獣医大学を卒業後は、CT・MRIの設備のある高度獣医療を提供する動物病院に勤務しておりました。その中で、体調を崩してから初めて動物病院を受診するこんな子たちがいました。
突然呼吸が荒くなり、舌の色が真っ青、今にもなくなってしまいそうなチワワさん。
この子は心臓病がかなり悪化し、肺にお水が溜まってしまう『肺水腫』という状態でした。
数日前から食欲が落ちてきて、今日は嘔吐が続いているトイプードルさん。
この子は腎臓の機能が低下し、慢性腎不全による『尿毒症』という状態でした。
ほっぺが腫れて、目の下に穴が開いて膿がでてきたミニチュアダックスフントさん。
この子は上の奥歯の歯周病が悪化した、末期『歯ろう』という状態でした。
私たちの協会の名前の中にある、予防というキーワード。
実は予防には0次予防から1次、2次、3次予防とった予防医学用語があります。この内容については連載の記事内で予防の大枠としてお話させていただきますね。
この中の『2次予防』は、早期発見・早期治療をうながして病気が重症化しないように行われる処置や指導のこと。
具体的には定期的な動物病院での健康診断や、さまざまな疾患の初期症状への飼い主さまの気付きのことを指します。
ペットの高齢化とともに、発症する病気も多様化してきました。その中には、大きく調子を崩してしまう前の初期症状のサインがあります。
例えば心臓病には、最近疲れやすい、咳をする、呼吸が荒くなる時がある、といった初期症状があります。
また、慢性腎臓病には、おしっこがたくさん出る・色が薄い、お水をたくさん飲む、食欲が低下してきた、痩せてきた、といった初期症状があります。
そして進行した歯周病には、口臭が強い、やわらかいものしか食べなくなった、くしゃみをするなどの症状があります。
このような症状は、一見すると大きく体調を崩しているわけではないですが、実は病気の初期症状である可能性もあります。
体調が急激に悪化してぐったりしてしまっている子の飼い主さまに、いろいろと問診を進めてみると、やはり以前に初期症状のサインがあったことがわかります。
そして、初めて動物病院を受診する動物たちの中には、そのまま容態が急変しあっという間に亡くなる子もいます。
突然のお別れに、悲しく辛い思いをされる飼い主さまと、私は数多く出逢ってきました。
「動物達と飼い主さまご家族に、こんなつらい思いをさせてはダメだ。すべての病気ではないけど飼い主さまが知ることで、悪化を防ぐことができる病気がある。もっと発信しなければ。」
これが、私個人が動物予防医療普及協会を設立するに至ったストーリです。
ペットの健康や予防に関するさまざまな団体が、それぞれ啓発活動をおこなっていますが、まだまだ情報が必要な飼い主さまに届いていないのが現実です。業界としての力不足を感じました。
動物病院からの発信だけでは、アンテナを持った飼い主さまにしか情報を届けられない。
もっと多くの飼い主さまに、知ってもらうためには、動物に関わるさまざまな方やメディア、行政との連携が必要だ!
おかげさまで動物予防医療普及協会は現在、100社を越える企業や大学、行政と連携し、さまざまな方法でプロジェクトを進め、発信をしております。
次回の記事では、愛犬の健康を守るために『飼い主さまご家族が健康でいることの大切さ』についてお話いたします。
読んでいただきありがとうございました!安亮磨より、飼い主様と動物たちに愛をこめて。
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