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健康管理 / 病気

2020.10.21

【獣医師監修】ズーノーシスの脅威|エボラ出血熱や新型コロナだけじゃない

動物にも人にも感染、発症するズーノーシスは200種類以上あり、今もなお世界的な感染拡大が止まらない新型コロナウイルス感染症もその中の1つです。今回はいくつかの著名なズーノーシスに焦点をあて、日本における過去の事例をご紹介します。また、予防のために飼い主ができることについても知っておきましょう。

Author :監修:加藤 みゆき/獣医師(文:新井 絵美子/動物ライター)

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ズーノーシスとは?

ズーノーシス

ズーノーシスとは、犬や猫をはじめとした動物にも人にも感染する病気の総称のことで、「人獣共通感染症」とも呼ばれています。

ズーノーシスの感染経路はさまざまで、動物に噛まれたり引っかかれたりすることで病原体が感染する直接伝播と、ノミダニなどの節足動物などや水や土壌といった環境、動物性食品を媒介して感染する間接伝播があります。また、病原体も細菌や真菌(カビ)、ウイルス、寄生虫などで、1種類だけではありません。

世界保健機関(WHO)が確認しているものだけでもズーノーシスは200種類以上あり、その中にはワクチンが開発されていないものも存在します。

著名なズーノーシスの過去事例

ズーノーシス

ここでは、一般的に広く知られているズーノーシスをいくつか取り上げ、日本における過去の事例や発生状況をご紹介します。

ペスト

ペストは、ペスト菌によって引き起こされる感染症です。菌を保有するネズミなどのげっ歯類に寄生したノミを媒介して感染します。14世紀のヨーロッパで大流行し恐れられていましたが、現在は抗生剤で治療ができ、日本では1926年以来発生していません。

しかし、2014年にアメリカのコロラド州で犬から人による感染が起きています。ある男性が飼っていた2歳のピットブルテリアを発生源とする肺ペストに、飼い主や動物病院の職員など、犬と接触のあった計4人が感染しました。4人の患者はいずれも治療を受けて回復しています。

狂犬病

狂犬病は、狂犬病ウイルスを保有する動物に噛まれるなどして、ウイルスが体内に侵入することで発症します。日本では狂犬病予防法により、犬の飼い主には犬の登録と狂犬病予防接種が義務付けられているので、ワクチン接種をきちんと行っていれば、感染するリスクはほぼゼロと考えられます。

ところが、2020年5月に日本国内で14年ぶりに感染者が発生しました。発症者は2020年2月にフィリピンから日本に来日した方で、2019年の9月頃に犬に足首を噛まれたことから、それが発症の原因と考えられています。

鳥インフルエンザ

鳥インフルエンザは、A型インフルエンザウイルスによる鳥に対する感染症です。過去に日本でも鳥インフルエンザが発生したことはありますが、日本国内で発症した人や犬は確認されていません。

鳥インフルエンザウイルスは、水鳥を中心とした鳥類が保有しており、保有している鳥に濃厚接触するとごく稀に感染することがあります。

SARS(サーズ)/MERS(マーズ)

SARS(重症急性呼吸器症候群)は、SARSコロナウイルスにより2002年11月?2003年7月にかけてアジアやカナダを中心に感染が拡大した感染症です。終息までの8ヶ月間の発症者数は8098例、死亡者数は774例とWHOにより報告されていますが、日本での感染症例はゼロでした。

MERS(中東呼吸器症候群)は、MERSコロナウイルスが原因で起こる感染症で、2012年にアラビア半島で発生しました。感染経路は明確にわかっていませんが、ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスを保有していることから、感染源の1つと考えられています。

日本国内に棲息するヒトコブラクダで、ウイルスを保有している個体は存在していませんでした。中東地域の一部をはじめ、ヨーロッパやアフリカ、アメリカ、アジアでも患者発生の報告がされましたが、日本国内では発生していません。

エボラ出血熱

エボラ出血熱は、エボラウイルスによる感染症です。自然宿主のフルーツコウモリをはじめ、ゴリラやチンパンジーなどの感染動物の血液や分泌物、排泄物などに直接触れることで皮膚の傷口や粘膜から体内に侵入して感染します。

主に発生しているのはアフリカ諸国で、感染経路や日本の医療体制、および生活環境などから考えると、エボラ出血熱が日本で拡大する可能性は、現時点でほぼないと言われています。

新型コロナウイルス感染症

終息のめどが立たず、感染拡大が続いている新型コロナウイルス感染症。日本国内で初めて2頭の犬にも陽性反応が確認されました。とはいえ、2頭とも症状は見られず、健康状態に問題はありません。また、うち1頭においては、のちのPCR検査で陰性を示しています。このような状態であることから、新型コロナウイルスの感染が成立したかは明らかになっていません。

ズーノーシスはヒト→動物も。飼い主にできることとは

ズーノーシス

ズーノーシスは、動物から人に感染するものが多いですが、人から動物にうつる場合もあります。先述した日本における犬への新型コロナウイルスの感染事例は、感染したかどうかまだ未確認ですが、アメリカでも同様に犬が新型コロナウイルスに感染しており、新型コロナウイルス陽性が判明した飼い主から感染したことが確認されています。

愛犬が感染しないようにするには、飼い主である自身が予防策を講じることが最も効果的、かつ非常に重要です。マスクをつける、手洗いや消毒を徹底する、愛犬との過度なスキンシップを控えるなどして予防をしましょう。

予防策を講じてズーノーシスから愛犬と自身の健康を守ろう

ズーノーシス

ズーノーシスには、特定の治療法が確立していないものや、ワクチンが実用化されていないものもあります。今回ご紹介したズーノーシスはほんの一部で、厚生労働省が刊行した「動物由来感染症ハンドブック2020」に、日本国内における身近なズーノーシスが掲載されています。予防策を講じて愛犬と自身の健康を守っていきましょう。

参考サイト
  • 更新日:

    2020.10.21

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ライター・監修者プロフィール
  • 監修者:加藤 みゆき
  • 獣医師
  • 日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。 日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。