犬に関わらず人であっても、強い恐怖や苦しみ、深い悲しみや辛い出来事などを経験した時は、二度と同じ思いをしたくないと思うでしょう。
保護犬も同様に、恐怖や辛い出来事を何度も経験することで心が傷つき、新しい里親との生活が始まっても、昔のような状況になることを極度に恐れます。
保護犬のトラウマは昔の状況と同じような状況になったときに現れます。
たとえば、男性に対して極度に怖がったり攻撃的になったり、棒状のものやボールなどの特定な物に拒否反応をおこすときは、かつて男性から棒やボールなどで、叩かれたり投げつけられたりして虐待を受けていたことが考えられます。
また、保護犬がトラウマを感じた時に出る症状には、吠えや噛みつきなどの威嚇行動の他にも、震えや痙攣、自分の尻尾を追いかけてしつこく旋回したり、尻尾や足を執拗に噛み続けたりする異常行動も見られます。
人でも同じですが、一度傷ついてトラウマになってしまった記憶はなかなか消えません。
普段は忘れていても、毎日の生活の中でふとした瞬間に、嫌な記憶がフラッシュバックしてしまうことは良くあります。
保護犬のトラウマは行動療法やトレーニングなどで、少しずつ癒されていくこともありますが、完全に取り除くのは難しいといわれています。
私達飼い主にできることは、できるだけトラウマになる状況にしないことや、傷ついた心にそっと寄り添ってやることぐらいしかありません。 後は心の傷がゆっくりと回復していくのを、焦らず時間をかけてじっと待っていてやることです
プゥさんには食べるときの威嚇以外に、これといって問題のあるトラウマのようなものはないと思っていました。
プゥさんが我が家に来て1週間ほど過ぎたころから、散歩に出て5mくらい歩くと、突然動かなくなり家に戻ろうとするようになりました。
おやつで気を引いても、少し先から呼んでもガンとして動かず必死に家に帰ろうとします。
プゥさんは歩くことが嫌いなわけではありません。少し先の公園まで抱いて連れて行くとちゃんと歩きます。そんな「行き抱っこ散歩」を何日も繰り返していて気付きました。公園からの道はプゥさんにとって散歩をするための道ではなく、家へ帰るための道だったのです。
公園に着いたプゥさんは早足で歩き、公園を出ると猛ダッシュで家まで走って帰ります。 「家から離れるとまた知らない何処かに置いていかれる」これがプゥさんの最大のトラウマでした。
プゥさんの家から少し離れたら絶対歩かない、という行動は3年たった今でも変わりません。今年の夏に私が足を骨折してからは、抱っこではなくバギーに乗って公園や病院まで行き、帰りは歩いて帰るようになりました。
プゥさんが必死になって家に帰ろうとするのは、我が家を帰るべき自分の家だと思ってくれているからだと思うと、それだけで素直に嬉しい気持ちになります。
その反面、プゥさんの心から未だに消してやることのできない「捨てられるのは怖い」という不安な気落ちを思うと切なくなります。
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