歯周病は、主に細菌によって口腔内で起こる炎症の総称です。 歯肉が腫れたり(歯肉炎)、歯を支えている歯周組織が破壊されてしまう(歯周炎)病気で、悪化すると歯の根元が膿んだり、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶けてしまいます。
治療せずにいると最終的には歯が抜け落ちたり、食べ物を噛んだだけで下顎が骨折してしまうこともあります。 また、歯周病菌が血流にのって全身を巡り、心臓・肝臓・腎臓に害を及ぼすこともあります。
犬が歯周病になると、まずは歯茎が炎症を起こします。健康的なピンク色の歯茎が赤色へと変わり、腫れ上がります。
歯茎が急に膨らんだり、黒く変色する場合には口腔内腫瘍の疑いがあるので、様子を見ずに動物病院を受診しましょう。
人の場合、歯周病菌が他の人にうつることは有名で、歯周病になってしている人とのキスや食器などの共有によって感染する可能性があると言われています。
そして犬の歯周病菌も同様、人や他の犬にうつることがわかっており、反対に人から犬にうつることもあります。
人間と犬はお互いに歯周病菌をうつし合っている可能性があるので、犬とキスをしたり、人の食べ物を噛みちぎって犬に与えるようなことは控えましょう。
犬が歯周病になる原因と、かかりやすい犬種や年齢についてご紹介します。
犬の歯の表面に歯垢(プラーク)が蓄積することで発症します。歯垢は細菌の塊で、これを放置すると細菌そのものや細菌の出す毒素によって歯茎に炎症が起こります。人の場合、歯垢が歯石に変わるまでに約20日かかりますが、犬の口の中ではわずか2~3日間で歯垢が石灰化し、歯石に変化します。
歯の表面に付いた歯石は歯と歯茎の間に入り込み、歯の根元が化膿したり、顎の骨を溶かしてしまうこともあります。
歯磨きなどのデンタルケアをする習慣が無い場合、歯垢が落ちることが無いのでどんどん溜まってしまいます。また、ウェットフードや柔らかいおやつを与えている場合は歯や歯茎にフードが残りやすいため、ドライフードだけ食べている犬よりも歯垢や歯石が付きやすい傾向があります。
大型犬に比べると、顎のサイズが小さい小型犬の方が歯石が付きやすいようです。
ペット保険を扱うアニコム損害保険株式会社の調査では、犬全体の歯周病発症率が1.4%であったのに対して、イタリアン・グレーハウンド15.1%と高い発症率を示したという結果が出ています。その他、トイ・プードルやダックスフンド(ミニチュア、カニヘン)、パピヨンなどが高い歯周病罹患率を示しています。
発症率は3歳頃から年齢とともに増加する傾向にあります。
歯周病の治療の基本は、全身麻酔下での歯垢・歯石除去(スケーリング)となります。超音波スケーラーで見えている歯石や歯周ポケット内に入り込んだ歯石を除去し、仕上げに歯の表面を滑らかにして歯石を付きにくくするポリッシング(研磨)の処置を行います。
重度の歯周病で歯根がひどく露出していたり、歯がグラグラと揺れる場合には抜歯することもあります。
歯周病の程度によってかかる費用にも大きな差があります。一般的にはスケーリングや抜歯など全身麻酔を使用した処置を受けることが多く、手術前の各種検査や全身麻酔、薬の処方などに3~4万円程度かかることが多いようです。抜歯が必要な場合、抜く歯の本数によっても費用が変わってきます。動物病院に直接確認してみましょう。
犬の歯周病予防の基本は、歯ブラシによるブラッシングです。
いきなりブラッシングしようとすると犬は警戒してしまうので、歯ブラシにはおいしいフレーバーの歯磨きペーストなどをつけて、褒めながら少しずつ慣れてもらいましょう。
どうしても歯ブラシを嫌がってしまう場合には、歯ブラシの代わりにガーゼを使用したり、口内環境を改善する歯磨きスプレーや歯みがきガムなどのデンタルケア用品を活用する方法もあります。
一般的には、歯科処置の後は問題なく過ごせることが多いですが、デンタルケアを怠るとすぐに歯垢や歯石が付着して再発する傾向にあります。治療を受けた後も油断せずに、歯磨きなどのケアを続けることが重要です。
いかがでしたか?犬の歯周病は軽視されがちな病気ですが、口の中の問題だけでなく呼吸器の感染症や心臓病、腎臓病などを引き起こす可能性があるため、早期の予防や治療が重要です。日頃からデンタルケアを心がけ、口臭が強くなる、よだれが増えるなどの異常を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。