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白と茶色の毛の犬が肝硬変になり床に這いつくばっている
健康管理 / 病気
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2022.01.14

犬の肝硬変の症状や治療法、なりやすい犬種を解説【獣医師監修】

私たち人間の病気としてもたびたび耳にする「肝硬変」ですが、犬にも起こり得る病気だということをご存じでしょうか?病名を知っていても、どんな病気なのか詳しくは知らないという方も多いと思います。治療法や予防法など事前に知っておきたいですよね。
今回は、肝硬変について、その症状や治療法、また、私たち飼い主ができる予防法などを詳しくご紹介します。

監修:加藤 みゆき/獣医師(文:Qt/家庭犬トレーナー)

犬の肝硬変ってどんな病気?

白と茶色の毛の犬が肝硬変になり動物病院を受診している

「肝硬変」というのは、実は特定の病気の名称ではなく、さまざまな要因でダメージを受け続けた肝臓が、繊維状に硬くなってしまい、その機能を失ってしまった状態のことを言います。

つまり、肝硬変になる前に別の感染症や疾患で肝臓が弱ってしまうという前段階があり、それに気づかず放っておくと最終段階として肝硬変になってしまうということです。肝硬変とは肝臓病の末期の状態ということになります。

初期症状とチェック項目

肝臓は「沈黙の臓器」という呼び名もあるほど、症状が出にくく病気が見つかりにくいと言われています。そのため、初期は自覚症状もなく、健康診断以外で見つけるのは難しいでしょう。

一方で、丈夫な臓器としても知られていて、大きく切除しても自己再生して元の大きさに戻り、正常に働いてくれる臓器とも言われています。症状が出るのは悪化してしまってからなので、見つかった時にはもう手遅れという状態も珍しくない、恐ろしい病気でもあります。

肝硬変の症状

病気が進行してくると、下記のような症状が出てきます。肝臓病が原因で下記のような症状が出ている場合には、かなり進行してしまっている可能性が高いため、一刻も早く病院へ連れて行くことが大切です。

  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 嘔吐・下痢
  • 腹部の痛み
  • 黄疸(白目や歯茎などが黄色くなり、おしっこも濃いオレンジ色になる)
  • 出血しやすい

他の犬や人にうつる?

肝硬変自体が他の犬や人にうつることはありませんが、ウイルス性の肝炎(犬伝染性肝炎)など肝硬変の原因によっては、うつってしまう可能性もあります。

動物病院で疾患の特定をしてもらい、人や他の犬にうつってしまう病気かどうかを確認しておきましょう。伝染性肝炎の予防には年に一度のワクチンが有効です。

犬が肝硬変になる原因3つ

白と黒と茶色の毛の犬が肝硬変になりベッドでぐったりとしている

人間はお酒の飲みすぎなどで肝臓に影響が出るということはよく知られていますが、お酒を飲まない犬たちがどうして肝硬変になってしまうのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。ここからは、犬の肝硬変の原因についてご紹介します。

慢性肝炎

肝炎といってもいろいろな種類があり、ウイルス性や細菌感染、薬を飲み続けることによる肝臓へのダメージ、高カロリー・高コレステロールのフード、免疫異常など様々な要因が考えられます。

肝炎が常態化し、慢性肝炎になってしまうと、その後肝硬変になってしまう可能性が高くなると言われています。

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胆管結石

胆石によって胆管が詰まってしまうと、胆汁が流れにくくなり、黄疸の症状が出たりや肝炎を引き起こすこともあります。さらに、悪化してしまうと肝臓の機能を障害し、障害された機能の修復が追い付かなくなると肝硬変になってしまう恐れがあります。

銅の蓄積

本来、体の外に排出されるはずの銅が代謝障害によってうまく排出されず、体内に溜まってしまう「銅蓄積肝障害(銅起因性肝炎)」という病気が原因で肝炎になり、その結果として肝硬変にまで悪化してしまうこともあります。

かかりやすい犬種や年齢は?

肝硬変はどの犬種でも起こり得る疾患ですが、長い間肝臓にダメージを受け続けることによって発症するため、シニア犬がなりやすいという特徴があります。

そして、肝硬変の原因の1つである肝炎になりやすい犬種は、ダルメシアンドーベルマンウエストハイランドホワイトテリア・ゴールデンレトリバーなどです。

また、べドリントンテリアは遺伝的に銅起因性肝炎になりやすいと言われています。

犬の肝硬変の治療法

ベージュの毛の犬が肝硬変になり獣医師の治療を受けている

肝硬変になる前の状態であれば、肝臓にダメージを与える原因を取り除くために利尿剤やステロイド剤、抗生物質などを用いた薬物療法を行います。

手術で患部を切除し、回復することもありますが、肝硬変と診断されてしまったら、残念ながら今のところは完治は難しく、対症療法しかありません。一度繊維化してしまった肝臓は元に戻れないからです。少しでも病気の進行を抑え、わずかに残った肝機能を守るための維持療法が主な治療方法になります。

また、肝臓の病気には食事はとても重要なので、獣医師指導のもと、良質で低タンパクなフードを選んであげることも大切です。

治療にかかる費用

肝臓を切除するための外科手術をおこなう場合には一般的に、30万~50万円ほどかかると言われています。ただ、肝硬変にまで悪化してしまうと手術をしても回復はあまり見込めません。

愛犬の不快感を取り除く処置や、できるだけ愛犬にストレスをためないようにしてあげるなど、できる限りのサポートをしてあげましょう。

犬の肝硬変の予防法

グレーの毛の犬がリードに繋がれ散歩している

肝臓の病気を予防するには、毎日の食事がとても重要です。高カロリーのフードは避け、愛犬を肥満にさせないよう適切な食事管理をしましょう。

さらに、肝臓の病気は早期発見できるかどうかが大きなカギになります。若いうちは年に1回、シニア期に入ったら半年に1回は健康診断を受けさせましょう。

「もっと早くみつかっていれば・・・」と後悔しないよう、定期健診を強くおすすめします。

再発する可能性

肝硬変は肝臓の80%以上がダメージを受け、硬くなってしまっている状態です。そうなってしまった肝臓を完治させるのは難しいため、再発という概念はありません

犬の肝硬変との向き合い方

ベージュの毛の犬が顔を見上げいる

肝硬変は肝臓病の末期の状態で、残念ながら現在の医療では回復するのは難しいというのが実状です。
もちろん、愛犬のためにあの手この手を尽くして治療法を探すという方法もありますが、それよりも、残された愛犬との時間をいかに穏やかで幸せに暮らせるかを考えて、愛犬に寄り添いながら過ごしてあげる方がきっと彼らにとっては嬉しいはず。

できるだけ愛犬の負担を減らせるような、快適な環境づくりをしてあげましょう。

参考文献
  • 公開日:

    2021.01.14

  • 更新日:

    2022.01.14

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ライター・専門家プロフィール
  • 加藤 みゆき
  • 獣医師
  • 日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。 日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。