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勢籏剛
連載 / ブログ

2020.12.26

犬猫の感染症が専門!獣医学博士による飼い主のためのブログ|vol.4

ワクチンは何でできているの?【1】生ワクチンと不活化ワクチンの違い

皆さんは、愛犬が注射してもらっているワクチンが何でできているかご存知でしょうか?何か得体の知れない薬のようなもの、と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
よくわからないものを愛犬に注射されていると思うと、・・・なんだか不安になる。そんな不安を払拭するために、今回から3話連続でワクチンが一体何でできているかを説明いたします。

#勢籏剛 / #専門家コラム / #犬猫のワクチン研究者

Author :勢籏 剛/獣医師、獣医学博士、動物予防医療普及協会 学術顧問

今回から3話連続で、ワクチンは何からできているのかを説明したいと思います。
【1】生ワクチンと不活化ワクチンの違い
【2】生ワクチンと不活化ワクチンの中身
【3】生ワクチンと不活化ワクチンの作り方

ワクチンのきほん

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ワクチンは、からだの中にウイルスや細菌が侵入してきて戦った時と同じように、「免疫の記憶」を動物のからだに作り出すのが目的です。

からだの免疫の仕組みについては、この連載の第3話目『知っていますか?免疫の正体。それはまさに軍隊!』をお読みください。

ですので、ワクチンはウイルスや細菌と同じような成分でなければ、私たちのからだに働きかけることはできません。

弱らせたり死なせたウイルスで疑似体験

しかし、病気を起こすウイルスや細菌そのものを注射すると、病気になってしまいます。あたりまえですね。笑

そこで、毒力(病原性というのですが)を弱らせたウイルスや、死なせたウイルス・細菌を注射することでからだに疑似体験させるのです。

その結果、からだは注射したワクチンと「同じ種類」のウイルスや細菌に対して免疫の記憶が生まれるのです。

生ワクチンと不活化ワクチン

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ワクチンには、大きく2つのかたちがあります。

ワクチンの2つのかたち

  1. 生ワクチン:生きているけど「毒力を弱らせた」ウイルス
  2. 不活化ワクチン:「死なせた」ウイルスや細菌

生(なま)ワクチンは生きていて、動物のからだの中で増えますが、病気を起こすことがないように十分弱らせたウイルスです。

不活化ワクチンは、完全に死なせたウイルスや細菌で、からだの中で増えることはありません。

一般的に生ワクチンは、実際のウイルスと同じようにからだの中で増えますので、からだに免疫の記憶をつける力が強いです。

一方で、不活化ワクチンは死んでしまっていますので、免疫の記憶は限られたものになります。

開発までにかかる時間

2つのワクチンは、開発スピードが異なります。

一般的に、不活化ワクチンの方がスピードは早く、生ワクチンのほうが時間がかかります。これは、からだで増えながらも病気を引き起こさないウイルスを作るのに時間がかかるためです。

犬の生ワクチンはウイルスのものだけ

ここで、ちょっとした豆知識です。

実は、犬の生ワクチンには細菌のものはなくウイルスのものしかありません。なぜなら細菌を生きたまま毒力を弱らせることは非常に難しく、一般的に生ワクチンはほとんどウイルスのものになります。

つまり、細菌の場合はほとんどが不活化ワクチンです。もちろん、ウイルスの場合には不活化ワクチンもあります。

ウイルスと細菌の違いは、この連載の第2話『ウイルスに感染する仕組み。動物のからだで一体なにが起こっているの?』を読んでくださいね。

犬のワクチンは生ワクチン?不活化ワクチン?

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皆さんの愛犬も、狂犬病と混合ワクチンの2種類を毎年注射してもらっていることかと思います。これらは、生ワクチン/不活化ワクチンのどちらなのでしょうか。

さまざまなワクチンを臨機応変に

狂犬病のワクチンは、不活化ワクチンです。
混合ワクチンは、いくつかの感染症のワクチンが混ぜられているので、生ワクチンと不活化ワクチンが合わさってひとつのワクチンになっています。そして、組み合わせ方によって5種、6種、8種などがあります。

感染症ごとに、その重篤さや流行状況に合わせて、優先して予防すべきものがあります。状況に応じて、どの感染症のワクチンが入った混合ワクチンを注射するか、獣医師さんは考えているのです。

次回はワクチンの中身

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生ワクチンと不活化ワクチンの違いをざっくりとご理解いただけましたか?

生ワクチンと不活化ワクチンでは使う材料が大きく違うので、まずは両者の違いをご説明しました。

次回は、生ワクチンと不活化ワクチンの中に含まれるものについて、詳しく解説します。

参考文献
  • 『感染症科診療パーフェクトガイド 犬・猫・エキゾチック動物』監修:長谷川篤彦、発行:学窓社
  • 『動物用ワクチンとバイオ医薬品-新たな潮流-』監修:動物用ワクチン-バイオ医薬品研究会、著者:小沼操 他、発行:文永堂出版
  • 公開日:

    2020.11.28

  • 更新日:

    2020.12.26

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ライター・専門家プロフィール
  • 勢籏 剛
  • 獣医師、獣医学博士、動物予防医療普及協会 学術顧問
  • 専門分野は犬猫の感染症、免疫、ワクチン。酪農学園大学獣医学部卒業後、動物用ワクチンメーカーの研究者として主に犬のワクチンの研究開発に12年間携わる。犬の感染症の研究で博士(獣医学)を取得。現在は民間企業で獣医師として働く傍ら、犬猫の感染症について確かな情報を提供するために、最新情報の収集に努めています。