寒の戻りというのでしょうか。
春もたけなわだというのに、寒い日が続いていました。
この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語の連載第13話です。
今日は、パパもママもお休みです。おうちでまったり、メロンとゆっくり。
寒い日には、それが一番でした。
「今夜は久し振りに鍋にしようか?」
メロンと遊びながら、ママが提案します。
「いいね! ビリ辛の牡蠣鍋が食べたいなー」
辛い物と海産物の好きなパパが、嬉しそうに答えました。
その晩は、あつあつの牡蠣鍋を囲んで軽く一杯。明日への英気を養いました。
その翌日は、パパは朝から仕事、ママは午後から仕事です。
パパを送り出し、家事を済ませ、メロンと遊び…。バタバタと動いていると、あっという間にお昼になりました。
軽い昼食をとり、支度を整え、ママは仕事へと向かいます。ですが、何だか気分がのりません。
「昨日ゆっくり休んだはずなのに、おかしいな…」
気持ちを奮い立たせようとしていると、だんだんお腹が痛くなって来ました。
仕事の間は集中しているので、痛みを忘れることができましたが、仕事が終わる頃には、我慢するのが難しいほどの激しさに。
病院が苦手なママは、家に帰って休めば治ると自分に言い聞かせ、スタッフへの挨拶もそこそこに、急いで帰路につきました。
しかし、腹痛は容赦無く激しさを増してゆきます。
「もしかして、牡蠣にあたったのかな…?」
脂汗をダラダラとかきながら、意識を失いそうになりながら、ママは何とか車を運転し続け、家にたどり着きました。
玄関のドアを開けると、いつものようにメロンがお迎えしてくれています。でも、今日ばかりは、メロンと遊ぶことができそうにありません。
意識が朦朧とする中、うがいと手洗いをし、ママはリビングへ。
ただならぬ様子のママを、心配そうに見つめながら、メロンも後をついてゆきました。
薬箱から腹痛の薬を出して服用すると、ママはメロンに言います。
「ごめんねメロン、遊ぶのはもう少し待ってくれるかな? ちょっと休んでから…」
言い終わらないうちに、ママの視界が暗くなっていきました。
「貧血…?」
腹痛も耐えられないほどになっています。ママは、その場にしゃがみ込もうとして、そのまま倒れてしまいました。
ママの身長は170センチ。女性にしては、大柄です。
それがドサリと倒れるのですから、かなりの衝撃でした。
「ふぎゃ!」
驚きのあまり、メロンは思わず声をあげ、コテンと尻もちをついてしまいました。
意識を失う寸前にママが見たのは、メロンのその姿。
「え? 犬も腰を抜かすんだ…。しかも、ふぎゃって。かわいい…」
驚きと愛おしさとで胸がいっぱいになりながら、ママは暗闇の底へと落ちてゆきました。
「小説|豆しば暮らし」記事一覧