少し前に、ある保護主さんのところに、遠方の保護団体さんを経て運びこまれた7歳のヨーキーがいました。詳しい経緯は分かりませんが、繁殖放棄犬であることは分かっています。
骨と皮しかないような痩せ細った身体に、お尻や手足には糞尿が固まり、目のまわりにも目ヤニがびっしりとこびりついていました。 ヨーキーは目も開かず横たわったままで、呼吸はほとんどなく、心臓の音もかすかに感じられる程度でした。
保護主さんは、このままではおそらく長くは持たないだろうと覚悟していた、そう話してくれました。
運びこまれたのが夜の10時。かかりつけの動物病院はすでに閉院。それでも諦めきれない保護主さんは、懇意にしている院長さんの奥様の携帯に緊急連絡を入れました。
奥様の連絡で院長が病院で待機し、仮死状態のヨーキーが運び込まれました。 33℃という低体温、低血糖、いろいろな処置をしても反応なし。時間だけが刻々と過ぎていきました。駆けつけてくれたボランティアさんと共に、ひたすら声をかけ続け、ただ祈るばかりだったそう。
院長が当てた何度目かの聴診器に反応して、身体が動いたのは午前0時を過ぎていました。 消えかけた小さな命が、多くの人たちの善意で救われた瞬間です。
その後のヨーキーは動物病院の方々と、保護主さんやボランティアさんの手厚い治療と保護によって、みちがえるように元気になり、今では預かりボランティアさんのところで、仲間の保護犬達と新しい里親さんが見つかるのを待っています。
この子は奇跡の子だと保護主さんは言います。強運とタイミングとこの子の生きようとする力が奇跡を呼んだのだと。けれど現実には奇跡を呼びたくても呼べない子がたくさんいるのだと思います。
繁殖年齢を過ぎたというだけで、食餌も満足に与えられず、糞尿まみれのゲージから、一歩も外に出されることもなく命尽きていく、このヨーキーと同じ境遇にいる繁殖リタイア犬は少なくないと言います。
全国の保護団体や個人保護主さんが、多頭飼育崩壊したブリーダーや、保健所が強制介入した悪徳ブリーダーの、繁殖犬や繁殖リタイヤ犬を引き取り保護して里親探しをしています。
人間に利用され使い捨てにされる命を救うのは私達にしかできないから・・と保護主さん達は語ってくれます。けれど、それは結果的に命を見殺しにするブリーダー達の尻ぬぐいをしているだけなのではないのか・・と複雑な忸怩たる思いにかられる、とも聞きました。 可愛い子犬が欲しいという大きな需要があるかぎり、過大に供給しようとする業者も増え続けるということです。
モチロンすべてのブリーダーさんが悪いわけではありませんよね。その犬種について深い知識を持ち、次の世代へと純血種を引き継がせるために、愛情を持って飼育繁殖されているブリーダーさんもたくさんおられます。そういうブリーダーさんは、安易に子犬を増やしたり、簡単に誰にでも売ったりはしません。
昨今、コロナの影響でリモートワークが増えたことから、ペットを買う(あえて買うと書きます)人が増え、飼ってみたら世話が面倒だという理由で捨てられる犬が増えているというニュースを見ました。不幸な犬を作るのは、こういう安易な気持ちで犬を買う・飼う人達ですよね。
ペットショップで、かわいい!と子犬を抱き上げる時に、その子の後ろにはその命を生み出した父母犬がいることにも思いを寄せてください。そして不幸な繁殖犬を作っているのは、我々人間がペットに求める安易な癒しなのだということに気付いてもらいたいと切に願います。
今日は少し横道に逸れた話になりました。
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