この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語の連載第12話です。
さてと。必要なものは揃っているし…。
シャンプー指導の日にトリマーさんから教えてもらったことも、しっかりおさらいしたし…。
仕事からの帰り道、ママは、あれこれと確認します。
そして、帰宅してメロンと遊んだ後、ブラシを取り出し言いました。
「さぁ、メロンおいでー! キレイキレイの時間だよー!」
メロンは、体を触られることが好きではありません。
撫でられれば迷惑そうな顔をするし、抱っこされればじっと耐え忍んでいます。
毎日のブラッシングだけは、もう習慣になってしまったので嫌がりはしませんが、それでも、少しでも後回しにできないものかと牛歩戦術を使います。
ゆっくりゆっくり、ママのそばへ。
「今日はシャンプーするから、念入りにブラッシングしようね」
メロンを捕まえて、ママはブラシをかけ始めました。
トリマーさんは、メロンをさっとひっくり返して、お腹や足の内側を上手にブラッシングしましたが、ママにはまだ難しく、メロンの抵抗にあっさりと負けてしまいます。
それでも何とかきれいにすると、どうにかこうにか、爪切りと耳掃除と肛門絞りを終えました。
さぁ、これで準備完了です。
シャンプー指導の日、メロンが嫌がっていた様子を思い出したママは、ふと思いつきました。
「お風呂に入っていい気分になれば、シャワーもシャンプーも楽しくなるかも!」
我ながらいい考えだとご満悦のママ。それが素人の浅知恵だったと気付くのは、もう少し後のことでした。
「ねぇメロン、先にお風呂に入って体を温めようよ」
メロンを抱っこして、ママはバスルームへ。
「犬かきっていう泳ぎ方があるくらいだから、水は平気だよね。ましてやお湯ならば!」
よくわからない理論を唱えるママを、メロンは横目でちらり。
その目は明らかに、「大丈夫なの?!」と訴えていました。
バスタブにぬるめのお湯をはり、ママはゆっくりとメロンをお湯の中へ。気持ちよさそうに目を細めるメロンの顔を、想像していました。
しかし、現実はママを裏切り…。
バシャバシャバシャ!
「うわっ、メロン! ちょっ、ちょっと待って! うわー!」
メロンは大暴れです。
確かに、水遊びや泳ぐことが大好きなワンコは多いのですが、柴犬はあまり得意ではないということを、ママは知りませんでした。
「メロン、一旦落ち着こう! ね?」
お湯から引き上げられたメロンは、遠い目をして、足を前後にバタバタと動かし続けています
「これはマズいことになっちゃった…?」
ママの予感は大当たり! その後のシャワーもシャンプーもリンスも、メロンは全力でイヤイヤをして暴れます。
完全に、お風呂が嫌いになってしまいました。
それからは、シャンプーの気配を察しただけで、逃げ回り隠れるようになってしまったメロン。
仕方がないと受け入れるようになるまで、2年近くが費やされることとなりました。
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