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健康管理 / 病気
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2020.12.24

【獣医師監修】犬に使える人間の薬は存在する?犬の薬と人間の薬は何が違うの?

犬の体調が悪そうなときに、身近にある人間用の薬を与えてみようかな、と考えたことはありませんか?
今回は、犬に使える人間の薬は存在するのか、市販の人間用の薬を与えてもよいのか、整腸剤として有名なビオフェルミンを犬に使用する際の注意点などについてご紹介します。

監修:加藤 みゆき/獣医師(文:江野 友紀/認定動物看護士)

犬に使える人間の薬は存在する?

犬に使える人間の薬

犬に使える人間の薬というものは存在するのでしょうか?

動物病院で扱っている薬の多くは人間用

動物病院で扱う薬の7~8割くらいが、実は人間用の薬です。犬の病気の治療に必要な薬は、人間用の薬と同じ成分であることが少なくありません。そのため、人間用に開発された薬が動物の用法・容量で処方されています。

人間用の薬が動物病院で多く扱われている理由

新しい動物用医薬品の販売承認を取得するには、効能または効果を裏付けるための臨床試験(治験)などを行う必要があり、莫大な時間とコストがかかります。製薬会社がわざわざ人間用・動物用に分けて開発、製品化するメリットは少なく、採算が合わないため動物用として開発される医薬品の種類は決して多くはありません。動物病院では多くの人間用の薬を動物用の量で計算して処方しています。

市販の人間の薬は犬に使用できる?

犬に使える人間の薬

犬に風邪のような症状が見られたり、下痢をしたときに「人間用の市販薬を与えてみようかな」と考えたことのある人もいるかと思いますが、人間の薬を飼い主さんの判断で犬に与えることは大変危険です。

飼い主さんの自己判断で使用しないで

安易に「犬の体重は人間の体重の何分の一くらいだから」と計算して薬を与えてしまう人もいるようです。しかし、人間では副作用がほとんど現れない有用な薬でも、犬が摂取すると有毒になる薬もあるため、自己判断で人間用の薬を与えてしまうと重大な事故に繋がることがあります。
犬が薬を服用したときに起こり得る症状は摂取した薬や障害の程度などによって異なりますが、元気がなくなる、食欲不振、嘔吐、吐血、けいれんなどの症状が現われます。

風邪薬や痛み止めは特に危険

人間用の薬の中でも、風邪薬や解熱鎮痛剤に含まれている成分には、少量の摂取でも命に関わるものがたくさんあります。そのため、人間用の薬を数多く扱う動物病院であっても、人間用の風邪薬・解熱鎮痛薬はほとんど使用されていません。

外用薬も要注意

塗り薬であっても、使用には注意が必要です。例えば、人間用の傷薬で有名なオロナインを犬の傷に塗り、治るケースもありますが、皮膚に深い傷があった場合には表面だけが治り、隠れた深層の傷が悪化して膿んでしまうことがあります。身体中を被毛に覆われた犬の傷は、バリカンなどで刈らなければ状態がわからないことがあります。
また、犬が外用薬を舐めて気持ち悪くなってしまったり、舐めとってしまうことで効果が得られないこともあります。

犬に使える人間の薬「ビオフェルミン」について

犬に使える人間の薬

ビオフェルミンを常備しているご家庭は多いのではないでしょうか。ビオフェルミンは乳酸菌から成る整腸剤で安全性が高く、犬にもよく使われています。

人間用のビオフェルミンと犬用のビオフェルミンの違い

人間用と犬用のビオフェルミンでは、用量や薬に配合されている成分が異なります。犬の胃酸は人よりも強酸のため、犬用のビオフェルミンには胃酸によって菌が死なずに腸まで届くような菌が配合されています。

ビオフェルミンにも種類がある

ビオフェルミンにも様々な種類があり、一般的に家庭に常備されていることの多い薬は「ビオフェルミンS」です。
ビオフェルミンSは、抗生物質と一緒に服用するとビオフェルミン中の乳酸菌が抗生物質によって死んでしまい、効果が得られなくなってしまいます。抗生物質を投薬中に整腸剤を与えるのであれば、抗生物質に抵抗力のある耐性乳酸菌製剤「ビオフェルミンR」を与えましょう。

人間用のビオフェルミンを与える際の注意点

犬に人間用のビオフェルミンを与えても、特別問題はありません。犬に与える際の注意点をご紹介します。

用法・容量は獣医師に相談する

ビオフェルミンは他の薬と比べ安全性が高いですが、量を多く与えればよく効くというものではありませんし、少なければ期待する効果が得られません。用法・用量については獣医師に相談しましょう。

期待する効果が得られないことがある

ウイルスや細菌、寄生虫の感染による下痢や、熱中症など原因となる病気があれば、ビオフェルミンの用法・用量を守って与えたとしても完全に治ることはありません。

原因によっては病気が悪化することも

「犬の便が緩いときはビオフェルミン」と安易に考えることは危険です。病気が原因の場合は、ビオフェルミンを与えて様子を見ているうちにどんどん悪化してしまうことがあります。ビオフェルミンを与えても改善が見られないときや、下痢や軟便以外の症状が見られるときは動物病院を受診しましょう。

犬に使える人間の薬はたくさん存在するけれど

犬に使える人間の薬

動物病院で使用される薬の多くは、人間用です。犬での効果が期待できるために処方されるわけですが、それは時間をかけて獣医学について勉強し、国家試験に合格した獣医師であるからこそできることであり、飼い主さんの判断で人間用の薬を使用することは大変危険です。病気の治療については、主治医の先生に相談しましょう。

参考文献
  • 更新日:

    2020.12.24

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ライター・専門家プロフィール
  • 加藤 みゆき
  • 獣医師
  • 日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。 日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。