人には無害なチョコレートですが、犬が摂取するとチョコレートに含まれるテオブロミンという物質が中毒症状を引き起こします。チョコレートの甘い匂いや味を好む犬は多く、飼い主さんが目を離した隙に大量に食べてしまい、中毒になることは少なくありません。
軽度の場合は下痢や嘔吐などの消化器症状で済みますが、大量に摂取すると不整脈、興奮、震え、けいれん、尿失禁、心臓発作など重篤な症状が見られ、最悪の場合、命を落とすこともあります。
症状が現れる時間は、チョコレートを摂取後1~12時間ほどと個体差がありますが、テオブロミンの毒性は犬の体内で72時間続くとも言われているので、翌日以降も犬の様子を注意深く観察する必要があります。
犬のチョコレート中毒は、チョコレートの原料であるカカオを摂取することにより引き起こされるものでるため、他の犬や人にうつるといった心配は要りません。
それでは、なぜ犬はチョコレート中毒になってしまうのでしょうか?チョコレート中毒の原因になる物質と、かかりやすい犬種や年齢についてもご紹介します。
チョコレートの原料となるカカオ豆には、犬に対して毒性や薬理作用を起こすアルカロイドの一種であるテオブロミンという物質が含まれています。人はテオブロミンを簡単に代謝できますが、犬の代謝速度ははるかに遅いため、中毒になってしまいます。
カカオの含有量が多いほど中毒を起こしやすいため、チョコレートの中では、ビターチョコ・ミルクチョコ・ホワイトチョコの順に中毒を起こす可能性が低くなります。また、カカオ豆を含むココアや焼き菓子、アイスクリームなども中毒の原因になりますので注意しましょう。
チョコレート中毒はどの犬種でも起こりますが、危険性は犬の体格などにより違います。子犬や小型犬がチョコレートやカカオ製品を大量に摂取した場合は、死に至る場合もあります。
また、若齢犬は好奇心が強いことや、飼い主さんが飼育管理に慣れていないことから、チョコレートに限らず誤食の事故が多い傾向にありますので、子犬の頃からしつけをしっかり行なうようにしましょう。
残念ながらチョコレート中毒に特効薬はありません。摂取してから時間が経っていない場合は、吐かせるための処置(催吐処置)をします。チョコレートは溶けると粘着性を持ち、吐かせても容易に胃から除去することはできません。必要に応じて胃洗浄の処置が施されます。
その他の対症療法として、テオブロミンを吸着して消化管からの吸収を抑える活性炭の投与やけんれんに対する抗けいれん薬、点滴などが行われます。
症状の程度によって必要な処置が変わることなどから一概には言えませんが、診察や血液検査、点滴、投薬などに一日当たり10,000~15,000円くらいの治療費用がかかると考えられます。治療法や治療費については動物病院に直接確認しましょう。
チョコレート中毒を防ぐためには、何と言ってもチョコレートやココアなど、カカオを含んだものを愛犬が食べられない環境をつくることが大切です。飼い主さんが出かけている間にテーブルの上にあったチョコレートを見つけて食べてしまったり、犬が欲しがる様子を見た子供やお年寄りが誤って与えてしまうこともあります。家族全員でしっかりと意識して整理整頓をしていきましょう。
なお、チョコレートを使ったお菓子やケーキも注意が必要です。ホワイトチョコレートはカカオを使用していない物もありますが、微量に含まれていることがありますので与えるのはやめておきましょう。
チョコレート中毒は早急に適切な治療を受ければ、比較的予後は良好です。犬がチョコレートを口にしないよう、誤食の再発防止に努めましょう。
犬のチョコレート中毒に対して飼い主さんに出来ることは、チョコレート製品を犬に食べられないようにきちんと管理すること、そして万が一口にしてしまった場合には早急に動物病院に連絡し、指示を仰ぐことです。
受診する際には残ったチョコレートがあれば持参し、食べた量や時間、包装紙を食べた可能性などを獣医師に正確に伝えるようにしましょう。