この記事は、猫の「たね」と犬の「まめ」の暮らしを描いた、アマチュア小説家による創作物語の連載第3話です。
かれこれ30分程、まめの遊んでアピールは止まらないのだけど、たねは正直気分じゃない。今日はとっても天気がいいし、まめなんて知らんぷりしてこのまま日向ぼっこするに限る。
でも、最近わかって来たことがある。
まめはなかなかめげないしへこたれない。
こうやって少し無視をしようと、自分だけじゃだめだと思ったらタオルを引きずってきたり、おもちゃを持ってきたりする。
そしてたねの周りでずっと待ってる。この間なんてたねの後ろを追っ掛けるだけで半日くらい経ってたこともある。ひかりちゃんだって10分で諦めるのに。
だから多分、今日もまめはこのまま夕方までうろちょろしてるんだろう。
たねの心配なんて梅雨知らず、まめはたねのおでこに鼻をぐりぐり押し付ける。
うーん…でもでも本当に今日は気分じゃにゃい。
「おやおや、本当にまめはたねがお気に入りだなあ」
「まめー、ちょっとお父さんと遊ばないか」
細目で声がした方を見ると、新聞を抱えたお父さんが丁度椅子に座るところだった。
声を聞いたまめも、耳をピクリと動かしてお父さんの方を見る。
まめの目はきらきらしてて、体も今にも遊びたさそうにうずうずしている。
それ! いいぞ、お父さんの方に行くんだまめ!
だけど、見た目に反してまめはすぐにたねの方へ向き戻った。
「おや、振られちゃったな」
そして、救世主かと思ったのに呑気な口振りのお父さんはあっさり引き下がり、そのまま新聞を読み始めてしまった。
まめは相変わらずたねの周りをうろちょろしている。
はあ…今日の昼寝はここまでか…
ちゃんと目を開けてまめを見ると、まめの表情はより一層明るくなってたねの顔を覗き込んだ。
「わん!」
遊んでと言わんばかりにひと鳴きして、たねの背中に鼻先を押し付けてる。
わかった、わかったからちょっと待ってよ。
たねは起き上がってひと伸びした。渋々座り直して、尻尾をゆっくりと左右に動かす。
それに釣られてまめは左右にばたばたと走り出す。たまにたねの体を通り越して走って行き、慌ただしく戻ってきては尻尾を追い回す。
どうやら、まめはこうやって遊ぶのが好きらしい。まだ小さいとはいえ尻尾にじゃれつくなんてまるで猫みたいだ、って思うけど一緒に走り回されるよりはいい楽だから、これでいいやって思うたねなのであった。
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