悪化を防ぐという観点では”すべての年齢の子”に必要になる考え方です。
もし愛犬が体調を崩してしまった時は、その病気の悪化を防ぐことができる方法がないか、3次予防を意識してみましょう!
動物予防医療普及協会では、ハンディキャップを持つ動物たちがよりよい生活を過ごすための情報発信やイベント企画を行っております。
その活動のひとつとして、ハンディキャップがある子でも車いすや装具などを使用し、楽しく生活することができることを多くの飼い主さまに伝える目的で開催された「パラスポーツフェスタ For アニマルズ」があります。
たとえ身体の機能の一部が失われていても、動物たちの動きたいという気持ちがなくなるわけではありません。車いすを乗りこなして駆けまわったり、装具をつけて懸命に歩いたりする子たちの姿は、ときに私たちに生きる勇気を与えてくれます。
動物用の車いすや義足などはまだまだ認知度が高くないため、これからも多くの方と連携し、このようなイベントを継続してまいります!
私たち人間も犬も、数十年前と比べて平均寿命が伸びてきました。
『人生100年時代』ともいわれる現代で大切な考え方が”ヘルシーエイジング”です。
これは、年齢を重ねたことによって生じるさまざまな病気や運動機能の低下とうまく向き合いながら、自分らしく元気に自立した生活ができるように、健康的に年を重ねていくことです。
今までの連載記事では、愛犬のための予防には0次予防から1次、2次、3次予防と段階があり、そのステージによって適した予防手段があることをお伝えしてきました。
読者の皆さまが、愛犬と一緒にヘルシーエイジングを実現するため、予防について学び、考え、日常生活に活かすきっかけとなればうれしく思います。
(ちなみに、私たち人間もワンちゃんも例外なく歯のケアは必須です!)
連載第7話になる今回の記事で、わたし自身のことや動物予防医療普及協会のこと、また予防に関する概論についての連載はおしまいになります。
まだまだみなさまにお伝えしたいことはたくさんありますが、大切なことは『飼い主さまが、知ることで行動することで防ぐことができるペットの病気やケガがあります』というメッセージです。
“愛犬”というかけがえのない家族と一緒に、健康で豊かな生活が送れるようにこれからも一緒に学び、実践していきましょう!
docdog読者のみなさま、ありがとうございました!
安 亮磨より、愛をこめて。
「動物と人の未来を創る獣医師によるコラム」記事一覧