免疫の正体をひとことで言うと、「白血球の働き」です。
白血球とは、血液の中を流れている細胞のひとつで、身体の中に入ってきた細菌やウイルスなどの異物と戦って、身体を守る役割をしています。この白血球の働きにより、私たち動物のからだは、病原体との戦いに負けない巧みなシステムを持っているのです。
そのシステムこそが「免疫」と呼ばれるものなのです。
私たち人間と同じように、動物の血液の中にも白血球があります。
白血球は、免疫の役割を担う血液の細胞をまとめた呼び名で、白血球にはマクロファージやリンパ球といった名前を持つ種類があります。
マクロファージは、からだの中に入ってきた病原体を食べてバラバラにすることができます。
リンパ球は、いくつか種類がありそれぞれ役割が決まっています。
他のリンパ球に命令して司令官の役割をするリンパ球や、「抗体」という細菌やウイルスなどの病原体にまとわりつく物体を作って遠隔攻撃する役割のリンパ球や、病原体が感染した細胞を破壊して直接攻撃する役割のリンパ球などがいます。
ここでは病原体がからだの中に侵入してきたときの、マクロファージとリンパ球たちの巧みな免疫システムのはたらきを説明したいと思います。
それはまさに、緻密に連携された軍隊の戦争と同じなのです!
敵である病原体が動物のからだの中に侵入してくると、まずマクロファージが動きます。
マクロファージは前衛部隊としてまず最初に出向き、いち早く病原体に対して攻撃をします。(1)
この攻撃は病原体を食べることです。(2)
食べた物はマクロファージの中でバラバラに分解されます。(3)
マクロファージは食べるだけが任務ではありません。重要なのは、分解した病原体の情報を司令官であるリンパ球に提示して、どんな敵が侵入してきたかをいち早く教えるという任務も任されています。(4)
敵の情報を提示された司令官リンパ球は、「抗体」という武器を作るリンパ球に命令して抗体による遠隔攻撃を指示します。(5)
リンパ球から放出された抗体は血液中を回って、侵入してきた病原体にまとわりつき、動きを鈍らせてマクロファージに食べやすくさせます(6)。
さらに抗体は病原体にまとわりつき、細胞に侵入させないようにします。(7)
一方、司令官リンパ球は、別ルートで直接攻撃をするリンパ球にも命令を出し、病原体が侵入してしまった細胞ごと破壊するように指示します。直接攻撃するリンパ球は、感染してしまった細胞を壊す物質を出し、細胞ごと病原体を破壊することによって感染拡大を防ぐわけです。(8)
このように、免疫の病原体への攻撃は大きく分けると2段階になっています。
第1段はマクロファージによる攻撃ですが、これはそんなに強力ではありません。
重要なのは、第2段のリンパ球たちによる連携された攻撃です。それは「抗体」という遠隔攻撃と、細胞ごと破壊する直接攻撃の2種類あることを覚えておいてください。
そうして一連の戦いを終え、一度からだの中で目覚めた免疫は、次に同じ病原体がからだに侵入してきたときに、初めて出会うよりも、第2段の攻撃態勢に早く移ることができます。なぜなら過去に一度、敵の情報を見抜いてからだの中で準備が整っているからです。これを「免疫の記憶」と言います。
この免疫の記憶を病原体が侵入してきた時と同じように作り出すのがワクチンです。
ワクチンはそんな免疫が上手く働くように私たち人間が考え出した感染症と戦うための武器です。次回はワクチンについてお話ししたいと思います。
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