ヒューマングレードは、最近のドッグフード業界ではちょっとしたブームにもなっています。パッケージに「ヒューマングレードの原材料を使用しています」とあると、安心なイメージを持つのではないでしょうか。
ところが、この日本ではよくみかける表記、実はアメリカではほとんど使用されていません。日本で、アメリカブランドのドッグフードにヒューマングレードと表記されていても、アメリカではそう謳われないのは何故でしょうか。
アメリカでは、ペットフードメーカーと獣医師によって組織されているAAFCO(米国飼料検査官協会)が、安全なペットフードのために適切な成分基準などを定めています。そして「ヒューマングレード」についての見解と定義が示されています。
アメリカでは、USDA(米国農務省)が、人間が食べられる製品を公式に「食用」と定義しています。食用とされる食品は、安全性の担保のために製造規則を設け、公的検査を通過したものだけが提供されます。そして、これらがヒューマングレードと表記されることはありません。
AAFCOでは、人間用に作られた製品はペットにとっては栄養が不十分だとしています。
AAFCOは、たとえペットフードの原材料がUSDA認証であっても、それを人用として表示することはできないとしています。さらに、もしペットフードのパッケージに「ヒューマングレード」という記載があった場合、成分が法的に認められた食用基準を満たしていなければ、アメリカでは強制措置の対象となってしまいます。
ドッグフードにヒューマングレードと表記されている場合、アメリカでは人間も食べられることを意味するとみなされます。もし、ドッグフードの原材料のすべてが人間も食べられるものであればヒューマングレードと表記できますが、今度は犬にとって必要な栄養は満たされません。
そのため、これがアメリカでヒューマングレードと表示されたドッグフードがほとんど販売されていない所以です。
日本では、農林水産省が管轄するペットフード安全法によって、ドッグフードの品質管理が求められています。一方、人間用の食品は、厚生労働省が管轄している食品衛生法に基づいて製造販売されています。
ヒューマングレードには「人間用の食材で作られている」というイメージがあるかもしれませんが、食品衛生法で管理された食材を原材料に使用したドッグフードはほとんどありません。
また、もし使われていたとしても、多くのドッグフードは人間が食べないまたは食べることができない部分(内臓、端肉)などが使われている可能性があります。
2019年、世界初の「100%ヒューマングレード」を謳ったドッグフードが日本でも発売開始されました。
このドッグフードは、2004年にFDA(アメリカ食品医薬品局)から「ヒューマングレード」のペットフードとして認定されています。
ドッグフードブランド「オネストキッチン」は、愛犬の健康を気遣う開発者が、自ら自宅キッチンで愛犬の手作りご飯を始めたことがきっかけで、原材料にこだわるドッグフードを開発しました。
原材料へのこだわりは、100項目にもわたる製造及び品質管理基準を満たしていることからもわかります。
通常のドッグフードとの大きな違いは、低温乾燥されたドッグフードをぬるま湯をに注ぎふやかすところです。
カップラーメンのように3分待って完成するという、今までにないドッグフードです。
FDAの認可を受けて、こだわりを持って製造されている分、900gで6,800円~と価格も大変高価です。
現在販売されているドッグフードの中で、本当の意味でのヒューマングレードを表記できるドッグフードブランドは、数えるほどしかありません。
「人間の食用に適する」という意味で使われる本来の英語は、「エディブル(edible)」です。
ヒューマングレードは、ドッグフードメーカーが考えた宣伝文句のようなものと言えます。
なんとなく高級そうで安全そうなイメージがある言葉ですが、残念ながらドッグフードの原材料には「食品衛生法」のような法律がないため、各製造メーカーの良心に委ねられているのが現状です。
現在、ドッグフードの安全性を象徴する言葉として「ヒューマングレード」の他に「オーガニック」「ナチュラル」などの言葉が使われていますが、AAFCO(米国飼料検査官協会)では、このような言葉にも注意を呼びかけています。これらの言葉には、法的規制がないため、例えば原材料のごく一部にのみ「ヒューマングレード」「オーガニック」の食材が使われていても、メーカー側はイメージ戦略の一環としてこのような言葉をパッケージに記載する可能性もあるのです。
本当に安全なドッグフードを選びたいと思った時には、どんな食材が使われているのか原材料表を細かくチェックして、不安や不明なことがある場合は直接メーカーに問い合わせることがおすすめです。