ふさふさした尻尾や細く長い尻尾。犬の尻尾はいろいろな形がありますね。時には、ブンブンと激しく振ったり、ゆっくりと振ったりする尻尾。なぜ犬には尻尾があるのでしょうか?尻尾の役割・機能から考えていきましょう。
寒い季節になると尻尾は、体をあたためる役割をします。体を丸くし、尻尾の下に鼻を入れている光景をみたことがある方も多いはず。
実はあの姿勢は、尻尾で寒さを防ぎ、体温を逃がさないようにしているだけでなく、尻尾の下に鼻を入れることによって冷たい空気を鼻から吸い込むことを防いでいるのです。私たちでいうとマフラーやスヌードのような働きをしているといってよいでしょう。
犬の尻尾は、体のバランスをとるために大切な働きをします。例えるなら舵のような存在。
たとえば早く走る時には、転ばないように下半身のバランスを取るというのも尻尾の大切な役割です。全速力で走りながら曲がる時にも尻尾があるからこそ犬はバランスを維持することができるのです。
尻尾は、相手に気持ちを伝えるための大切な役割もあります。尻尾で気持ちを伝えることで、犬同士のコミュニケーションが取れるだけでなく、私たち、人にも尻尾で気持ちを伝えようとしていると考えられています。一体、犬が伝えたい気持ちとはどのようなものでしょうか?
犬の尻尾には「尾椎」という骨があります。骨の数は6~23個あり、犬種によって数が違います。尾椎は、大きさが同じでなく、尻尾の先端にいけばいくほど、小さくなっています。犬の尻尾の先が細くなっているのは、尾椎が細く、小さくなっているからです。
尾椎の周りには、内背側仙尾筋や外背側仙尾筋、尾横突間筋などの筋肉が左右対称にあります。これらの筋肉が収縮することで、尻尾の向きを変えることができます。たとえば、左右の内背側仙尾筋が収縮すると尻尾が上にあがるといった具合です。
このような尻尾の動きは、犬自身が「尻尾を右に振ろう」「尻尾を上に向けよう」と考えて動かしているわけではありません。
ある時には、ブンブンと振り、ある時にはアンテナのようにピンと立てたりと尻尾の動きをみていると飽きることがないですよね。
実はそれらの尻尾の動きには、さまざまな気持ちが込められています。ここからは犬の気持ちをしることができる尻尾の動きをご紹介します。
犬が尻尾を上げて小刻みに降っているときは興奮しているときです。うれしくて興奮している、楽しくて興奮している…というように何に対して興奮しているかはその時の状況によります。もちろん前向きな興奮だけでなく、けんかの際の興奮などでも尻尾を振ることもあります。尻尾を振っているからと言って犬が必ずしも喜んでいるわけではないことを覚えておきましょう。
尻尾を振っているから撫でようとすると、吠えられてしまうことがあります。このように小刻みに尻尾を振っている犬の気持ちは「何か」に興奮しているときなのです。
犬が尻尾を後ろ脚の間に隠しているときは、強い恐怖や不安な気持ちを感じているときです。また何かを強く警戒している時にも同じように尻尾を後ろ足の間に隠してしまいます。
たとえば大きな音が苦手な犬なら、花火や雷の音を聞いたときに、このような仕草をします。犬のストレスになるので、恐怖を感じているものを取り除いてあげるようにしましょう。
尻尾をだらりとたらして悲しげな表情をしているときは、寂しい悲しい気持ちのときです。また体調が良くないときにも同じような仕草をします。このような仕草をみたら、犬をよく観察しましょう。
犬の尻尾の動きをよくみていると、普段と違う動きをしていると感じることがあります。なかには健康面で注意が必要な尻尾の動きがあります。
犬が自分の尻尾を追いかけて遊ぶことはあります。しかしずっと追いかけ続けているのであれば、遊びではなく、ストレスを感じているなどからくる問題行動の可能性があります。
ストレスの原因は、運動不足や飼い主さんとの距離感の問題から、暑い寒いといった環境に関する場合もあります。そのままにしておくと、状態が悪化することもあるでしょう。どんなことにストレスを感じているか…犬の様子をよくて原因を究明し、必要に応じて治療をする必要があります。
犬は言葉が話せないので何を伝えたいか分からないときもあります。しかし犬は、自分の感じていることを、しっかりと私たちに伝えようとしています。犬との生活を楽しむためにも、私たち飼い主は、犬の気持ちを少しでも理解することが大切です。
愛犬をもっと知りたいと思う気持ちは、きっと愛犬にも伝わります。そうしてより深い信頼関係が作られていきます。犬と共に暮らせる時間は、無限ではありません。限られた時間を楽しむためにも犬の気持ちをもっといっぱい知ってみてはいかがでしょうか?