犬を整形する箇所と、目的についてご紹介します。
犬の美容整形には主に尾を整形する「断尾」、耳を整形する「断耳」、狼爪(前足の内側の高い所に生えている爪)を整形する「狼爪切除」があります。
犬を整形する目的には次のようなものがあります。
狩猟犬や牧畜犬は、外敵との争いの中で尾や耳の損傷を防ぐために整形されていました。
また、ヨーロッパでは断尾が狂犬病を予防すると広く信じられていたために整形されたり、1700年代のイギリスにおいては尾のついている犬を所有していると課税されていたため、節税のために断尾が施されていました。
狩猟犬の怪我を防ぐために行われたり、排泄物で尾が汚れて不衛生になることを防ぐために整形されることもありますが、近年の整形の主な目的は美容を目的とした整形です。
犬種による理想的な姿を定めた「犬種標準(スタンダード)」に合致させるために行われています。
犬の整形に対する、欧米諸国の考え方をご紹介します。
断尾や断耳を禁止とする国はイギリスやドイツ、オーストリア、オランダ、スイスなどで、特にイギリスでは美容目的での整形を厳しく制限しています。
狩猟犬など例外もありますが、ヨーロッパの多くの国は整形を動物虐待と考えており「ペット動物の保護に関する欧州協定」によって断尾や断耳の廃絶が推奨されています。
アメリカで犬種標準を定めている「アメリカンケネルクラブ」では、断尾や断耳、狼爪切除は犬種標準に合致させるために容認しうる慣習と考えています。しかし一方で、動物福祉の観点から整形を禁止しようという動きも活発になっています。
全米獣医師協会(AVMA)は、美容目的の整形に異を唱え、犬種標準から断尾や断耳の技術の削除を求める公式声明文を発表しています。
飼い主さんは、断尾や断耳についてどのような認識をもっているのでしょうか。
ドッグショーでは出陳された犬が各犬種に定められた理想(スタンダード)にどれほど近いかを審査されますが、良い成績を残すために断耳や断尾を施される犬種があります。
ショーにおいて優秀な成績を修めた犬は「チャンピオン」と呼ばれ、その子犬は「チャンピオン直子」と呼ばれます。
そして、このチャンピオン直子という表示がどのようなものか、消費者に対して行われたアンケートの調査結果があります。
平成20年6月23日に公正取引委員会事務総局が公表した「ペット(犬・猫)の取引における表示に関する実態調査報告書」によると、消費者のうち53.2%が「容姿等がスタンダードに近くなる可能性の高い犬・猫」と認識する一方、23.9%が「分からない」、8.6%が「可愛らしくなる可能性の高い犬・猫」と認識しているという結果が出ました。
このようなデータから、購入者のおよそ1/4は、犬種標準や血統書の正確な意味を理解できておらず、意味もなく整形が繰り返されていることがわかります。
ペットショップやブリーダーから犬を迎えるときに、多くは既に断尾や断耳が施されています。
そのため、迎えた子が整形されていると知らなかった、そもそも尾や耳を整形することがあるという事実も知らなかったという飼い主さんも多く存在します。
生後間もない子犬のは痛覚が未発達であり、断尾や断耳は痛くないという説もありますが、確かな証拠はありません。一般的には生後2~5日ほどで整形されてしまうので、これからブリーダーから仔犬を迎える予定の飼い主さんは、整形が必要ないと感じるのであれば、整形を希望しない旨を早めにブリーダーに伝えておきましょう。