「獣医ドリトル」は、2010年にTBSテレビ系列で連続ドラマとして放送されました。
「獣医はビジネスだ」と冷徹に言い放ちながら、誰よりも動物を想っている敏腕獣医師で主人公の鳥取健一(ドリトル)を小栗旬さん、ドリトルの動物病院で働く看護師、多島あすかを井上真央さん、ドリトルの大学時代の親友で、大きな動物病院の院長を務める花菱優を成宮寛貴さんが演じました。
原作は夏緑さん、コミックでは作画をちくやまきよしさんが手掛けています。
この作品には「嫌だなぁ」「こんな人にはなりたくないなぁ」と思う飼い主がたくさん登場します。そんな飼い主に、ドリトルは痛烈な言葉を投げかけます。
言葉で訴えられない動物たちの代弁者として、そして時には、どうしようもない苦痛を抱えた飼い主の救世主として、たったひとつの小さな命に全力で向かい合うドリトルの言葉がストレートに心に響きます。
どこにでもいそうな困った飼い主が、少しずつ「気づき」を覚える過程がとてもリアルで、思わず見入ってしまうストーリー展開です
もう一つ私がこの作品を好きな理由に、動物の真の姿を知ることができるということがあります。野生動物が置かれた現状、動物種による特性と、その動物と共存する人間のあるべき姿などが、この作品ではとても丁寧に描かれています。
ヒューマンドラマという枠を超えて、この世に生を受けた生き物たちがどのような世界でどんな生き方をしているのか、そして人間が支配するこの地球でどのように人類と関わらなくてはならないかも知ることができます。
でも決して難しい作品ではなく、キャラクターたちが楽しく真剣に、時には失敗したり悩んだりしながら、わかりやすく教えてくれます。
私が獣医ドリトルの中で印象に残っているお話をご紹介します。このお話は構成を変えてドラマで放送されたものです。
あらすじ
愛犬が瀕死の状態になって初めて、ドリトルの病院に駆け込んだ飼い主の男性。手術によって取り出された大量のフィラリアの死骸を見せられて「これが病気の原因だったのか」と顔をしかめます。しかしドリトルは言います。
「いや、違うな。原因はあんたさ」
想定外の言葉を浴びせられた飼い主は反論します。自分はとても可愛がっているし、時間のある時は散歩だってしている、と。
「自分の都合のいい時だけ可愛がることが愛情といえるのか?愛情というのは自分の時間を犠牲にしても少しずつでもいいから、毎日相手に時間を割いてやることだぞ。」(本編より抜粋)
ドリトルの言葉を聞き、飼い主は、幼い頃、母親が眠れずにむずがる自分を背負って、何時間も歩き回ってくれたことを思い出しました。家事や育児で疲れた母親が自分のために割いてくれた時間。それこそが本当の愛情であることを知った時、飼い主は自分のこれまでの行いを心から悔やみました。
「ワクチン」に登場する飼い主の男性は、愛犬を想う気持ちを表現するのは「自分の時間を割いて与えること」だと気づき、それが愛情だと定義しました。
でも場合によっては、それが叶わないこともあります。やむを得ず我が子を里親に出さなければならなかった方、どうしても自分が先立たなくてはならない方、逆に大好きな我が子を失ってしまった方、我が子を想っても時間を割いてあげられない方にも、必ずそこに愛情は存在します。
この子が幸せであるために何ができるだろう、と考えてあげられることが、私は愛情なのかなぁと思います。
願うことしかできなくても、その子を想うことに費やした時間が、きっと愛情です。
そう考えると、手を伸ばせば触れられるところに幸せを願う愛犬がいてくれるというのは、とても幸せなことです。自分の手で幸せにしてあげられるチャンスが目の前にあるのですから。
フルタイムで働いていると、平日にうちのコと過ごせる時間は3~4時間しかありません。でもわずかな時間をできるだけこの子のために使いたいと思います。たくさん歩きたければ一緒に色んなところを散歩して、ボール遊びをするなら一緒にテンションを上げて遊び、ベッドではしゃぐならお腹をこちょこちょしたい。
一緒に食べて、一緒に寝て、短い時間を一緒に共有することが、私にできる唯一の愛情表現のように思います。
今回のレシピは、獣医ドリトルの18巻「大晦日の不思議な訪問者」をヒントに、ワンコ年越しそばを考えてみました。
このお話は、亡くなったペットを想って大晦日に集まる元飼い主さんたちを巡ってストーリーが展開します。
大切なパートナーの動物たちを見送った飼い主さん(私もその1人です)、今年の大晦日はその子たちのことも想いながら、今あなたの横で温もりをくれる犬たちと一緒に年越しそばを食べてみませんか?
もしかしたら遠い空からあの子たちが帰って来てくれるかもしれませんね。
我が家の年越しそばのレシピをご紹介します。
※量は愛犬に合わせて調整してください。
材料
作り方
レシピのポイント
人間には、愛犬と過ごす以外にやらなければならないこと、やりたいことがたくさんあります。でも犬にとっては飼い主さんとの世界がすべてです。いつも一緒にいたい、いつも見えるところにいてほしい、そんな風に考えているような気がします。
失われることのない永遠の愛情をくれる犬たち。それを感じることができるのが、犬と暮らす人間の最大の幸せではないでしょうか。もしかしたら、愛情の定義を一番理解しているのは、人間ではなく犬の方かもしれませんね。
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