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勢籏剛
連載 / ブログ

2020.11.14

犬猫の感染症が専門!獣医学博士による飼い主のためのブログ|vol.3

専門家コラム|知っていますか?免疫の正体。それはまさに軍隊!

最近、免疫力を高めよう!と、よく「免疫」という言葉をよく聞くようになったと思います。ワクチンも免疫をつけるものというのは皆さん知っていると思います。では「免疫」の正体について知っていますでしょうか。ワクチンは感染症を予防するものですが、はたしてどのように予防しているのでしょう。
第3回の記事では、ワクチンの本質に迫る「免疫」の正体を紹介したいと思います。

#勢籏剛 / #専門家コラム / #犬猫のワクチン研究者

Author :勢籏 剛/獣医師、獣医学博士、動物予防医療普及協会 学術顧問

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免疫ってなに?

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免疫の正体をひとことで言うと、「白血球の働き」です。
白血球とは、血液の中を流れている細胞のひとつで、身体の中に入ってきた細菌やウイルスなどの異物と戦って、身体を守る役割をしています。この白血球の働きにより、私たち動物のからだは、病原体との戦いに負けない巧みなシステムを持っているのです。
そのシステムこそが「免疫」と呼ばれるものなのです。

白血球と病原体の戦い

私たち人間と同じように、動物の血液の中にも白血球があります。
白血球は、免疫の役割を担う血液の細胞をまとめた呼び名で、白血球にはマクロファージやリンパ球といった名前を持つ種類があります。

マクロファージとリンパ球の役割

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マクロファージは、からだの中に入ってきた病原体を食べてバラバラにすることができます。

リンパ球は、いくつか種類がありそれぞれ役割が決まっています。

他のリンパ球に命令して司令官の役割をするリンパ球や、「抗体」という細菌やウイルスなどの病原体にまとわりつく物体を作って遠隔攻撃する役割のリンパ球や、病原体が感染した細胞を破壊して直接攻撃する役割のリンパ球などがいます。

からだの中の戦争:マクロファージとリンパ球たちの巧みな連携

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ここでは病原体がからだの中に侵入してきたときの、マクロファージとリンパ球たちの巧みな免疫システムのはたらきを説明したいと思います。
それはまさに、緻密に連携された軍隊の戦争と同じなのです!

マクロファージの先制攻撃【食べる!】

敵である病原体が動物のからだの中に侵入してくると、まずマクロファージが動きます。

STEP 1

マクロファージは前衛部隊としてまず最初に出向き、いち早く病原体に対して攻撃をします。(1)

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STEP 2

この攻撃は病原体を食べることです。(2)

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STEP 3

食べた物はマクロファージの中でバラバラに分解されます。(3)

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STEP 4

マクロファージは食べるだけが任務ではありません。重要なのは、分解した病原体の情報を司令官であるリンパ球に提示して、どんな敵が侵入してきたかをいち早く教えるという任務も任されています。(4)

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リンパ球の連携攻撃:抗体と直接破壊

STEP 5

敵の情報を提示された司令官リンパ球は、「抗体」という武器を作るリンパ球に命令して抗体による遠隔攻撃を指示します。(5)

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STEP 6

リンパ球から放出された抗体は血液中を回って、侵入してきた病原体にまとわりつき、動きを鈍らせてマクロファージに食べやすくさせます(6)。

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STEP 7

さらに抗体は病原体にまとわりつき、細胞に侵入させないようにします。(7)

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STEP 8

一方、司令官リンパ球は、別ルートで直接攻撃をするリンパ球にも命令を出し、病原体が侵入してしまった細胞ごと破壊するように指示します。直接攻撃するリンパ球は、感染してしまった細胞を壊す物質を出し、細胞ごと病原体を破壊することによって感染拡大を防ぐわけです。(8)

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病原体への攻撃は2段階

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このように、免疫の病原体への攻撃は大きく分けると2段階になっています。

第1段はマクロファージによる攻撃ですが、これはそんなに強力ではありません。

重要なのは、第2段のリンパ球たちによる連携された攻撃です。それは「抗体」という遠隔攻撃と、細胞ごと破壊する直接攻撃の2種類あることを覚えておいてください。

免疫の記憶ができて第2段が素早く起こる!

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そうして一連の戦いを終え、一度からだの中で目覚めた免疫は、次に同じ病原体がからだに侵入してきたときに、初めて出会うよりも、第2段の攻撃態勢に早く移ることができます。なぜなら過去に一度、敵の情報を見抜いてからだの中で準備が整っているからです。これを「免疫の記憶」と言います。

この免疫の記憶を病原体が侵入してきた時と同じように作り出すのがワクチンです。

ワクチンはそんな免疫が上手く働くように私たち人間が考え出した感染症と戦うための武器です。次回はワクチンについてお話ししたいと思います。

参考文献
  • 『Janeway's 免疫生物学(原著第9版)』著者:C.A.Janeway他、監訳:笹月健彦、発行:南江堂
  • 更新日:

    2020.11.14

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ライター・監修者プロフィール
  • 監修者:勢籏 剛
  • 獣医師、獣医学博士、動物予防医療普及協会 学術顧問
  • 専門分野は犬猫の感染症、免疫、ワクチン。酪農学園大学獣医学部卒業後、動物用ワクチンメーカーの研究者として主に犬のワクチンの研究開発に12年間携わる。犬の感染症の研究で博士(獣医学)を取得。現在は民間企業で獣医師として働く傍ら、犬猫の感染症について確かな情報を提供するために、最新情報の収集に努めています。