人間だと、どんな病気であっても、全身麻酔の手術の後は栄養点滴から始まり、その後、具のない味噌汁や牛乳、飲むヨーグルトなどから少しずつ食事を再開していきます。では犬の場合はどうなのでしょうか?
うちのコは、我が家に来て3ヶ月後、生後1歳半くらいの時に去勢手術と歯肉炎の治療を一緒に行いました。半日ほどの手術で、夕方すぐに帰宅しました。でもその時に獣医さんから受けた注意事項は、病気でなかったこともあるのか、ごく簡単なものでした。
・排泄だけの短い散歩はすぐに始めて良い
・傷口に貼ったテープでかぶれていないか注意する
・縫った糸を舐め取ったりしないように気をつける
・シャンプーは抜歯までしない
抜歯をしても食べ物については特段注意事項はなく「食べられるなら普通に食べさせていいよ」と言われました。
知り合いの尿路結石で緊急手術を受けたダルメシアンのコも、すぐにドライフードを与えたと聞いています。「ご飯食べないから退院して」と、馴染みの動物病院の院長先生から連絡が来て、術後早いうちに退院となったダルメシアン。尿道を再建した大きな手術だったにも関わらず、病院のご飯を食べないから退院って、何だかすごいですよね。
写真は去勢手術から帰宅したばかりのうちのコです。タクシーで帰宅したためキャリーに入れなくてはならず、エリザベスカラーを外す必要がありました。「一度外したら二度と着けさせてくれないかも」と獣医さんが言った通り、帰宅後に全力でエリザベスカラーを拒絶され、仕方なく傷口を舐めないようにフリースでくるんでいました。
こちらは、手術後2~3日経ってからのうちのコの様子です。元気にご飯を拒絶しています(笑)
でも帰宅してからすぐにトイレのため散歩に出たり、ドライフードもバリバリ食べたりしていました。縫った痕を痛がる様子もなかったのですが、本当に痛くなかったのでしょうか?
ヘルニアで手術をしたミニチュアダックスの子も、先ほどお話しした尿路結石のダルメシアンの子も、飼い主さんたちが驚くほどにすぐに元気になり、ご飯も散歩もできるようになっていました。「犬ってすごいよ」と、みなさん口をそろえて話しています。
内臓に関係した病気でない場合、犬の回復はとても早いようです。では、内臓に関係した病気の場合はどうなのでしょうか?近所の犬友達さんたちから聞いた、病後の犬たちの様子はこんな感じです。
13歳の柴犬の女の子は、認知症で夜中でも昼間でも外に出たがりました。そのお宅は高齢のご夫婦の2人暮らしで、お父さんは真夜中でもその子に付き添って散歩をしていました。
やがてその子は胃腸炎も併発してしまったのですが、認知症で食べないのか体調が悪くて食べないのかの判断がつかず、病院に行ってようやく胃腸炎であることがわかりました。
ふやかしフードも口にしないため、獣医さんからササミのスープなどを薦められて与えていたそうです。病気の時、犬にはタンパク質が一番消化に良い食べ物なのだそうです。
14歳の柴犬の男の子は、腫瘍ができて何度も手術を受けていました。しかし退院するとすぐに散歩に出て、私の顔を見ると「おやつくれ」と言います。しかも食欲が凄まじく、私の指ごと食べそうな勢いです。飼い主さんが「夜中に生ゴミまであさって食べるのよ」と困っていました。でもそれは、病気が引き起こす異常行動だったのです。
数日後、飼い主さんに様子を聞いたら、暴飲暴食がピタリと止んだ途端、今度はずっと吐き続けるようになって病院に行ったと話していました。その後も暴飲暴食と嘔吐を繰り返し、数週間後にその柴犬は息を引き取りました。
食べ物の制限以前の問題が起きることもあるのですね。私と仲良くしてくれた大好きな柴くんだったこともあり、その最後の様子にとてもつらい気持ちになりました。
外科的な病気ではほとんど食事に制限は無さそうですが、胃腸や内臓に関する病気の場合は、その後の食事に注意が必要です。ここからは、嘔吐や下痢などを伴う病気の後の食事について考えてみたいと思います。
腎臓病などでタンパク質の摂取に制限がある場合はおすすめできませんが、特に食べ物の指示が出ていない場合には、少しのドライフードをササミのスープなどでふやかして柔らかくしたものを、少量ずつ与えると食べやすくなります。認知症と胃腸炎になった柴犬の子も、この食べ方で徐々にドライフードだけに戻して回復したそうです。
風邪などで発熱し、体力が大きく落ちている場合には、カロリーの高い高栄養食品の利用も効果的です。パウダーをぬるま湯で溶かしたり、ゼリー状になっていたりと、食べやすい状態で与えられるものが出ているので、獣医さんに相談して取り入れてみてはいかがでしょうか。体力と食欲が落ちている子に、早い回復が期待できそうです。
病気をした犬の飼い主さんたちに話を聞くと、大抵の方はいつも与えているドライフードを回復期にも与えていることが共通しています。やむを得ずフードを変えなくてはならないこともあるでしょうが、ほとんどの場合、病気で少なからずショックを受けている愛犬がそれ以上ストレスをためないように、「いつものご飯」が活きてくるのかもしれません。普段与えているドライフードの品質をより良いものにしなければと、私も考えさせられました。
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