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柴犬 小説
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2021.03.02

アマチュア小説ライターが綴る、犬と暮らした日々のこと|vol.10

豆しば暮らし|メロンのおもちゃで手を打とう

ママを笑わせようとするも、それが裏目に出てしまったパパ。
ママの怒りは、頂点に達しています。

この記事は、アマチュア小説家が「犬と暮らした日々のこと」をもとに綴る創作物語の連載第10話です。

#柴犬 / #豆しば暮らし

笠井 ゆき/ライター、葬儀司会者

危機的状況にまで発展

ママの怒りのマシンガントークが炸裂。
パパは、ママが息継ぎをするタイミングで、素早く謝ることしかできません。
しかし、まるで合いの手のようなそれが、逆に火に油を注いでしまいました。

「ふざけてる場合じゃないでしょ!」

その通り、パパはふざけてなどないのです。それなのに…。

「わかった。これでお終いだね」

「お終い、って…?」

「あんなひどいことを言って、それでもなおふざけているような人とは、サヨナラだってことだよ!」

パパは顔面蒼白です。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!早まってはいけないよ!」

「何言ってん…」

唐突にママの言葉が止まりました。

怒りをおさめてくれたのは…

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「メロン…」

声のトーンも、信じられないほど優しくなっています。
パパは、そっとママの様子をうかがいました。

メロンが、ママの手をなめていました。怒らないでと、小さな体で懸命に訴えています。
まだ外でお散歩もできないような赤ちゃんが、ついこの間出会ったばかりの家族を繋ぎ止めようと、必死になっているのです。

この眼に映る全てのものが、優しく温かいものでありますように。
そう願ったばかりだというのに、悲しい思いをさせちゃったね…。

「ごめんねメロン!」

ママは、メロンをぎゅっと抱きしめました。その頬には涙が一粒。
そして、パパの方に向き直り、静かに言いました。

「もう二度とこんなこと言わないで」

「わかった。本当にごめんなさい」

小さな声で言うパパも、涙をこらえていました。

「メロンに何があっても、絶対に手を離さないよ」

とは言え、これで済むはずもなく…

「メロンのおもちゃだね」

「え?何が?」

「手打ち」

もちろん、うどんの話ではありません。

「メロンと私は家で待ってるから、メロンが喜ぶおもちゃをたくさん買ってきて。それで手を打とうじゃないか」

「メロンのおもちゃ、この間買ったばっかりだよね…?」

「それはそれ、これはこれだよ」

ママに譲る気など、これっぽっちもありませんでした。

「でもさぁ…、甘やかすのもよくないんじゃないかなぁ、なんて…」

恐る恐る言うパパに、再び重低音が答えます。

「……買って来いや」

「は、はいっ!喜んでっ!」

口は災いの元。
その言葉を、パパは、今日ほど噛み締めたことはありませんでした。
でも、メロンのおかげで、一家離散の危機は免れた。これは、奮発しなきゃいけないな。

何だかんだ言っても、親バカなパパ。口笛を吹きながら、ペットショップへと向かいました。

  • 公開日:

    2021.01.15

  • 更新日:

    2021.03.02

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ライター・専門家プロフィール
  • 笠井 ゆき
  • ライター、葬儀司会者
  • 年中無休の犬好き、犬バカです。只今、自宅警備員まめお(パピヨン)と同棲中!犬を愛する喜びを、皆さまと分かち合ってゆけたら幸せです。どうぞよろしくお願いいたします。